佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題②

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地方公務員の給与体系と考察

前回は、佐倉市の職員向け手当として、「持ち家手当」が復活しようとしている、という状況を確認しました。

(前回:佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題 ①

アゴラという広く国民に読まれる言論媒体で展開する論考である以上、佐倉市という基礎自治体の新設制度の是非だけではなく、「地方公務員に対する持ち家手当の妥当性」という大きな制度論としてもとらえる必要があると考えます。

公務員制度の中の手当

国、地方によらず、公務員をとりまく制度については議論すべき点は多くあります。

大きな論点としては、

  • IT化が進み、税収の減少が避けられない社会における公務員の「数」の議論
  • 年功序列式昇進制度で硬直化しているとされる公務員の「人事制度」の議論
  • 「減点主義評価制度」により「やる気を削ぐ」とされる公務員の「評価制度」の議論
  • クビになりづらい公務員の「身分保障」の議論

これらと並列の関係で、

  • 公務員の「賃金(各種手当を含む)」に関する議論

は位置づけられると考えます。

公務員全体の賃金が高いのか? 設定されている手当は妥当なのか? という議論は、政治家としても一国民としても大いに関心のあるテーマですし、議論を深めるべきと考えます。

他方、そのテーマを掘り進めていくと数冊の本を書く覚悟が必要なうえに、先にあげたような論点を前提にしない限りどうしてもバランスを欠いた論考になってしまいます。

そこで今回は、まず地方公務員の手当を含む給与とはどのようなもので、どのように決められるのか、という点に的を絞り概観します。

公務員の給与の決定

国家公務員の手当を含む給与(以降「給与」とする)は、「人事院」という内閣直轄の極めて独立性の高い組織が毎年査定しています。公表される査定結果は「人事院勧告」と呼ばれています。

なぜ国家公務員の給与を人事院という独立組織が査定しているかというと、公務員にはそもそもストライキを起こす等の労働基本権が制約されているため、労使交渉を通じて給与を決定することができないからです。そのため、できる限り中立公正な組織が、実情に合った公正な基準をもとに査定する必要がある、という整理です。

人事院が給与の基礎値を査定する際に用いるのが、民間給与実態調査というデータであり、そのデータ作成のための地域別調査の約8割を、都道府県や政令市に設定された「人事委員会」という組織が行っています。

地方自治体の公務員の給与は、当該地域の調査データなどを参考に人事委員会が毎年発表する「職員の給与等に関する報告及び勧告」に基づいて決まります。この関係は、「国家公務員の給与と人事院勧告」と同じです。

なお、佐倉市を含む一般市や町、村には人事委員会は存在しないため、それらの基礎自治体は所属する都道府県(佐倉市の場合は千葉県)の人事委員会の査定にあわせて、当該市町村職員の給与査定を毎年議会に提案することになります。そんなわけで、例えば「今年はコロナ禍で民間の給与も概ね下がっている調査結果がでたため、市職員の給与の基礎値もこのくらい下げますね」みたいな議案が、佐倉市でも毎年12月定例会に上程されています。

私は、人事委員会が調査対象としている民間事業者の規模には議論を深める点があると考える一方、その内容はおおよそ妥当だと思っています。国にせよ地方にせよ、行政に携わる人材の能力はそのまま国力に反映される大きな要素である以上、一定レベルの給与水準は必要と考える立場です。そうであるがゆえに、佐倉市の職員給与が人事委員会の設定値に準拠されている限り、私は市職員の給与に関する毎年の議案には常に賛成しています。

他方、今回の連載の趣旨である「公務員に設定される手当の妥当性」は、総務省の公務員部によって決められています。

次回は、公務員の手当の概要と、「持ち家手当」の是非を中心に考えていきます。

(続く)