日本という国の最大の弱点とは?

黒坂岳央です。

最初に主張しておく。自分は我が国日本をとても誇りに感じており、世界から見て非常に成功した国家だと思っている。

人口が一億人を超えた国家で、言論の自由があり、平均寿命は世界トップクラス、世界に影響を及ぼす文化と一人あたりのGDPが比較的高い大国は世界広しといえどもアメリカ、もしくは日本以外に存在しない。英語で海外情報にあたれば、日本は日本人が考えている以上に比較的高い評価を受けていることが分かる。今のところ、海外移住する気はないし、できるだけ日本にお金を落としたいと考えて生活をしている。

しかしながら、手放しに褒めるだけでは能がないし、世界から見て弱いと思える点もあると思っている。個人的に感じるその弱点とは、「一度決めた決まりを頑なに堅持し、再評価や改善をしない」というものだ。日本をよく研究している中国人の中には、この問題点を認識している人が意外なほど多く、中国語圏やインターナショナルな書き込みの場で件の指摘を見かけることが過去に何度もあった。

本稿は日本愛であるが故に建設的意見を主張する意図を持って書かれた。

F3al2/iStock

なぜ有料レジ袋運用は続いているのか?

初期のコロナの感染拡大、ソーシャルディスタンスが叫ばれる最悪なタイミングで「有料レジ袋義務化」が施行された。導入タイミングの悪さもさることながら、結局のところこの有料レジ袋義務化がもたらした明確かつ誰もが納得感のあるメリットは今のところ見当たらないままだ。

内閣府が11月25日に公表した世論調査では、有料レジ袋や使い捨てプラスチックスプーンなどを辞退した割合が8割にのぼることが明らかになった。これだけを見れば、「スーパーやコンビニなどの店頭で消費されるプラスチックは減少した非常に成功した施策」と言えるかもしれない。

しかしながら、こうしたニュースへの反響を見るに、「事前に100円ショップやスーパーで安価なレジ袋の代替品を購入して運用している」「エコバッグを使用」といった声が多数を占め、店舗によっては万引きの増加で苦しんだり、エコバッグに入り切らない商品は買い控えられるといった消費抑制の負の効果もあったようである。つまるところ、この施策は多面的、総合的に評価すると、決して「大成功」などとは言えないのではないだろうか?

政府はこのような新しい施策の導入には意欲的でも、その後のメンテナンスについてはあまり積極的でないように見える。国家全体の効率性の向上を目的とするなら、導入後の効果測定や、施策の持続・撤退判断などの再検討が必要なはずだし、総合評価を国民にしっかり報告してもらいたいと思う。

有料レジ袋についても、大成功には思えないが、今も施策が続いている。これはもう「施策導入は単なるパフォーマンスだったのでは?」と感じてしまう。間違いを犯さない人なんて世の中に一人もいない。一度導入した施策も効果がなければ、過ちを認めて撤退する勇気が必要だろう。

お祭りで見た不思議な感染対策

先日、筆者は数年ぶりに開催された屋外のお祭りに参加した。その際、休憩スペース用の椅子と机は距離が取られ、アクリル板設置され、マスク着用は義務となっていてボランティアに駆り出された中学生が、誰かが座って席を空ける度にせっせとアルコール除菌をしていた。

厚生労働省は屋外でマスクの必要のない場面では、マスクを外すことを推奨している。この呼びかけがあまりに浸透しないためか、最近は税金を使ってSNS広告出稿をしてまで呼びかけをしている。祭りを運営する市は、未だに2年前の感覚のまま停止しているように思えた。

秋晴れの風が吹き抜ける屋外において、十分に距離が取られている状況でこのアクリル板は一体、感染拡大防止にどれだけ大きな役割を果たすのだろうか? 声をだす事がないまま、屋外でマスク着用をする意味は? 厚生労働省の呼びかけとの齟齬については? 中学生の若き貴重な時間資源を無意味に消耗させてしないだろうか? あらゆる疑問が脳内をぐるぐるしてしまった。

これは推測になるが、おそらく市の職員の中にもわかっている人はいるはずだ。しかし、彼らが防ぎたいものの本質はウイルス感染ではなく、市民からのクレームだ。もしも最新の状況に則った運営をしようものなら、2年前の正体不明の感染症と対峙した時の感覚が抜けきれないままでいる、一部のノイジーマイノリティからの批判が寄せられてしまいかねない。その対応が面倒であるため、このような運営となった可能性はある。

真相は分からないが、仮にそうでも変化できていないことには変わらない。

日本が変化するために必要な2つのこと

状況や環境が変われば、有効な対処法も変わる。朝令暮改の発想で、柔軟に変化に対応する力が必要だろう。それを実現するために2つの重要と感じるポイントがある。

1つ目は批判への対応力である。おそらく、日本人の多くは批判慣れしていない。同じような顔をして同じ文化圏で空気を読み合って育っているために、黙っていてもわかり会えるからだ。沈黙のまま衝突を避けている人も多いはずだ。しかし、顔は似ていても意見は人の数だけ存在する。当然合わない人も水面下ではたくさんいる。批判への対応力を得ることにより、変化する勇気を持つことができるのではないだろうか?

もう1つは思考停止にならないことだ。たとえば、安定企業や公務員を目指す人の中には「就活や、入社後のキャリアの舵取りを思い悩まずに済むから」という理由の持ち主が意外なほど多い。しかし、本来は人生の生き方や仕事は周囲の環境や状況が変化するのに合わせて、都度変化に対応し続けるべきである。安定企業といえど、いつ潰れるかも分からないスピーディーな変革の時代において、思考停止でいることはかえってリスクになる。

今回は日本人の弱点について論考はしたものの、一方で明確なロールモデルを持ちチームワークを発揮して進んでいくやり方は得意な国民性も持ち合わせている。この弱点を克服できるなら「変化できない日本」の汚名を挽回することで上昇機運に恵まれるのではないかと思っている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。