米国CDCが現在推奨している新型コロナ感染症予防対策

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米国の新型コロナ感染症予防対策は、日本のそれとしばしば比較されます。ただし、ネット記事の多くはそのソースを示していないため、その真偽が不明な場合が多いように思われます。

一例を挙げてみます。某ネット記事 より引用です。

8月19日、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、新ガイドラインを発表し、アメリカ国民のほぼすべてがワクチン接種と感染で免疫を獲得した現在、感染者の強制隔離や社会的距離は不要との方針を示した。これは経済を活性化させたい政治家や官僚の発言ではない。医学・公衆衛生の専門家の意見なのだ。

CDCが本当に社会的距離(ソーシャルディスタンス)を不要と主張しているのか、少々気になります。そこで、確認してみることにしました。

ソースは、米国CDCの公式Webサイトです。直訳すると不自然な日本語となるため意訳し一部補完しています。正確に知りたい方は、原文をお読みください。

【米国CDCの新型コロナ感染症予防対策】(2022年10月19日アップデート)

1.すべての人の日常生活で推奨される感染症予防対策

a.ブースター接種
b.手洗い
c.換気
d.発熱などで感染が疑われた時は検査を受ける
e.検査陽性者は、最低5日間は、自主的に自宅などに隔離
f.検査陽性者との接触を避ける

2.リスクが高い人の日常生活で推奨される感染症予防対策
(高齢者や基礎疾患を有する人は、重症化リスクが高い)

すべての人の対策に加えて以下の対策を推奨

a.公共の場で屋内にいる時には、マスクを着用する
b.ソーシャルディスタンスを保つ
c.混雑した場所を避ける

CDCではソーシャルディスタンスを完全に不要としているわけではありません。高齢者や基礎疾患を有する人の場合は、屋内でのマスクを着用や、ソーシャルディスタンスを保つことが推奨されています。

実際には、米国では高齢者においてもマスクをする人は少なく、ソーシャルディスタンスも保たれていないように見えます。ただし、これは米国民がCDCの推奨を無視している結果であり、CDCが現状を是認しているわけではありません。

また、CDCは現時点でもブースター接種を推奨しています。米国のブースター接種率は低いですが、CDCがブースターを不要としているわけではありません。

なお、今回の論考では感染症予防対策の是非について論じることはしません。ただし、感染症予防対策を米国と比較するのであれば、米国CDCが何を推奨しているのかについて正確に知っておく必要があります。

ネットの論考で疑問を感じた時には、一次情報を確認することが大切です。