コロナワクチン副反応の救済認定においての問題点

ucpage/iStock

コロナワクチン副反応は、副反応検討部会予防接種健康被害審査部会とで審議されています。

前者では因果関係について審議され、後者ではワクチンの健康被害救済について審議されます。後者では、厳密な因果関係が認められなくても、可能性が否定できない場合は、救済認定の対象とするとされています。そのため、前者で因果関係が認定されなくても、後者では救済認定されることが有り得ます。したがって、後者の認定数は前者の認定数より多くなることが予想されます。

ところが、現実は逆のようなのです。つまり、実際には因果関係の認定数の方が多いのです。

具体例で確認してみます。前回解説した急性散在性脳脊髄炎(以後ADEMと略)の場合をみてみます。

α認定(因果関係あり)された症例は6例(ただしγ認定と混在)です。一方、救済認定された症例は1例のみです。救済認定された症例は、このリストの症例番号1545の症例です。

次に、ギラン・バレー症候群(以後GBSと略)の場合を見てみます。

α認定された症例は私の集計では38例(ただし多くはγ認定と混在)です。上の表はα認定された症例の一部です。一方、救済認定された症例は1例のみです。

何故、このような奇妙な逆転現象が起きているのか?

理由の一つ目は、副反応検討部会では、医療機関と製造販売業者が報告した症例の大半が審査されるのに対して、予防接種健康被害審査部会では、本人または遺族が救済認定を申請した症例のみが審査されることです。二つ目は、 申請の急増のため、審査が追いついていない ことです。三つ目は、副反応検討部会でα認定された時に、本人または遺族に通知されないことです。

副反応検討部会と予防接種健康被害審査部会とは独立して審査が行われており、審査情報は共有されていないようです。コロナワクチンには努力義務が適用されていますので、副反応が生じた人に対して、政府は最大限のサポートをする義務があるはずです。

α認定は因果関係の認定を意味しているわけですから、α認定された症例は、全例が救済認定されるべきなのです。そのためには、α認定された場合は、自動的に救済認定もされ、本人または遺族に通知される仕組みが必要です。α認定されても本人または遺族に通知されないというのは、あまりに薄情な政府の対応と言わざるを得ません。

次に、副反応による健康被害に対する給付金について考えてみます。

ADEMによる下半身不随のために日常生活に支障が生じ、家のリフォームに500万円要した例が CBCで報道されています。また、 サンテレビでは、GBSによる歩行困難のため5か月間入院した症例が報道されています。接種後に生じた障害に対しては、障害年金として年300万円~500万円が給付されることが定められています。

コロナワクチンの救済認定では、死亡一時金の認定が3例で、他はすべて医療費・医療手当の認定です。障害年金の認定は1例もありません。そもそも障害年金の申請自体があまりないようです。接種後に下半身不随のような障害が生じた時には、障害年金を受け取る権利があることが周知徹底されていないように思われます。

最後に、ブライトン分類とα認定の関係について考えてみます。この分類は、ワクチン接種後の副反応評価の世界的基準です。疾患ごとに詳細に規定されていますが、概略は次のような分類です。

【ブライトン分類】
レベル1.診断確定
レベル2.可能性が高い
レベル3.可能性あり
レベル4.情報不十分のため判断不能
レベル5.否定

ADEMとGBSの前記のα認定例のリストを見てみますと、因果関係の認定とブライトン分類のレベルとは、あまり関係がないように見えます。

ブライトン分類は診断の確かさの指標なので、レベル1だから直ちにα認定されるわけではありません。ただし、接種後一定期間内の発症で、レベル1またはレベル2であればα認定される可能性は高くなるはずです。現在、接種後発症の症例で、偶発例と非偶発例を識別するマーカーは発見されていません。したがって、α認定の根拠となるのは、ブライトン分類と接種から発症までの日数の二つです。

そのような視点でα認定のリストを見直してみますと、α認定の基準は不可解としか言いようがありません。レベル4またはレベル5の症例でα認定されている症例があります。一方、表には存在しませんが、レベル1で接種3日後発症なのにγ認定の症例があります。明確な基準というものがなく、審査する専門家が恣意的に判断している疑いがあります。

重篤な副反応の場合、救済認定されるかどうかは、本人や遺族にとって死活問題です。そのため、救済認定の基準は公明正大でなければなりません。恣意的であったり、総合的判断という不明瞭なものであったりしては、国民に理解は到底得られません。

【まとめ】

  • 副反応検討部会と予防接種健康被害審査部会は、審査情報を共有するべきである。
  • α認定された症例は、すべて救済認定されるべきである。
  • α認定された場合には、本人または遺族に通知されるべきである。
  • α認定と救済認定の基準は明確にされるべきである。