黒坂岳央です。
「円安が拍車をかける安い日本」という論調が支配的となっている。円安、賃金が安く歩留まりしているという現象については、多面的に深く議論されるべきテーマであるため、本稿では割愛させていただく。
ともかく、1つ明確なのは「今後、日本人は外貨を稼ぐスキル」を付けることは有効なリスクヘッジとして機能しそうだということである。日本で働いてもいいし、海外を相手に外貨を稼いでもいい。この2つの選択肢を常に持っておくのである。日本国内で安く品質のいいものが手に入る状況が続けば、オンラインで外貨を稼ぐことでむしろこの安さは有利に働くはずだ。
いくつか個人的なアイデアを、言語化しておきたい。
1. 英語力
まずはなんといっても英語力、これがなければ話は始まらない。
「英語力は不要。大事なのはビジネススキルやコンテンツ力である」と主張する人もおり、部分的にこれは正しい。人間国宝に指定されるような芸術家、音楽家、漫画家などのクリエイターやスポーツ選手に高い英語力は要らないのは事実だ。抜きん出たスキルが有るなら、外国人の方から何をいっているのかを理解しようと努力してくれるからである。
しかし、圧倒的大多数の人にそのような特別なスキルはない。やはり、日本人側がビジネスコミュニケーションのツールとしての英語力を身に着けるべきだ。
世界には200を超える国家があるが、どの国でもグローバルビジネス、アッパー層は英語が通じる。英語はアメリカやイギリスなどのローカル言語ではなく、グローバル言語であるため外貨を稼ぐスキルに必須と言っていいだろう。
2. ビジネス専門スキル
ビジネスの専門スキルで、グローバルに通用するものがあれば有利に戦える。たとえばその1つがプログラミングである。
これは最も強力なニーズを有するスキルの1つであり、どの国でもプログラミング力に優れる人材に需要はある。さらに主流のプログラミング言語は世界で共通しているため、日本で取得した技術をそのまま海外で活用することが可能だ。筆者の親族はエンジニア職についており、勤務先に常駐する外国人エンジニアと一緒に働いたり、シリコンバレーへ出張しにいくが、これは彼のプログラミングスキルが助けてくれているからである。
国際的に通用するスキルは、もちろんプログラミングにとどまらない。国際会計基準、特許、EC、その他たくさんある。いずれにせよ、日本国外で通用するビジネススキルが肝要である。
3.異文化理解力
「英語は分かる、海外で通用するビジネススキルもある」。
これだけで十分に思えるが、それだけでは足りない。仕事をするということは、どこかで必ず人間と関わることになる。そのコミュニケーションにおいては、異文化理解力こそが仕事をする上で必要になってくる。筆者は最近、海外と仕事でやり取りをする機会が多いがこれを実感する。日本で日本人と日本語でコミュニケーションを取る感覚で対応すると、うまくいかないと感じることは少なくない。
たとえば外国人相手にビジネスを進める上で、相手の担当者をやり取りをするのだがビジネスのメールを出しているのに、「返事をしない」ということが起きる。これは日本ではあまり一般的ではなく、「返事を出さない側が悪い」という見方が一般的なはずだ。しかし、筆者自身がこれまで何度も経験をしていることの1つに、なにかお願いをする時は、丁寧な言い方でしつこくプッシュをしないと返事をくれない人は決して珍しくはないということだ。
返事がないことにしびれを切らして電話をすると「あのメールね!ちゃんと見てるよ!」と笑いながら言い、「しつこく言ってこないから、解決したか重要でないと思ってた」など、楽観的に解釈されてしまうこともあった。
また、少しでも厳しい口調に感じられるような言い方をすると、相手からへそを曲げられてしまうこともあるのでかなり気を使って丁寧にお願いをする必要がある。一部の人が抱きがちな「外国人はフランクに話をしても気にしない」というのは完全な誤りだ。ときには日本人相手より気をつけて言葉を選ぶ必要がある。
◇
他にもいくつかあるが、どんな仕事をする上でも身に着けるべき必携のものがこの3つだろう。SNSでは「海外移住」「日本脱出」という言葉が踊り並ぶ昨今だが、海外で外国人としてビジネスで勝負し、残りの人生で勝ち続けるにはなかなかハードである。外国人という立場は不利になるケースが多く、またビザの問題もある。
それなら、日本国内に住みつつ、スキルを付けてオンラインで仕事をこなせる道を模索する方が現実的で、遥かに有利に戦えるだろう。少なくとも自分はそうだ。ネットを探せば、オンラインでいくらでも仕事はあるし、今後メタバースが本格化すれば、ますます仕事はボーダーレスになる。大事なのは物理的に体を海外に持っていでることではなく、日本で海外で通用するスキルを得ることではないだろうか。
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