緊急事態下の国会機能の維持について党派を超えて議論

憲法審査会発言要旨(2022年11月10日)

実質的な議論としてはこの臨時国会で2回目となる憲法審査会が開かれました。緊急事態において国会の機能をいかに維持するかについて、具体的な条文のイメージも交えた活発な議論が交わされました。

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バラバラの内容を各自が言いっぱなしではなく、テーマを決めて集中的に議論できたことはよかったと思います。代議士として国民の負託を受けた以上、今後も建設的な議論を重ね、一致点を見いだせるように「対決より解決」で臨みます。

冒頭、今後の審査会の運営について申し上げたい。これまでの議論の中で、ある程度コンセンサスが得られたと思われる項目の一つである「緊急事態条項」、とりわけ議員任期の特例延長にテーマを絞って議論することを提案したい。言いっ放しではなく、具体的な議論の成果を出せる審査会の運営を求めたい。

その上で、3月31日、すでにこの場で述べているが、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。

私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、「行政の簡易・迅速な権力行使」を可能とする“権力行使の容易化条項“としての緊急事態条項ではなく、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権力行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

まず、国民民主党は、行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態の要件は明示的に限定列挙すべきと考える。具体的には、

  1. 外国からの武力攻撃
  2. 内乱・テロ
  3. 大規模自然災害
  4. 感染症の大規模まん延

この4つのカテゴリーを原則とすべきと考える。

国民民主党は、手続的統制の方策として国会機能を最大限維持することが重要だと考えているが、かかる観点から、宣言を発令するのは内閣の権限とする一方で、緊急事態の宣言について、原則、国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることを考えている。この点は、自民党の2012年改憲草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだと考える。

その上で、手続的統制の第二の方策として、司法による統制を機能させることを考えている。具体的には、緊急事態宣言の要件が満たされているのかどうかの「要件充足性」について最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制することを検討している。

例えば、「緊急事態宣言が発生された場合又は延長された場合において、いずれかの議員の総議員の4分の1以上による申し立てがあったときは、最高裁判所は、その宣言が要件を満たしているか審査し、申立てから30日以内に判決を行わなければならないとし、満たしていないとの判決を行ったときは国会及び内閣に対して解除の勧告を行うとする」旨の規定を設けるのも一案だ。

私たちは、国会議員の任期満了時に緊急事態が宣言された場合、議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定を憲法を改正して設けるべきとの立場だ。その際、いつまで任期を延長できるかについては、多数派の恣意的な決定を排除するため、各議院の3分の2以上の多数で延長期間を定めることを考えている。

この延長できる期間の決定においても、最高裁判所の関与を求める案も考えられるが、我が党としては、緊急事態宣言の発令するかどうかの最初の入口の判断の際に限定して、最高裁判所の関与を求める仕組みを検討している。

また、緊急事態にこそ、国会機能を可能な限り維持することが必要であるとの観点から、国会開会時の閉会制限と閉会時の召集義務を課し、また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。さらに、解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定することも検討したい。

加えて、オンラインを活用してもなお定足数を満たさずどうしても衆議院、参議院の本会議が開けない場合には、ドイツにおける「ミニ国会」のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても議論している。

いずれにしても、国民民主党としては、緊急事態においてもできるだけ国会機能を維持するため、特に、「緊急事態の定義」と「議員任期の特例延長」についての議論の具体化を急ぐべきだと考える。

なお、任期の特例を創設するに当たっては、憲法54条2項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。

国民民主党としては、条文上、解散時に加えて任期満了時を読み込むことは困難であること、また、両院制を正しく機能させる必要があることから憲法改正が必要であるとの立場である。

ちなみに、平成23年の質問主意書に対する政府答弁書(平成23年11月11日内閣衆質179第23号)においても、大規模災害が国政選挙の直前に発生した場合に、「法律を制定することにより『選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長すること』はできない」、すなわち憲法改正が必要とされている。政府答弁でも、立法措置では国会議員の任期の延長はできないとされており、政府あるいは内閣法制局からもヒアリングを行うことを提案したい。

国民民主党としては、今述べたような緊急事態における統制の具体的内容について党内で議論しており、いずれ条文の形でお示ししたい。いずれにせよ、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。

最後に、SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響を考えるため、また、外国勢力が、いわゆるディスインフォメーションを用いて偽りの情報を流布することで国家の安全保障が脅かされる可能性について検証するためにも、2016年の米国大統領選挙において投票行動が操作されたとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで話を聞くことを改めて提案したい。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2022年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。