6回目の核実験で核先進国に追いついた
日・米・韓の外務次官会合が26日都内で開催され、もし仮に北朝鮮が7回目の核実験を強行すれば『比類ない規模の対応』をすると警告を発した。
北朝鮮は、2017年9月3日正午過ぎに同国の核実験場である豊渓里(プンゲリ)で、第6回目の核実験を実施した。この時の核爆発規模は、広島に落下された原爆の約10倍の威力である160キロトン程度と推定された。
この実験によって北朝鮮当局は『ICBMに搭載可能な小型の水爆実験に成功した』旨の発表をした。これは米・露・中などの核先進国に北朝鮮が技術の面で追いついたことを示唆する。
どんぶり勘定の核
当時私は新聞やTVなどのメディアにおいて、北朝鮮は爆発威力を可変式に調節できる小型軽量の〝ブースト型核爆弾〟に成功したと断じた。また、科学的技術的にみて、もうこれ以上実験をする必要はない。今後はさらなるスリム化と高性能化に磨きをかけるとともに一気に量産化と実戦配備に進むであろうと論じた。
スリム化のポイントは、ICBMの弾頭部分に複数(8体程度以上)の核弾頭を装着する小型軽量化であり、高性能化のポイントは可変式の爆発威力を最大500キロトン程度にまで高めることである。これらは技術的課題なので比較的ハードルは低い――要するに実験によって原理を検証する必要性はない。また量産化の第一段階の目標は数百体の核弾頭を製造し配備することにある。こうすれば一応ザックリと米国に対抗できる態勢が整う。
これは〝どんぶり勘定〟状態の核保有である。量産化の次の目標は数千体の核弾頭であり、そうなれば米国の核と拮抗できる。さらにいえば最終目標はその一桁上にいある。中国に比肩する核強国の実現である。
量産化は可能なのか
北朝鮮は核開発技術をフルセットで保有している。核爆弾の製造に必要な高濃縮ウラン、プルトニウム、そしてトリチウム(三重水素)のいずれもを製造するノウハウと装置を保有している。主なものはウランの濃縮施設であり、プルトニウムを製造する原子炉である。
この原子炉は、かつての非核化交渉の中で、2008年に冷却塔が自主的に爆破されプルトニウムの製造ができなくなることを装ったが、原子炉本体や主要施設は温存された挙句とうの昔に再稼働している。
北朝鮮は最初の核実験を行った2006年当時でさえ核爆弾を数個から10個程度製造できるプルトニウム量を保有すると推定されていた。プルトニウム製造も高濃縮ウラン製造も一時的には施設の破壊や放棄に追い込まれたかに見られたが、厳然として継続していたとみるべきだろう。
最初の核実験から15年以上の歳月が経っている。2017年からは5年が過ぎた。どんぶり勘定の核製造には十分な時間だとみる。ただし、どんぶり勘定から最終的な核強国への道には相当量のプルトニウム製造が必須であり、現在ある寧波の原子炉(黒鉛減速型5MW、プルトニウム製造炉)では力不足の感は否めない。しかしそれも時間の問題とも言える。
7回目の核実験の意義
7回目の核実験は、科学的技術的観点からはもはや必要ないと見て良いのではないか? では一体どのような意義があるのだろうか。
もはや皆さんのご記憶にはないかもしれないが、2017年の6回目の核実験後に北朝鮮は世界からの怒涛の批判にさらされ、経済制裁がより一層強化された。その挙句、北朝鮮の政府高官が国連の場で、北太平洋上空での核弾頭ミサイルの実戦さながらの爆破実験をする用意があるとほのめかしたことがある。超高軌道(ロフテッド軌道)における高高度核爆発実験である。こうなれば強力な電磁パルスが発生し日本の中枢機能は破壊され社会インフラが機能不全に陥り、多くの人命が失われると議論を呼んだ。
今次、同様の事態に陥れば7回目の核実験も絵空事ではなくなるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争はますます混迷を深めているが、一部メディアで北朝鮮がロシア相手に兵器取引を行っているのではないかとの疑惑が持ち上がっている。これは新たな火種であり、ことの成り行きによっては北朝鮮の常軌を逸した行動の引き金ともなりかねない。
私たち国民も日本国政府もこのような事態にもっと真摯に向き合い、まっとうな危機意識を持つべきだと思う。