どうなるインフレと景気後退:FRBは0.75%の大幅利上げも新局面へ

注目のアメリカFRBの金融政策が発表になり、0.75%ポイントの利上げとなりました。私の周りからもどこまで上がるの、いつまで上がるのと言った声が聞こえてきます。切実です。この辺りについて今日は見てみましょう。

まず、今日のFRBの利上げ幅は当初から予想されていたもので市場にとっては利上げ幅は驚きとしては受け止めなかったのですが、FF金利の誘導目標を4.4%と今迄の3.25%から引き上げました。これが株価にショックを与えたのです。

会見するパウエルFRB議長 2022年9月21日 Board of Governors of the Federal Reserve System SNSより

ではFF金利(フェデラルファンド金利、日本の銀行間のコール市場のレートのようなもの)がなぜ引き上げられたか、であります。中立金利とも称するこの発想は抽象的概念であって「そう思う」という観念的なものです。これでは今年残りの2回の会合で1.25%の引き上げを暗示することになり、市場では「こりゃ、たまったものではない」という展開になったわけです。

この件については切り口が非常に多く、専門家のコメントも正直あまりあてにならないものが多いのが現状です。そこで今日は私の独断と偏見の見方をご紹介します。

まず、9月までFRBを含め、利上げを急いだのはインフレが収まらないために急いで景気を刺激させ過ぎず、冷めさせないレベルである中立金利を妥当な水準に引き上げる必要がありました。この中立金利は会合のたびに動くために7月には2.5-3.0%程度と言われた中立金利に利上げしたにもかかわらずまだインフレが十分に収まらず、今回9月も大幅利上げに及んだわけです。

私はこれを「Catch Up Process」と称してインフレと中立金利の追いかけごっこだと考えています。ただ今回の利上げで概ね射程距離に入ったと考えています。つまり私は中立金利は上昇から安定に移るとみています。

20日に発表になったカナダの8月度消費者物価指数は6月の8.1%、7月の7.6%から着実に下落し、7.0%となりました。多分、この下落は続くはずで年末までに5%台半ばまで落ちるとみています。ただ、カナダのニュースのトーンは違うのです。食品物価が年間で10.8%も上がって庶民の生活を直撃しているという訳です。

ではこの食糧価格の上昇をどう見るか、ですが、冷静に考えるとおかしいのです。なぜずっと上がり続けるのでしょうか?異常気象だという声もありますが、過去、世界の中である程度のバランスは取れていました。穀物に関してはカナダはウクライナの影響は受けません。国際取引価格が上がったとしても延々に上がるわけでもありません。しかも値上がり品目のトップは調味料、スパイス、酢です。これらは値上がりしたとしても家計への影響は軽微のはずです。肉や乳製品は6.5-7%の値上がりで平均より下回っています。とすると便乗値上げもあるのですが、統計のいたずらがあるような気がするのです。「食糧のインフレが凄い!」。これが独り歩きしているように見えるのです。

ではそれ以外を見るとガソリンは9.6%下がるなど明らかに夏前のあの狂乱からは沈静化しています。それとバックトゥスクールとなった9月以降はどこの店も空いています。レストランやホテルも結構閑散としています。価格が高いので「見ない、行かない、使わない」になっていると思われ、これが統計の数字としてやや遅行してでますので10月か11月の消費者物価指数はガクッと落ちると予想しています。

アメリカに関して言えば労働者の定着率が悪すぎでそれが人件費の高騰につながっていると考えています。いわゆるポストコロナの模索期でこれにはもうしばし時間がかかると思います。コロナで社会の景色が変わると思っていたのに実は元に戻りつつあるという現実に気がつくまで今年いっぱいぐらいかかるのかもしれません。

今後の利上げですが、インフレ率と中立金利のバランスを見ながらとなるのでいわゆる通常利上げ幅の0.25%の時代が復活しておかしくないと思います。それも来年春ぐらいまででせいぜいあと3-4回、つまり最大1.0%の利上げがあるかないか程度で基本は金利水準は平坦化してくると思います。23年はあくまでも世界情勢によりますが、比較的安定するだろうと予想しています。

今、カナダで定期預金をしたら金利がいくら付くと思いますか?3カ月物なら3.6%、1年の定期預金ならなんと4.3%です。1年前の10倍の金利です。こうなると株を買うより貯金の利息の方がましになります。これは例えば投資家を募るようなビジネス、起業系には向かい風です。

景気後退があるのか、議論されています。私の見方は「宴の後」。つまり踊り過ぎたところがはげ落ちて普通に戻るだけだと思います。地に足をつけてきちんとビジネスをしていたところは大丈夫でしょう。一方、借金を膨らませてしまった会社にはボディブローのようになります。向こう1年は堅実さが勝負になり、優勝劣敗が意識されるとみています。

最後に株価ですが、ダウに関していえば以前、30000㌦程度で止まるかどうかが関門と申し上げました。今日の終値が30184㌦ですので明日にもツッコミで一時的に3万㌦を割ったぐらいからチャート的にはW底回復し、市況が落ち着くように見えますが、29653㌦の今年の安値を下回れば下値模索になります。ちなみに私は今日、打診買いをしています。さてどうなるか。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月22日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。