支持率3割を切った岸田首相は危機感を持っているのか

田原総一朗です。

岸田文雄内閣が、10月4日で発足1年を迎えた。私は岸田内閣に、当初非常に期待していた。その要因の一つに、岸田首相が宏池会(こうちかい)所属ということがあった。

宏池会というのは、池田勇人が創立以来、宮澤喜一や加藤紘一などが所属していた。いわゆる「ハト派」だ。かつて多くの自民党政治家が、田中角栄に代表されるように、金銭と女性関係が派手だったのに対し、宏池会の政治家は違っていた。

しかし、現在の岸田首相への期待は外れてしまった、と言うしかないだろう。私は以前のメルマガで、岸田首相は、「旧統一教会と関係していた議員に対し、党として何かしらの処分をすべきだ」と述べた。

しかし、けじめをつけられなかった。それどころか、党内調査の発表時、リストになかった細田博之衆院議長も、旧統一教会関係していたことが明らかになった。けじめがつけられない要因は、旧統一教会に関係する議員が多い安倍派への配慮としか考えられない。

これでは国民も失望して当然だ。安倍元首相の「国葬」問題もあり、内閣支持率も急落している。毎日新聞の世論調査では、29%と3割を切ってしまった(9/17、18実施)。もはや政権交代となる数字だが、そうはならない。

なぜか。まず野党に政権奪取する意欲がない。政権を担当する与党になれば、責任が生じる。しかし野党議員でいれば、責任は負わずに、批判をしていればいいからだろう。

次に自民党内にも、緊張感がなくなっている。かつてはよくも悪くも、派閥間の争いがあった。たとえば、田中角栄と福田赳夫の争い、「角福戦争」は有名だ。主義主張の違う派閥があったからこそ、政権に対する党内からの批判もあり、自浄作用となったのである。

小選挙区制になってからは、議員たちが党の公認をもらうために、執行部に対して「イエスマン」になってしまった。「党内野党」があるという緊張感は、すっかりなくなってしまった。

岸田首相は、安倍派に気遣っている場合ではない、死にもの狂いでやって欲しい。旧統一教会問題については、第三者委員会を作り、与野党が連携すべきだ。国民の信頼を失うという、その危機感をもっているのか。手遅れになる前に、岸田首相は動かなければならない。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2022年10月14日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。