11月28日の予算委員会において、玉木代表が岸田総理を相手に質疑を展開しておりましたが、玉木代表の不思議な人間的魅力が実に印象的でした。
玉木代表はいつもそうですが、岸田総理や与党議員をもふんわりと味方にしてしまって、背後から政権をも動かしているであろう官僚機構と対峙しているのが見て取れます。
例えば「やったほうがいいですよ、これ。与党の皆さんも、総理これね、私もちょっとちゃんとチェックした方が良かったんですけども、特別高圧外すの正直知りませんでした。与党の皆さん知ってました?党審査の時に。…」というシーンや、総理から思わず笑いが漏れるシーンなど、「テーブルの同じ側」に入り込んでいる様は“与党の同僚議員”の雰囲気さえ醸し出しています(生の映像で確認できます)。
また、当該質疑の全文は文字起こししましたので、文章でじっくり分析したい方は添付資料をご覧ください。
衆議院予算委員会玉木雄一郎国民民主党代表質疑(11月28日)文字起こし
ところで、今国会は国民民主党(以下「国民」)の“優勝”です。もちろん、独断と偏見に基づく勝手な断定に過ぎませんが、そう断ずる根拠を提示します。
今国会はなぜ「国民」が“優勝”なのか
理由:政府与党施策に国民の意図(要望)を大きく反映させたから
報道によれば、今国会で取り決める一般会計の歳出総額は28兆9222億円で、物価高の負担軽減策として具体的には「電気・都市ガスの負担軽減策として3兆1074億円」、「ガソリンの店頭価格を抑える燃油補助金に3兆272億円」を計上するとのことです(報道より)。
このエネルギー関連の2つの負担軽減策には、「国民」が掲げて政府与党にプレッシャーをかけ続けてきた行動の影響が色濃く反映されております。この今国会で決めた補正予算の“目玉政策”に多大な貢献をした「国民」こそが、野党各党の中で最も大きな仕事をしたと評価いたします。もちろん「国民」案そのものではありませんが、電気料金の負担軽減に関しては、7月の参院選から「国民」が公約として掲げ、粘り強く推進していました。
その推移は、次の通りです。
6月26日(参院選)「再エネ賦課金の一時徴収停止による電気代値下げ」を「国民」が公約。
10月6日(国会)代表質問で玉木代表が岸田総理に同案を提案。
10月9日(地上波テレビ)自民甘利議員が同案に否定的な見解を表明。
10月20日(党首会談)玉木代表が岸田総理に同案を“レクチャー”。
10月23日(地上波テレビ)自民新藤議員が同案に肯定的な見解を表明。
11月28日(予算委)岸田総理の政策を玉木代表が評価。
11月29日「令和4年度第2次補正予算案」衆議院可決。
国民の声を吸い上げる活動に最も精力的に従事している党代表は「国民」の玉木代表です。このエネルギー関連の負担軽減策も、一人の若者の声から生まれたとのことです。ただ、国会開会当初、自民党甘利議員が表明した通り、同案の旗色は良くありませんでした。しかし旧統一教会問題や閣僚失言問題などが相次ぎ、岸田政権の支持率が急低下して行くにつれ、支持率に反比例して同案の国民に与える実利の価値が上昇したようです。
結果は、一転して採用となりました。電力は事前に予想された通りこの冬3割前後値上がりしそうなので、もしこの軽減策がなかったら、家計にも景気にも打撃となったところでした。
実際にはもっと複雑な経緯を経ているのでしょうが、一般国民の声が、選挙公約となり、国会に届けられ、実のある政策として実現されて行く過程は、誠に爽快な出来事でした。
この他にも「外為特会為替差益の活用案」や「防衛政策」など理由を挙げたいのですが論点が拡散してしまうので近々別稿「これぞ予算委員会②(予定)」で述べさせて頂くこととし、「再エネ賦課金」に関連する重要事項を指摘しておきます。
「再エネ賦課金」に関して徴収停止と同様に大切なこと
実は「再エネ賦課金の徴収停止」で施策が完了してしまうと国政としては片手落ちです。徴収停止と等しく、最も重要なことは、「実際にかかるエネルギーコストの低減」です。
そのために政治家の決断次第で可能になることがあります。それは、
「原発再稼働の促進」です。
原発再稼働の具体的な論点は、アゴラ執筆陣の有識者による正鵠を射た論考が多数ありますので、私が今更述べる必要もありませんが、関連する問題としてあえて一つだけ提示するならば、
「再エネ賦課金徴収停止をしただけでは、コストを政府が緊急避難的に肩代わりしたにすぎない」
ということです。欧州で戦争が勃発しエネルギーや資源高騰が世界的な問題となって急浮上した今、政府による臨機応変な今回の緊急避難行動は評価できます。その一方、権利処理や法体系整備、あるいはインフラの建設などは、多くの人や組織が関係し、推進するには中長期的な時間のかかる話です。しかしここに妥結点を見出し、現実のエネルギーコストを引き下げ、2011年以来つづく歪なエネルギー供給体制をより妥当な方向へ改革することもまた、緊急避難と同等以上の価値を持つ、政治の仕事ではないでしょうか。
政府・与党に加え、有力な野党の側も真剣に議論して頂くことを要望します。
むすび
今国会は、事前の予想通り、多くの野党が旧統一教会問題に時間を使い、政局に明け暮れました。マスメディアと一部野党は、“閣僚の首級”を3つ上げたことで目的達成に近づいたでしょう。
ただし、この「旧統一教会問題」とは「30年前の宿題」です。確かに、今更ながらではあっても取り組む意味はあります。しかし、憲法の精神とも深い関連のあるこのテーマに、拙速な解を出しても実効性の程度は大いに疑問です。そのうえ、日本を取り巻く経済および安全保障の環境激化に思いを致すならば、優先順位的にも多くの時間と労力を費やして議論するテーマだとは思えません。
今、喫緊の課題は安全保障問題です。10月17日の国会で、萩生田自民政調会長が安全保障環境の問題を掲げ、「防衛大臣による海保の統制要領の不在」と「海保と自衛隊の武力攻撃事態における相互連携の共同訓練の欠如」を指摘しました。しかしそれから1か月以上経った11月28日時点、統制要領は整備に向けて動いているようですが、「海保と自衛隊の武力攻撃事態における共同訓練」はいまだに動きがないようです。
旧統一教会問題や失言問題で政局に忙しい野党も多いのですが、世界情勢を考えた場合、そのようなことで多くの国会討論の機会を使ってほしくはないと私は考えます。
国民民主党は、支持者のみならず一般の国民と接する機会を増やし、特に若い国民は今何を考えているのか、声をよく収集しています。そのため各党の中で一番民意を把握しているように感じます。支持者も党員も議員も比較的若い国民民主党を引っ張り、野党でありながら与党の重要人物の懐に入り込み、政策に国民の声を届ける玉木雄一郎代表とは、実に不思議な政治家です。こういう人物こそ、日本の閉そく感を打破するためには最も必要とされているのではないでしょうか。