終戦から77年を迎えました。戦禍に斃れられた多くの先人の皆様方に、改めて哀悼の誠を捧げたいと思います。
戦後の77年間にあって、この東アジアでは安全保障環境が緊迫したことが何度かありました。朝鮮戦争、金門砲戦、さらには最近の北朝鮮や中国による軍事的挑発行動など、ご記憶の方も多くいらっしゃると思います。
そして、今、この2022年。「日本が戦争に直面する可能性がかつてなく高まっている」そう言わざるを得ない状況に我々日本人自身が置かれていることを改めて認識せざるを得ません。
昨年年初に中国共産党が、自ら締結し国連に登録されている国際条約である中英共同声明に反する形で、香港の自由を実質的に力により奪いました。国際社会が予想したよりもはるかに速いスピードで、しかも強い意志で公然と国際法を無視して行われた中国共産党の横暴に、国際社会の中国への警戒が一気に高まったことは記憶に新しいと思います。
今年2月のロシアによるウクライナ侵略は、国際社会の安全保障上の注目を台湾情勢から一時的にウクライナに転じさせることになりましたが、同時に、中国による台湾侵略の可能性が一気に現実化したとの印象を国際社会に与えています。
国際政治において明らかになった現実は、一たび核を保有する国連常任理事国である軍事大国が決断すれば、周辺国への侵略を止めるすべはない、というものです。従って外交、危機管理の焦点は、当事国にどのようにして侵略の決断をさせないかという点に尽きると言っても良い。
そして、中国は最近の国内政治の決定過程等から判断すれば、習近平国家主席による事実上の独裁体制に近いことは明らかで、習近平国家主席に計算ミスをさせないことが重要です。
「習近平主席の動機が一体何なのか?」、「それを得るために「台湾侵略」が中国にとってあまりにリスクが高い状況なのか否か。」。
そもそも、「台湾侵略」に関しても、①全面的な台湾本島侵略、②限定的な台湾海峡離島侵略、③南シナ海離島侵略、④台湾封鎖、⑤武力行使を伴わないハイブリッド戦等々、様々なシナリオ・可能性があり、中国にとってのそれぞれのリスク分析も当然異なってきます。今後、台湾はもちろん、日本、アメリカ、オーストラリア、フィリピン、英国、欧州等の関係国の間で、これらの点に関する分析と行動を共有していくことが極めて重要です。
7月下旬に台湾に、そして先週アメリカに出張し、それぞれ政府高官や関係者との意見交換を重ね、またその間に岸田総理とも台湾に関し話をさせていただきました。
本稿で機微な話に触れることは当然できませんが、私の受けた感触で言えば、台湾国内の一体感、日米をはじめとする関係国の一体感は極めて固く、中国が台湾を侵略すれば、ロシアがウクライナを侵略した以上の困難に直面することは明白です。台湾の戦略的意味合いは、日本にとっても、アメリカにとっても、極めて大きい。
先般のペロシ米国下院議長の台湾訪問においても、米国中国双方の腹の探り合いがされたわけですが、今後、習近平主席が3期目を目指す10月の第20回中国共産党大会に向けて、そして、その後も習近平主席が3期目の正統性や基盤の万全を期しながら4期目以降を考えていく可能性を踏まえれば緊張感がどんどんと高まる可能性が高く、習近平体制が続く限り、常にこうした探り合いがされていくこととなります。
そしてどこかのポイントで、中国が台湾侵略のリスクが得られるメリットよりも低いとの判断を下せば、一気に軍事行動に出ることが予想されます。
その際、在日米軍及び自衛隊は当然のこととして台湾防衛に動く。今後の政治の一つの焦点は、中国の様々な侵略パターンに応じた対応を即時に行えるような法整備、自衛隊のハード・ソフト面の整備、米軍・台湾軍その他可能性がある軍との実態的な連携強化、国民の理解の醸成、等の各点について早急に課題解決に動くことに他なりません。
中国の動機、能力については、先方の事情であって我々がどうこうできる余地はほとんどありません。日米台で変えられる変数を変えることに全力を尽くすことで、中国にとっての台湾侵略のリスク・コストを高め、彼らの「計算」や「意思」に影響を与えることこそが、我々が全力を尽くして進めるべき喫緊のアジェンダです。
編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2022年8月16日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。