めいろまさん(@May_Roma)こと谷本真由美さんが3年ぶりに日本に帰国されました。これを記念して、アゴラ編集部では独占インタビューを敢行しました。その第一回目です。
——長時間のフライト、お疲れさまでした。コロナ禍もあって3年ぶりの日本ということですが、印象はいかがですか。
めいろまさん(以下、めいろま):3年ぶりに戻ってきて、気がつくことは物価の上昇です。特に食材が上がり方が顕著ですね。
チーズや果物、輸入品はとくに高い。外食はそこまで上がっていないようですが、人件費の抑制や企業努力でかなりの上昇が抑えられている印象です。年金生活の方や賃金が多くない方の生活はかなり苦しいのではないでしょうか。
東京は外出している人、出勤している人が多く大変驚きました。イギリスはコロナ後に通勤している人が激減し、現在も以前のようには戻っていませんので、日本ではなんでまだこんなに多くの人が会社に行っているのだろうと感じました。
イギリスは20年以上前から在宅勤務が進められていました。なぜかというと、イギリスの企業では管理職や幹部の業績目標管理が日本よりも遥かに厳しいため、販売管理費の管理が非常に厳しいからです。管理職は運用コストをいかに削減し、利益率を高めたかが短期で評価されますので、販売管理費も極力削減します。したがって、オフィスの賃料、光熱費といった費用もどんどん削減するので、従業員を在宅勤務にすることで、オフィスを縮小したり郊外に移転しコストをカットするのです。
これはコロナ前から行っていることで、大手金融やコモディティ企業の中には最初から従業員の席自体が存在せず、在宅勤務が前提になっている会社もあるほどです。
ロンドンは特に家賃が高いので、在宅勤務を進めるインセンティブが高いのです。さらにイギリスだけではなく欧州や北米は会社が交通費を出しませんが、元々政府が補助金を出さないために公共交通機関の費用が日本より遥かに高く、地域や国によっては倍額や3倍などです。自家用車での通勤も補助が出ない場合がほどんとですので、働く方も通勤しないほうが、手取りの給料が増えますので在宅勤務を歓迎します。
さらに業績評価が日本によりも遥かに厳しく、数字での評価となりますので、オフィスにいたかどうかで評価することが多くはありません。オフィスに居ることを評価するのは1960年代のやり方です。つまり日本の働き方は50年前のやり方に沿っているということです。
業務も各自の専門ごとに範囲を細かく指定し、KPI(Key Performance Indicator=業務の進捗や成果を図る指標)を設定して成果を細かく監視していますので、家で仕事をしていても成果が見えるようになっています。成果が上がらなければ簡単に首になります。イギリスは欧州では特に雇用規制がゆるいため、解雇や人員整理はアメリカ並みに厳しいのです。
また家賃があまりにも高騰しているため、海外や地方に住んで打ち合わせの時だけ飛行機で来たほうが安いので、実際にギリシャやスペインに住んでおいて、仕事のときだけロンドンマンチェスター、エジンバラといった都市に来る人もいます。税務署も銀行もそのようなライフスタイルの人がいることを承知しているので、日本に比べますと、税務処理や資金の移動などが遥かに容易です。国境を移動して暮らすことが前提になっています。
日本ではそういったライフスタイルが想定されておらず、銀行も役所の手続きも煩雑で、海外と行き来する人の利便性を全く考えていません。これでは世界中を移動しながら住む場所や仕事を選ぶ優秀な人材を引きつけることは不可能です。
——日本に来てどのようなことを楽しみたいですか。
めいろま:まずはじめに日本食です。日本の魚介類の質は世界一と言っても良いほどなのです。実は欧州の魚介類は日本にも輸出されており、マルタなどの地中海のマグロなどが入ってきていますが、日本向けと欧州現地で販売されるものは処理の細かさが異なるので品質が異なっています。
日本の方には意外かもしれませんが、チータラやさきイカなどのお酒のおつまみなども、様々な種類が手に入りづらいので、日本で食べだめします。
さらに全く違うのは野菜です。日本は東京郊外ですら地場産の新鮮な野菜が手に入り、少なからぬ野菜を地元の農家の方が栽培しておられます。日本は欧州より遥かに温暖で、土地も肥沃な上に、小規模農家の方も大勢いるので、欧州の北部では信じられないほど地元産の素晴らしい野菜が豊富です。
例えばキュウリは日本では旬のみずみずしいものが手に入りますが、イギリスや欧州北部のスーパーで販売されるのは、オランダの温室で栽培したものなので、味も質も全く異なります。南下してスペインやイタリア、ギリシャは地場産の物が手に入りますが、土も種も違いますので、日本のものほどみずみずしくありません。さらに欧州北部はとにかく寒冷で、土も日本と違いますので、オクラ、かぼちゃ、ナスといった野菜まで輸入だらけで、ガボン、ケニア、イスラエル、ガーナ、南アフリカなど、アフリカや中東から輸入しています。輸入食材なのでどうしても鮮度が落ちてしまいます。
日本のみなさんは、東京郊外ですら手に入る地場産の野菜をもっと食べていただきたいですね。私も日本にいる時は、そのありがたさに気が付きませんでした。日本の農家の技術や品質管理のスキルは本当に世界一です。
家人や子供は日本のコンビニに毎日通っています。デパ地下も素晴らしいのですが、コンビニが一番おもしろいというのです。毎日の様に日本のポテトチップスやカップ麺を爆買いして、毎日食べています。欧州の食品企業と異なり、日本の食品企業は多種多様な製品を開発販売し、そのどれもが味が異なり、パッケージも非常に凝っているので、見ているだけで楽しめるというのです。多種多様な製品の開発と販売には大変なコストがかかりますので、利益率を重視する欧州の企業にはあり得ない品揃えです。家人は経営学の研究者ですが、このような多様な製品からは、日本の消費者の要望も欧州とは異なるのがよくわかるといっています。
(その2につづく)
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谷本真由美さん @May_Roma (めいろま)
ITコンサルタント。専門:ITガバナンス、プロセス改善、サービスレベル管理、欧州IT市場および政策調査。ITベンチャー、経営コンサル、国連専門機関情報通信官、外資系金融機関等を経て日英往復。趣味HR/HM。仕事依頼 Twitter @May_Roma