萩生田光一さん、自由民主党政務調査会長ご就任おめでとうございます。
経済産業大臣時代、国際環境の激変によって、日本にも産業政策とエネルギー政策に関し数々の難問が突き付けられました。しかし見事なご采配とご活躍で難局を切り開き国益を守って頂きましたこと、大変頼もしく感じておりました。心より感謝申し上げます。
継続案件も多い中での交代は寂しく感じます。しかしこのタイミングで大臣職から一旦解放され、大戦略を立案推進できる党の要職に起用されたことは、考えてみればまたとない好機です。一閣僚のときよりも、自らの考えを政策に反映させることが可能になりました。
政調会長として与党の戦略に関する“舵”を握られた萩生田さんに、引き続き希望を託してまいります。
“ポスト安倍”の最有力候補
各紙報道に接する限り、安倍元総理の後継者は萩生田さんではないかと感じされられます。例えば10日の産経新聞は、次のように報じます。
政調会長の萩生田氏は党内最大派閥の安倍派(清和政策研究会、97人)に所属し、安倍氏と近かった。防衛費増額や物価高騰対策を含む予算編成にあたり、党内の意見調整にあたる。(産経ニュース8月10日記事より引用、太字は引用者)
党内事情を知り得る立場にはありませんが、報道からは「安倍派を継ぐ筆頭者は萩生田氏」のように見えます。この報道に限らずこれまでも「側近」などの表現でその距離の近さが伝えられており、「政治家としての安倍元総理の遺産・遺志を継ぐのは萩生田氏である」ことは、既定路線のように見えます。
安倍元総理は何と戦っていたのか
では、その“遺志”とは何でしょうか。仮に彼が“道半ば”であったならば、その道はどこに向かっていたのでしょうか。西岡力氏(モラロジー道徳教育財団教授、麗澤大学客員教授)は産経新聞のコラムで次のように表現しております。
安倍氏は何と戦ってきたか。一言で言って「戦後レジーム」と戦ってきたのだ。その戦いは人生をかけた激しく、かつ粘り強いものだった。今回の殉職は戦死だと、私は感じている。
安倍氏が戦った「戦後レジーム」とは何か。様々な議論があり得るだろうが、私はそれを日本民族「性悪説」と呼んでいる。(略)(憲法前文の)「政府の行為」とはわが国政府の行為のことを指し、放っておくと(略)悪いことをする、(略)だから9条2項でわが国だけは世界で唯一陸海空の戦力を持つことが許されない―とする日本民族「性悪説」が憲法に明記されている(以下略)(産経新聞ニュース8月2日より引用、太字は引用者)
西岡氏の説明は腑に落ちます。安倍元総理が戦ってきたものに通底する「敵」は、(日本性悪説を基底とする)「戦後レジーム」でした。マスメディアをはじめ、野党や活動家が安倍元総理を目の敵にし続けてきたことはその傍証でしょう。
戦後レジームとの闘いは続く
防衛・外交の各種状況を考慮するならば、その戦いは終わっておらず確かに道半ばと言えるでしょう。また例えば、今現在起きている国葬儀に反対する活動や、宗教団体を出汁に与党を追及する異様な動きなどは、その敵が健在で戦いは今も続いていることを象徴しています。
いうまでもなく、憲法・防衛・外交・エネルギー・産業・教育といった各種問題は一体不可分あるいは同根の課題です。それらを深く理解した上で、戦後レジームを“近代化改装”して行くことはある意味「国造り」そのものです。それには潮目を読む洞察力に加え、時に反対勢力も押し切る剛腕も必要となるでしょうが萩生田さんならば余裕でしょう。
次の日本の大黒柱
次世代を担うべき若者の行く末を考えると、戦後レジームの更新は必須の課題です。それでは戦後レジームとは何かと考えるとき、これまでは戦争体験の反動のために、多くの国民は深く冷静に捉えていなかったことに気が付くのではないでしょうか。
1945年8月、確かに戦闘行為は終結しました。しかしそれから77年が経過した2022年8月現在、安全保障・防衛の分野において、視点によっては未だに「敗戦」が続いているように見えることがあります。そのことに気が付いている人も少なくないでしょう。更にいえばこのままでは何世紀でも敗戦は続きそうな気配も漂っております。
しかしできれば長くとも一世紀、つまり2045年頃までには総決算を行い、新たな時代を始めて頂きたいと考えます。そのためには、今後20年にわたって戦略的に行動できる強靭な精神力と指導力を持ったリーダーが欲しいところです。
萩生田さんは現在58歳(8月末で59歳)ですから、20年経っても70代です。文部科学大臣と経済産業大臣の時代に仕事師としての力量は実証済です。半導体やエネルギー確保の折衝を通じて、米国をはじめとする主要国の鍵を握る要人たちとの人脈も形成されつつあることでしょう。
自民党共同記者会見
8月10日に開かれた共同記者会見で就任にあたり萩生田政調会長は次のように所信を表明しました。
政調会長として、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、「外交、安全保障政策の強化」、これが最大の課題と言えます。
先般の中国による我が国EEZへのミサイル発射は、極めて危険な挑発行為であり、断じて容認できません。安倍元総理は「台湾有事は日本有事。日米同盟の有事である」とおっしゃいましたが、はからずも中国自身が自らその言葉の正しさを証明しました。
わが党はNATO諸国と同様のGDP比2%以上を念頭に5年以内に防衛力の抜本的強化を進めることを先般の参議院選で公約として掲げたわけでありますが、これを速やかに実行に移して行かなくてはなりません。「国民の命と平和な暮らし、わが国の領土・領海・領空は、断固として守り抜く。」その決意をしっかりと示して行く必要があります。
同時に地球儀を俯瞰する視点をもって積極外交を展開しなければならない、党として、議員外交も更に活発に進めて行く必要があると感じております。(中略)
日米経済版2+2に参加し、経済安全保障の日米協力の強化で一致をしました。日米同盟を基軸としながら、自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する国々と緊密に連携して行きたい。台湾もこうした価値を共有する、長年の友人です。
強い外交、安保政策を展開して行く上でもその基盤となるのは強い経済であります。(中略)しっかりと景気を下支えしながら、同時に物価も抑えて行く、エネルギーなどの供給力強化は大きな課題です。資源に乏しいわが国で、原子力を最大限活用して行くことも必要です。(中略)新しい時代を見据えた改革・成長戦略を推し進めてまいります。
(TBS配信のYouTube ライブ動画『自民党 副総裁・党四役 共同記者会見』より引用、太字は引用者)
なお、この記者会見における質疑応答では、党四役がそろっている中で萩生田政調会長にばかり質問が集中しており、「マスメディアにとって一番の注目はやはり萩生田さんだ」と感じました。
まとめ
会見の要点を列挙すれば、次の通りです。確かに重要課題ばかりです。
- 最大の課題は「外交、安全保障政策の強化」
- GDP比2%以上を念頭に5年以内の防衛力強化
- 地球儀を俯瞰する積極外交
- 経済安全保障の日米協力
- 外交・安全保障の基盤となる強い経済
- エネルギー供給力強化、原子力を最大限活用
- 改革・成長戦略
「安倍元総理はもういない」これは現実です。私達は貴重な政治家を失いました。
しかし私は萩生田光一さんの活躍に期待しております。ぜひともその胆力、忍耐力で世界における日本の立ち位置や戦後レジームを更新して、次のステージに導いて頂けることを期待しております。