浦安の地価上昇にみる、人間とは「忘れる動物」

日本経済新聞電子版によれば、2022年7月1日時点の基準地価で、浦安市の住宅地は前年比6.6%上昇したそうです。

これは、東京や神奈川、埼玉を含む1都3県の住宅地で最も高い水準です。(図表を元記事で見る

浦安市にある東京ディズニーリゾート Wikipediaより

浦安と言えば、2011年の東日本大震災で埋立地で脆かった地盤が液状化して、大きな被害を出したことを思い出します。

地面から水が噴き出し、道路が隆起陥没した映像を見て、もうここには誰も住まないと思ったものです。高級リゾート住宅地のイメージが崩れた浦安でしたが、あれから10年以上経って、当時よりも地価が高くなったそうです。液状化の記憶は、多くの日本人には忘れられてしまったようです。

タワーマンションの人気も復活しています。数年前に台風の影響で武蔵小杉のタワーマンションが長期間停電し、エレベーターが使えず高層階にリスクがあることが露呈しました。しかし、今ではそんなリスクを気にすることなく、パワーカップルが1億円以上の物件を平気で購入するようになっています。

このような現象を見ると、人間とは「忘れる動物」であることがわかります。

コロナ渦でリモートワークが広がったことから、密になる都心から郊外に引っ越す動きが広がりました。

これも、コロナウィルスを多くの人が忘れてしまえば、以前の生活パターンに戻り始めるはずです。そうなれば、都心部への一極集中が、再び始まると予想しています。実際、今年に入ってから、東京都心への人口流入の動きが再び始まっています。

忘れることは、必ずしも悪いことではありません。過去の辛い経験や悲しい出来事は、忘れる能力によって癒されることもあるからです。

でも、地震や台風といった不動産の災害リスクに関しては、過去の記憶を安易に忘れてしまうのは危険です。世界的に気候変動リスクは大きくなってきており、地政学リスクと並び、無視できないレベルになっています。リスクを冷静に認識した上で、投資判断を行うべきだと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。