パリ国立オペラ座バレエアラン・リュシアン・オイエン”心の叫び”

オペラ座バレエ、新シーズンスタート。

7月ぶりのパレ・ガルニエ。相変わらずキラッキラ。

衣装展示は、ライモンダとバヤデール。マチアスやリュドミラ、ドロテらが着たもの。ソローのコスチューム、遠目からも誰が着たのかなんとなく分かる(笑)。

アラン=ルシアン・オイエンの新作”心の叫び”。

初日を見た知り合い&友人によると、”客席の半分以上が埋まっておらず、一幕で帰る人も続出、それもやむえぬ”と。でも今日は、ほぼほぼ満員。

なるほど、これは賛否両論。台詞がかなーり多い、芝居的バレエ。個人的には”バレエ的芝居”というほうがしっくりくるくらい。

舞台装置やライティング、演出は、芝居やオペラとして見るならそれなりに素敵だけれど、バレエとして見ると、全てどこかで見たことあるよね、な感じ。

言葉や演技という俳優的要素が多分に求められ、これを持ち合わせているオペラ座ダンサーは少ない。

マリオンはさすが。踊りも演技も素晴らしい。女優ね。シモン&アントナンもよいのだけれど、もっと黙らせてもっと踊らせてほしい。

面白い作品ではある、芝居として見れば。75分&70分という時間を2/3に縮めてくれれば、もっと楽しく見られるかも。ストーリーはあるし振付も悪くないけど、これだけ長いと振付も飽きる。コンテンポラリーで全幕もので大成功してるもの、ないよね?エクマンだってパイトだって、60分作品は魅力的だけど120分作品は冗長。

ストーリーが哲学的というか芝居的というか・・・。病気で死に向かう主人公マリオンの、絶望と抗い、虚しさが通奏低音になっていて、見ている方も辛くなる。ラスト、死んだところで終わりにすれば印象的だったのに。

台詞があまりに多いので、フランス語わからないと舞台上の英語字幕に頼らざるをえなくて、字幕見るとダンサーの動きを見損なう。バレエ作品なのに、本末転倒。

数ヶ月前にムーティが、数日前にはジョルダンが、今のオペラ演出に苦言を呈していたけど、わかるなぁ。演出家や振付家のエゴではなく、音楽、歌手、ダンサーファーストな公演を創作してほしい。

(テクニシャンも大切な登場人物)

後ろのマダムは、”エトワールが一人も出ていない!これはバレエじゃない!ダンサーは俳優でないので酷い演技を演技見てられない!こんなのに連れてきちゃってごめんね(夫に)!”と文句たらたら。そうなるよね(笑)。

聞いていたよりは興味深く面白い作品ではあるけれど、あくまでもバレエ付きの芝居であって、芝居付きのバレエではない。

コヴィッドの影響とはいえ、シーズン初めの作品としてはどうかな。バレエを見ようと来た観光客たちにちょっと同情する。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年10月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。