安倍さんが外交ほどには国内政策が成功しなかった真相

安倍さんは、外交でも内政でも、自ら先頭に立って、共通の価値観を持つ国々や、自分と志を同じくする政治家、支持者を守りました。だからこそ、大政治家として世界から信頼されたのです。

おそらく、「安倍首相の時代は日本が世界を主導した」と、世界の歴史に刻まれると思います。

本日の夕方から『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか-地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』が一部の大型書店の店頭に並びます。Amazonで予約した方にも月曜日から届き始めると思いますが、このタイトルには、そういう想いがこもっています。

しかし、国内改革は外交・防衛に比べると物足りないものでした。なにしろ、外交防衛は政府が自分でやればよいのですが、経済などは国民全体が協力してくれなければ動かないからです。

アベノミクスについて、私は最初から方向性は間違っていないが、第一の矢である金融、第二の矢である財政の大胆さに比べて、第三の矢である産業競争力の向上などが常識的過ぎと批判して、一時は、Wikipediaに代表的な批判者の一人として上げられたりしました。

私は日本経済の問題は、少子化、教育改革の遅れによる国際化やIT化に必要な人材供給不足、インフラ投資の内容が前向きでない、医療への人材と金の過剰投入、東京一極集中、人生や生活についての向上心低下、それに起業や転職意欲の不足などだと思っています。

安倍晋三元首相 同元首相Fbより

いずれも安倍内閣で取り組んだものの抵抗勢力を突破できなかったものです。それなりの成果があったのは最後の項目くらいで、結果として若年層の雇用などは劇的に改善しましたが、過渡期的な問題ではありますが、賃金水準はかえって低下したりもしました。

一方、金融や財政は、お札を刷るだけで出来ますから、カンフル剤として便利ですが、第三の矢が続かないと財政や社会保障制度の将来を危うくします。

私は、1980年頃からの経済政策は、第三の矢に地道に取り組むことなく、とっかえひっかえ「魔法のマクロ経済政策」を求めて、誤魔化してきた歴史であり、マラソンで基礎的な走力の向上よりペース配分や作戦の話ばかりしてもダメだと主張してきました。たとえば、コロナでみんなお籠もり指向で消費意欲もないときに、消費税下げたり給付金撒いたりしても財政が無理した甲斐があるほど消費が上がりません。

一方、大学センター試験で英語の四技能(読む・書く・話す・聞く)を重視した民間試験導入を安倍内閣で下村博文文科相は試みましたが、英会話ができない英語の先生たちの抵抗で潰されました。

英会話ができないで日本が国際競争で優位を占めるなんて無理なのですが、これに限らず、総理が号令かけても既得権益の打破はたいへんなのですが、本丸はそちらで、マクロ経済政策に過度に期待するのは賛成出来ません。