宮内庁の詭弁:地方行幸の日帰りは国民に配慮して?
とちぎ国体の開会式に天皇、皇后両陛下が臨席されたことはまことに喜ばしい。東京以外でのこのような行事への出席は2019年9月以来3年ぶりである。地方訪問自体も20年1月に埼玉県の障害者施設を訪れて以来で、東京から両陛下が出られないというのでは、地方を軽視していると見られても仕方ないのだから本当によかった。
両陛下は、四大行幸啓に出席され、あわせ、県内を視察されるのが慣習で、だいたい10年に一度どの県でも両陛下を迎えることになる。
コロナ渦以来、リモートになってしまい、今年の春に滋賀県で行われた植樹祭にも出席されなかったので、はたして秋の行幸啓はどうなるかと心配され、とくに皇后陛下の出席は直前まで発表されなかっ無事に出席されてよかった。
もっとも、エリザベス女王の葬儀で海外におでましになり、ノーマスクで行事に参加されたのだから、地方には行かないというのでは説明がつかないわけで、エリザベス女王が御遺徳で背中を押されたといえるかもしれない。
ただ、残念なのは、車で皇居を出発され、開会式だけに出席されて、そのままお帰りになるという、いわば弾丸日帰り出張であったことは、さきにも書いたように、その県の人々にとっては、ご尊顔を拝し、地方の実状を見ていただき、会話もできる10何年に一度の機会なのだから、誠に残念であった。
理由として、「感染対策として、駅周辺が出迎えなどで人の密集状態になることを避けるため、新幹線は使わず、皇居から両陛下に車で移動していただくようにした。また1泊2日の日程も検討されたが、地元への負担を考慮して日帰りとした」などとしているが、スポーツイベントもコンサートなども普通に行われ、秋篠宮皇嗣殿下ご夫妻など他の皇族方も普通に地方へお出ましになっているなかで、いかにもとってつけた感がある。
宮内庁は陛下の地方ご訪問に対し「国民との親和のためには、直接触れ合うことが欠かせない」としてきたのだし、地元の人がコロナ感染拡大の引き金になりかねないから両陛下に来て欲しくないと考えるような状況ではまったくない。
基本的に、皇后陛下のご体調への不安が理由なのだから、それを、国民のためを思って日帰り弾丸行幸にしたと宮内庁がいうのは、地方の人にまことに失礼であろう。
眞子様騒動でもわかるとおりであり、また、諸外国の例を見ても、ロイヤルファミリー(インペリアル・ファミリーというべきだという人もいるだろうが、それはロイヤルファミリーの上位概念だから、ひっくるめて云う場合はロイヤルファミリーでさしついかえない)への批判はなかなか火がつかないが、限界点を超えると爆発し、それは君主制度を危うくするものだから油断するべきでない。
率直に、皇后陛下のご体調を考えて、日程を組んでいるとい説明すべきである。来年には、コロナ渦もおさまるだろうが、そのときになっても、上皇陛下ご夫妻の時代のような超人的なスケジュールで公務を行うことは難しいのであるから、最初からきちんと令和スタイルについて国民に説明すべきことだし、そうでないと皇后陛下が無理をされ、いっそう厳しい状況になりかねないことを心配する。
天皇陛下おひとりの公務を躊躇すべきでない
それから、皇后陛下が公務を最低限にされることは仕方ないしご無理をされない方がいいと思う一方、陛下まで一緒に国民とのふれあいの機会を少なくされるべきでないと思う。もちろん、陛下としたら、単独での公務は皇后陛下の不在を際立たせるので躊躇されるようなこともあるかもしれないが、それ以上に宮内庁が忖度しすぎだと思う。
なにしろ、ロンドンでは、レセプションや弔問は陛下一人でされたのに、なぜ栃木ではできないのか説明がつかない。宮内庁の差配に大きな疑問を感じる。皇后陛下は、開会式だけ出席され、あとは、東京にもどられるなり、ロンドンでそうであったように、体力が許す限りそのときの判断で参加されたら良いのである。ロンドンでは葬儀のほか、そのあろの外務大臣主催のレセプションにもサプライズで出席された。
あるいは、ほかの皇室メンバーを伴われてもいいと思う。愛子様は、大学にも三年間、通学されていない状況なので難しいだろうが、ほかの女性皇族でも良いと思うし、いずれ皇位を継承される悠仁さまの帝王教育として、陛下と多くの時間を過ごすことも不可欠だと私は思う。
これから、10月下旬には国民文化祭で沖縄へ、11月には全国豊かな海づくり大会が兵庫で予定されている。今度はそうした点にも配慮して、心待ちにしている地方の人たちの期待に応えて欲しい。
さらに、英国へのご訪問の際に、日本のマスコミが3年間、皇后陛下の肉声を放送してこなかったが、AP通信がついにキャッチしていたことも話題になっている。
『AERA』が報じるところによると、皇后陛下の声が3年ぶりに確認されたそうだ。19年8月以来だという。ご一家の那須御用邸での静養で、「風が気持ちいいですね」と語る声が放送された時以来だそうだ。
ロンドン到着後の19日両陛下は記帳をした。AP通信が20日その映像を配信した。素晴らしく貴重な記帳の映像だった。再現する。記帳用の台帳が置かれた部屋に両陛下が入ってきて、ページをめくる。「メッセージが」という陛下の声。「そうね」という雅子さまの声。「デイトなの?」と雅子さま。陛下が「デイト」と答える。雅子さまの声。「日本語……」。「見えて、聞こえる」。
皇后陛下の声を国民が聞くのが3年ぶりで、しかも、海外メディアが拾ったものというのは、複雑な気持ちだ。どうして、宮内庁は皇后陛下を国民から隠すのだろうか。どんな理由があっても尋常でない。