ブルーレイ補償金騒動:文化庁の暴走阻止に強力な援軍

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9月7日付投稿「時代に逆行する文化庁のブルーレイ補償金」(以下、「前回投稿」)のとおり、私的使用は権利者の許諾なしに可能だが、デジタル方式の録音録画については、利用者が補償金を支払わなければならない。

この補償金は私的録音録画補償金とよばれ、指定された機器および記録媒体の価格に上乗せする形で徴収されている。具体的な機器等は政令で定めることになっていて、文化庁は今回、ブルーレイディスクレコーダーおよびブルーレイディスクを指定する政令案を発表し、9月21日締め切りでパブリックコメントを募集した。

9月18日付、朝日デジタルの記事「著作権保護で現行ブルーレイに「補償金」課す案 メーカーは強く反発」のとおり、政令案に強く反発しているメーカーに強力な援軍が現れた。経産省時代にこの問題を担当した足立康史衆議院議員(日本維新の会)である。

足立議員は自身のユーチューブチャンネル「あだチャン」(あだち康史チャンネル)で18日夜、津田大介、小寺信良の両氏との対談を予定していた。小寺氏は前回投稿で紹介した8月29日付、IT Media NEWSの記事、「『ブルーレイに補償金』の筋が悪い理由 “中の人”が解説」の「中の人」。

足立議員の文化庁への質問状

対談は台風対応のため延期されたが、足立議員は文化庁あて質問状を公開している(令和4年8月23日付け意見募集「著作権法施行令の一部を改正する政令案」について)。以下、補足説明を加えながら紹介する。

1.政令案の決定手続きについて

1)機器追加を行う場合、審議会における権利者と機器メーカー及び消費者団体等利害関係者の合意を踏まえ、経産省(通産省)と文科省・文化庁とで覚書を取り交わす運用が制度導入当初より実施されてきました。今回の政策方針については、そうした合意あるいは覚書がないと承知しています。何故でしょうか。

後記2.で紹介する東芝裁判の知財高裁判決にも以下の記述がある。

(提出された証拠書類によれば)指定を行う2番目の理由として、「平成5年以降,権利者,メーカー等関係者間で、CD-Rの発売を巡り議論が行われてきた結果、今回、CD-R及びCD-RWを補償金支払いの対象とすること について合意が得られていること。」とされている。すなわち、法104条の5が前提とする法30条2項に基づく政令規定内容は、その当時の機器、録音・録画媒 体の実態に合わせて規定されてきたものであるが、本来の義務者でない者に協力義務を課することから、新たな録音・録画の機器の追加には機器製造業者の大方の合意が必要であったことが、施行令改正においてもその都度認識されていたということができる(判決31頁)。

下線のとおり機器指定を行う都度、大方の合意が必要であることが認識されていた。

2.政令案の内容、立法事実について

1) いわゆる東芝裁判における2012年上告不受理により2011年知財高裁判決が確定してから10年が経過しました。そうした中で、唐突にブルーレイレコーダーの政令指定が必要となった立法事実が不明です。明確なご説明をお願いいたします。

東芝など機器メーカーは、デジタル放送を録画する家庭用DVDレコーダーについて、録画番組の複製を10回までに制限する機能がついていることなどを理由に、補償金の支払いを拒否したため、権利者側が訴えた訴訟で、一審の東京地裁、二審の知財高裁ともメーカー側が勝訴。最高裁も上告を受理しなかったため知財高裁判決が確定した(下図参照)。

出典:JEITA(電子情報技術産業協会)

2) 令和2年10月の消費者実態調査結果を根拠としてお示しになってられますが、単に機器が私的録画に使用されている実態が追認されたものに過ぎず、この調査結果が「立法事実」たり得る論拠が理解できません。過去の審議会(現在の文化審議会著作権分科会)における機器追加要否の判断基準等と比較して合理的と言える説明(立法事実)が必要と考えますが、如何でしょうか。

消費者実態調査結果は、同調査での「HDD内蔵型BDレコーダー」における「過去1年間の保存容量データに占めるテレビ番組の割合が5割以上の者が52%」等の結果。

3) 2011年知財高裁判決の「著作権保護技術の有無・程度が録画補償金の適用範囲を画するに際して政策上大きな背景要素となることは否定することができない。(判決42頁)」との司法判断がある中、DRMの無かったアナログ放送と DRM のあるデジタル放送に対して同じ録画補償金の適用範囲とする政令に合理的な根拠はあるのでしょうか。

図の知財高裁判決の理由②参照。

4) 本政令指定が「知的財産推進計画2022」に規定されている「新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置」である点を、どのように制度として担保するお考えでしょうか。暫定性を担保するためには、「新たな対価還元策」に関する検討のスケジュール感が示される必要があると考えますが、文化庁の見解をお教え下さい。また、「新たな対価還元策」の検討の関係省庁をご教示ください。

足立議員の質問は以上だが、前回投稿で指摘したとおり、国会の議決が必要な法改正であれば当然、政治家のチェックが入るが、今回のような政令指定であればその必要はない。行政府かぎりの判断で実施可能だが、今回、足立議員がこの問題を取り上げたことにより、そのバイパスルートの先行きが不透明になってきた。