地方公務員の手当体系と考察
佐倉市で上程された「市職員向け持ち家手当」の復活議案の是非を論じるため、前回の記事ではその背景として公務員給与の決定プロセス等について説明しました。
(前回:佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題②)
今回と次回の記事では、公務員の手当について説明します。
公務員には、民間企業と同様「給料」とは別に設定された複数の「手当」が積み増しされた「給与」が支給されます。
前回の記事でも書いたとおり、公務員に設定する各種手当の妥当性を判断しているのは総務省です。つまり、公務員が公務員の手当の妥当性を判断していることになります。
「民間企業だって、その会社に属する経営者が判断しているじゃないか」と思うかもしれませんが、民間企業の経営者には「利潤追求」という強いプレッシャーがかかっています。よって、社員に設定される手当は、労使でギリギリのせめぎあいが常に発生しています。
他方、公務員の場合給料や手当の原資は税金であるため、民間企業の経営者が感じている類のプレッシャーは「ほぼない」状態で判断が可能です。その意味で、彼らにとってのプレッシャーとは、すなわち私たち国民や政治家の監視や言論、ということになるわけです。
下の表をご覧ください。
これは総務省が公表している「地方公務員の給与の体系と給与決定の仕組み」という表から、地方公務員分を抜粋して作った表です。
ご案内のとおり、公務員はおしなべて手当や福利厚生が手厚いとされています。手当については項目の充実度が高い点もありますが、それぞれに設定されている金額も大きな企業と遜色ないレベルにあります。
例えば「住宅手当」を見てみましょう。公務員の場合、住宅手当と呼ばれる手当は家賃補助と同義で、賃貸住宅に住んでいる公務員に支払われる手当です。地方公務員の場合、法律で設定されている上限金額は月額28,000円です。調べた限り、ほとんどの地方自治体で月額上限27,000円から28,000円が設定されていました。なお、家賃61,000円以上の賃貸物件に住んでいれば上限額が支払われる仕組みです。
以上の通り、賃貸住宅に住んでいる地方自治体の職員の多くは、年間最大33万6千円の「住宅手当」をもらっている計算になります。
次に、扶養手当を見てみましょう。
扶養手当は、扶養する親族がいる職員に対して支給され、当該職員と扶養親族との続柄や年齢等によって支給額が決まります。そのあたりは厳密にして細かい規定があるのですが、金額だけみると以下のとおりです。
- 子(一人につき):10,000円、満15歳から22歳は15,000円
- 子以外(一人につき):6,500円(管理職の場合減額等措置あり)
「子以外」というのは、配偶者や孫などがそれにあたりますが、市町村の場合おおよそ部長級職員でも、減額はされているものの3,500円は設定されている場合が多いようです。なお、公務員の場合管理職であっても、直接の「子」であれば減額等の措置はなく、一人当たり一律に支給されます。
また、多くの都道府県や市町村で「地域手当」が設定されています。地域手当とは、首都圏や都市部などの物価の高い地域に勤務する公務員に対して支給される手当ですが、私はこの手当には特に見直す点が多いと考えています。その件については機会を改めて先に進めます。
地域手当の算出方法は、
(給料月額+管理職手当+扶養手当)×支給割合
となっています。佐倉市の場合、この支給割合は9.2%です。感覚としてつかみづらいので、佐倉市職員への年間の平均支払額をお伝えすると、令和3年4月1日の実績で33万3,842円です。
この他、先の表でご覧いただいたとおり、公務員には通勤手当や時間外勤務手当などもありますし、夏と冬のボーナスも前回の記事で説明した人事委員会の勧告でしっかりつく。
いまどきこれだけ「フルコンボ状態の手当」が設定されている民間企業は希少です。
このような恵まれた環境にある公務員に対して、さらに手当を積み増そうとするが、今回の「佐倉市内在住職員向け持ち家手当」です。
次回原稿では、引き続き地方公務員の手当に関する説明の他、今回の佐倉市の条例案について解説します。
(続く)
【関連記事】
・佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題①
・佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題②