行政事業レビュー・秋の年次公開検証は11月10日まで三日間開催されている。僕は2日目(11月9日)、環境省の「熱中症対策推進事業」を担当した。
事業は大きく二つに分かれている。広く国民への啓発と、地方公共団体による地域としての取り組み強化である。
国民への啓発は、シンポジウムや熱中症予防情報サイトを通じての広報が主である。予防情報サイトには2021年度に4364万回のアクセスがあったという。一方、シンポジウムへの参加者は2021年度が717名、22年度が1326名と極めて少ない。20世紀の対面型からネット利用型に事業の中心を移していく必要がある。
僕は次のように発言した。
そもそも広報活動はだれ(層)に情報を届けようとしているかを定め、その層に最も効果的に届くように工夫する必要がある。情報サイトも訴求力を増すように改善する必要がある。たとえば、スマホで熱中症警戒アラートを受信した層に訴求するなら、アラートにサイトへのリンクをつけるだけではなく、サイトでよい情報が入手できると訴えるコンパクトな説明を添えておくのがよい。また、ソーシャルメディアの活用、インフルエンサーの活用など、時代の変化に対応して組み替えていくのがよい。
地方自治体の取り組み強化について、他の外部有識者は次のように発言した。
特定の地方公共団体でのモデル事業によって他の地方公共団体に何を訴えようとしているのかが見えない。
また、両方の活動を通じて10年間の成果、具体的に熱中症警戒時に国民がどう行動変容したかという根本を評価するべきという意見も出た。
レビューの結論は次のとおりだった。
国民への啓発については、対象者を定めることで訴求力を高め、事業の実施により各個人の行動がどのように変わったのか、行動変容を把握できるような指標を設定する。他の地方公共団体が参考にできるようにモデル事業を実施する際には、効率的に横展開されるように事業内容を整理・明確化した上で、事業効果が明確に把握できる指標を設定する必要がある。
行政事業レビューは、民主党政権下での事業仕分けに比較して注目度が低い。しかし、紹介したように、個々の事業の効果や効率を改善するための議論が続いている。レビューの様子はネットでも視聴できるので、一度、見ていただきたい。