自民党の「統一教会」調査は法治でなく人治で逃げる

企業なら第三者委、政治家は自己申告

自民党が所属する国会議員と旧統一教会との関係に関する調査結果を発表しました。接点があったのは179人で、「一定の関係」があった121人については氏名を公表しました。

この問題の論点・視点は多数あり、どこを重視するかで見方が分かれるでしょう。それにしても、不思議な点がいくつもあります。まず「一定の関係」という不思議な表現です。「一定」とはなんのか。

関係、接点には議員によって濃淡があり、濃ければ「一定の関係」となるのでしょうか。一種の社会的な制裁の意味を込めたのか。民間企業に対しても、名前の公表は制裁、警告の目的で行政がよく使う手です。

次に、旧統一教会には、多額に及ぶ反社会的行為が多数あり、今回の安倍元首相の銃撃・死去の事件の原因になったとされています。企業が同様の不祥事を起こせば、第三者委員会の設置に追い込まれます。自己申告では不正の範囲、深さが見抜けない。それを防ぐためです。

今回の調査は自民党が議員からの自己申告に基づいて、行われました。企業には、外部の識者、専門家を含む第三者委員会の調査がなされ、法令違反などが厳しく追及され、トップを含め処分が伴います。「今後は反省します」では許されない。

自民党は自己申告、党による自主的な調査です。「今後、一切の関係を断つ」で幕引きですか。他の野党も同様です。企業には「法治」を求め、政治家は「人治」で済ます。ダブルスタンダードです。どうしてそういう区分がまかり通るのか不思議です。

もっと大きな不思議は、統一教会批判は「宗教の自由」に踏み込み、憲法違反に発展しかねないと、批判する識者が少なからずいるということです。宗教団体を名乗っていれば、「宗教の自由」を盾に、身を守れるということではありますまい。

「違法な霊感商法、高額献金などの行為、社会的通念から逸脱した団体であるのかないのか」に対する追及が、統一教会問題です。自民党調査もそこはわきまえていて、統一教会における「宗教の自由」と切り離して調査をしています。その調査の信頼性が疑われるということです。

自民党は「会合への祝電」、「広報誌に記事掲載」、「教会主催の会合、関連団体への出席」、「選挙運動への協力」などの区分し、自民党議員側からの調査にとどめています。それにしても「問題がある団体との認識はなかった」で済まそうとするのは「人治」です。

新聞の社説を見ると、「この調査では、どの程度、不適切であったのか判断のしようがない。安倍・元首相が果たしてきた役割が不明である」(朝日)、「信教の自由は言論の自由とともに『公共の福祉』の福祉に反しない限りの範囲において解釈すべきである」(産経)などと指摘しています。

今回の安倍氏銃撃事件で、統一教会問題が急浮上しました。国会議員との関係解明のほか、統一教会側の活動も問題にされ、これは河野消費者相が検討会を設け、議論を始めます。

それを警戒する識者、支援団体もあり、「どの宗教団体も信者からの献金、寄付によって成り立っている。創価学会と公明党も関係は公認されている」という論法が聞かれます。

こうして問題をどんどん拡散させ、統一教会問題に焦点が凝縮されないようにしたい識者らがいるのです。「霊感商法が批判を浴びたので、信者からの高額な献金、寄付に資金集めの軸足を置くようになった。その悪質さは群を抜いている」との専門家の見解のほうが説得力がある。

「宗教の皮をかぶった集金マシーン」、「宗教団体というより、特殊な集団」という指摘がどこまで正しいのか、河野審議会の議論を待ちたい。

それにしても不思議なのは、接点があった自民党議員が179人という多さです。統一教会の信者は「2万人とか数万人(日本国内)」と推定されています。この人数でよく手広く、政界に手を伸ばせたものだと思います。そのあたりの実態が分からないのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。