4回目ワクチン接種でコロナの感染は増加する?

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第7波に収束の兆しが見えたのも束の間、国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が、今週になって増加に転じており、第8波が襲う懸念が高まっている。4回目のワクチン接種、さらにはオミクロン対応ワクチンの接種が始まったのに、ワクチンの効果は目に見えてこない。

コロナワクチンには感染予防効果は期待できないが、重症化予防効果があると多くの専門家は接種を勧めるが、国民の多くはワクチンを接種すれば感染が治まり、元の生活に戻れることを期待して接種に協力したのではないだろうか。

コロナワクチンの接種には努力義務が課せられているが、厚労省のホームページには、努力義務の説明としてまん延予防の観点から接種を受けるように努めなければならないと記載されている。この文面からはワクチンの感染予防効果を期待してのことだろう。

ワクチンを打てば打つほど感染しやすくなると警告する専門家もいるが、最近のコロナのまん延状況からは、あながち、否定もできない。そこで、4回目接種を行っている国と行っていない国、さらには、都道府県別の4回目ワクチンの接種率と新規感染者数を比較することで、4回目接種で感染の増加が見られるのか否かを検討した。

図1には、イスラエルと日本における4回目ワクチン接種以降の新規感染者数の推移を示した。

図1 日本とイスラエルにおける4回目ワクチン接種後の新規感染者数
 CSSEGISandData/COVID-19

イスラエルは世界で最も早く、昨年の12月30日から4回目接種を開始した。接種開始がオミクロン株の流行開始と重なり、4回目接種直後から、過去最大の流行に見舞われた。日本でも、今年の5月25日から4回目接種を開始したにもかかわらず、新規感染者数はその後激増し、7月中旬からは、10週連続で世界最多を記録している。

図2には、アジア諸国の中で、4回接種を行っていないインド、インドネシアと、4回接種を行っている台湾、韓国の新規感染者数の推移を示す。

図2 4回目ワクチン接種を行った国と行わなかった国における新規感染者数
CSSEGISandData/COVID-19

インドは、昨年4月からデルタ株による流行が始まり、5月には1日40万人に達する感染者数を記録している。デルタ株による流行は一旦収束したが、今年の1月にはBA.1による流行が始まり、1日の感染者数は30万人に達した。BA.1による流行も3月には終息し、7月から8月にかけてBA.5による小規模な流行は見られたものの感染爆発は起こっていない。

インドネシアもインドとよく似ており、昨年の6月から8月にかけてデルタ株による流行があり、1日の感染者数は最大6万人に達した。その後、今年の2月をピークに再びBA.1による流行が見られた。4月以降はインドと同じく8月にBA.5による小規模な流行は見られたものの全体として落ち着いている。

台湾の感染者数は、昨年末までは一桁を更新し、世界でもコロナ対策の優等生と目されていた。しかし、今年の4月に入るとオミクロン株による流行が始まり、5月には1日の感染者数が9万人を超えた。5月16日から4回目のワクチン接種が開始されたが、その後も流行は続いている。台湾の人口は2,356万人で、日本の1/5であるが、合計の死亡者数は12,000人を超え、人口あたりの死亡者数は日本よりも多い。

韓国も台湾と同じく、昨年末まではコロナの感染はコントロールされていたが、今年に入ってオミクロン株による流行が始まり、3月中旬には1日の感染者数は40万人に達したが、その後は、流行は一旦収束する気配を見せた。韓国では4月13日から4回目接種が開始されたが、7月になると患者数は再び増加し、8月中旬には15万人を超えた。

4回接種を行っていないインドやインドネシアは、BA.1による流行も今年の3月に終息し、それ以降は大きな流行は見られない。台湾、韓国は、イスラエルや日本と同じく、4回目ワクチン接種後に感染爆発を経験している。

日本、台湾、韓国では、4回目接種を始めたのにもかかわらず今年の6月以降にBA.5による感染爆発が起こり、現在も終息していない。インドやインドネシアでも、この時期にはBA.5が感染の主流だったのに、大きな流行が見られなかったのはどうしてだろうか。

インド、インドネシアではデルタ株やBA.1による感染爆発を経験したので、全人口における抗体保有者の占める割合が高く、日本、台湾、韓国では、インドやインドネシアほどの流行を経験しなかったので、抗体保有者の占める割合が低かったのだろうか。

そこで、各国の6月1日の時点における、累積感染者数が全人口に占める割合を比較して見た。インドやインドネシアの割合は3%、2%であるのに、日本、台湾、韓国の割合は、7%、9%、35%で、かえってインドやインドネシアよりも高かった。

日本では5月25日から4回目接種が始まったが、都道府県によって接種率に差が見られる。接種率が高いのは東北地方の秋田県や山形県で10月17日現在、それぞれ39%、38%である。最も低いのは沖縄県の18%である。

図3は、ワクチンの接種率が上位の5県と下位5県の4回目ワクチンの接種率と、10月11日から17日までの人口100万人あたりの新規感染者数をプロットしたものである。

驚いたことにワクチン接種率が全国で最も高い秋田県や山形県の新規感染者数が最も多く、反対にワクチン接種率が最下位の沖縄県が、新規感染者が最も少ないという結果であった。ワクチンの接種率と感染者数が逆相関することを予想したのであるが、10県の分布を見ると逆に正の相関がみられる。

もう一つ、気付くことは、感染者数が多いのは長野を含めて全て東北、北海道の寒い地方で、暖かい沖縄は最も感染者数が少ないことである。今後、気温が下がってくると全国的に流行が始まる可能性が高い。

世界各国やわが国の都道府県の感染状況を見ると、4回目接種によって、かえって感染者数が増加することが見て取れる。少なくとも、4回目接種はまん延予防に貢献していない。

 

それでは、ワクチンを打つ目的は、感染予防効果でなく重症化予防効果であるという説明を裏付けるデータは得られるだろうか。10都道府県の4回目ワクチン接種率と人口あたりのコロナ感染による死亡者数の関連を検討してみたが、両者に関連は見られなかった。

4回目接種に使用されたワクチンは、武漢株の遺伝情報に基づく従来型ワクチンである。BA.5に対応したオミクロン対応ワクチンを使用すれば、今回の検討とは異なる結果になったかもしれない。しかし、先の論考でも述べたように、オミクロン対応ワクチンのヒトでの予防効果を示す十分なデータは示されていない。世界に先駆けてBA.5対応型ワクチンの接種を開始するわが国には、その効果を検証し、その結果を世界に発信することが期待される。

これほどワクチンの接種が進んでいるのに、これまで、わが国から発信されるワクチンの予防効果については、2〜3の小規模な研究結果が論文化されているのみである。大規模なリアルワールドのデータが求められる。

厚労省がこれまで発表してきたワクチン接種歴別の新規感染者のデータは、HER-SYSに基づくものであるが、9月から全数把握の簡略化によってワクチンの接種歴の記入が省略されるようになった。その結果、HER-SYSで集められたデータを用いてワクチンの予防効果の検証ができなくなった。実際、9月14日からは、厚労省からワクチン接種歴別の新規感染者のデータは公表されなくなった。

ワクチン接種を推進する以上は、ワクチンの効果を検証できるデータを自国で収集すべきである。