中国が辿った歴史や文化の本質を見つめ直す:『禁断の中国史』

濱田 浩一郎

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作家・百田尚樹氏の近刊が『禁断の中国史』(飛鳥新社)です。

「世界の中で日本人ほど中国を誤解している民族はいないのではないでしょうか」という一文から始まる同書は、第一章「中国四千年全史あるいは虐殺全史」、第二章「刑罰」、第三章「食人」、第四章「宦官」、第五章「科挙」、第六章「纏足」、第七章「策略、謀略、騙しのテクニック」、第八章「中国共産党の暗黒史」から成ります。

一瞬、ぎょっとするような章題もあるかもしれませんが、同書のなかには、学校では習わない中国の暗黒の歴史がこれでもかと詰め込まれているのです。

王朝の交代や反乱によって、凄まじい数の人々が犠牲になってきた歴史。凌遅刑や剥皮刑というここではとても書けない刑罰を人間に課してきた歴史。

飢饉のなかで大量の人間が食べられてきたという食人習慣。去勢された官吏・宦官が如何に政権に食い込んで悪事を働いてきたか。秀才を無限とも思われる試験地獄に突き落としていく官吏登用試験の科挙。女性の足を醜く変形させ、人権を踏み躙った纏足。劉邦や曹操という日本人にも馴染みのある「偉人」たちの信じがたい非情さ。そして、毛沢東率いる中国共産党政権が、大躍進政策や文化大革命で自国人に何をしたのか。

そうしたことが、読みやすい文章で、時にユーモアを交えつつ、詳細に書かれているのです。同書の特徴の一つは「わしこそ天に選ばれたんやー。正統性あるでー」というように、関西弁が駆使されていることでしょう。本当は笑うべき逸話紹介ではない時にも、関西弁が挟み込まれているので、ついつい笑ってしまう、そんなこともありました。

食人・宦官・科挙・纏足・・古くより中国から文化を摂取してきたとされる日本ですが、上記の制度や習慣は取り入れませんでした。ここに、先人たちの賢明さを感じるところです。百田氏は同書で主張します。

「中国四千年の歴史の中で平和な時代など一度もありません。それどころか自分が弱い時はひたすら低姿勢を貫き、いざ自分が強くなったら、なんでもやる。その時にはかつての仲間や義理や恩など一切関係ない。世話になったり支えてくれた仲間、恩人、部下でも誰でも平気で虐殺する。こうした国が隣国にあり、今や日本への領土的野心を隠さず、既に尖閣をはじめ侵略行為を強めているのです。その危機感が日本人にはあるのでしょうか」と。

日本人は中国が辿った歴史や文化の本質を見つめ直し、安全保障政策やその他、諸々の対策を早急に打ち出していくべきでしょう。百田氏も述べているように「歴史にしっかりと学ぶべき時」なのです。