各地で中学校休日部活動の地域移行への取り組みが始まっています。しかし、特に地方においては、休日の指導員を確保するのに四苦八苦している実情も浮き彫りになっています。
休日の部活、地域移行しても教員が指導? 先行実施で浮かんだ課題
教育現場で長年部活指導に携わってきた筆者からすると予想通りなのですが、結局外部指導員の役割を、教員(学校)が担わないと運営できない地域が相当割合あるということです。
部活動が休日に地域移行しても、教えるのは教員で活動場所が学校なら、子供や保護者からすればこれまでと変わらず学校の部活動と錯覚してしまうかもしれません。
それでも「休日の校務がなくなり、専門的指導のできる教員が希望して”地域指導員”の立場で行うから、教員の負担軽減になるのではないか?」という見方もありますが、絶対的に外部指導員が不足していれば、困った運営団体から地区内の学校に要請がなされ、本来は希望意志のなかった教員まで、責任感から義務的に引き受けざるを得ない状況になる恐れがあります。これでは元も子もありません。
この原因は文科省が地方の実態をほとんど考慮せず、指導者も運営団体・施設も確保しやすい大都市圏をスタンダードと考え、部活動の地域移行を進めているからではないでしょうか?
また文科省は、現在の部活動の形態を概ね踏襲したイメージで、休日の部活指導の地域移行を考えているようですが、その場合前述の人員不足も含め、指導者側に次のような課題が残ります。
- 教員の平日部活指導の残業手当はどうするのか?(給特法はそのまま?)
- 部活指導を正式な職務に位置付けないで行うのか?
- 休日活動中の怪我・トラブルの管理責任や引率・運営、大会の主催など、学校と外部指導者間でどう分担するのか?
- 外部指導者の人数・質は確保できるのか?
そして地域指導員不足は”部活動の地域移行問題“の氷山の一角にすぎません。約1年前になりますが、読売新聞にこんな記事も掲載されています。
記事の最後にある「部活を時代に見合った形に改めるには、まず位置づけと目的を明確にすることが不可欠」は、まさしく筆者の言いたいことでもあるのです。
そもそも部活動は何のため、誰のために行うのでしょうか? 地域移行を進める前に、まず主役である子供(生徒)の側に立って、部活動の必要性・あり方を考えるのが先のはずです。半年ほど前には、筆者自身部活動の地域移行について苦言を呈しています。
もし部活動が学校教育・子供の心身の成長にそれほど貢献していないのなら、地域移行どころか、現在形態の部活動は廃止するのが筋です。また、部活動が子供の心身の成長に貢献している場合でも、学校外の組織が肩代わりできるのなら、平日学校(教員)が指導する必要はなく、休日だけ地域へ移管するのは矛盾します。そして外部より学校が担った方が効果的な場合でも、部活動が現在の形態で良いのか、変更する(例えば同好会サークル的活動)のが良いのか、学校教育・子供の成長の観点から改めて考えるべきでしょう。
すると部活動は次のような手順で改革していくのが良いのではないかと思います。
(1)子どもたちにとっての部活動の意義・必要性(やりがい、楽しさ、心身の成長など)を検証
(2)部活動が必要な場合、現在の形態でよいか?
【現在の形態を持続の場合】
- 学校が主に担う場合…教員の勤務条件の改善[給特法の改正・廃止、部活動の正式な職務化(残業手当の支給)など
- 地域が担う場合…指導者の確保、学校活動との区別、責任の所在等
【現在の形態を変更の場合】
- 学校が担う場合…同好会的活動、旧必修クラブ(授業として単位修得)活動など
- 地域が担う場合…スポーツクラブ、サークル(多くが参加できる受け皿として)
(3)部活動が必要ない場合
- 学校の部活動廃止
- 地域のスポーツ活動…トップアスリート養成~同好会サークルまで自由に
現在の子供たちの部活動の参加・活動状況や意識から考えますと、個人的には現状の形態を全国一律で踏襲するのは難しいと考えられ、次のような思い切った変革も必要かもしれません。
- 学校教育では、勤務時間内に行うクラブ・サークル活動として、生涯スポーツや文化・芸術活動の楽しさを教えることに徹する
- 高度なスキル習得やプロを目指したい子どもは、地域のアスリート養成クラブなどに自費で参加する
- 学校対抗としての全国全県規模の大会を廃止し、クラブ対抗に切り替える
こうした場合、教員にとって部活指導は明確に職務・校務ではなくなります。逆に言えば、いくら“教員の負担軽減”を謳ったところで、給特法が廃止され、部活動が正式な校務にならない限り、休日だけ外部指導員に委託したところで、教員の働き方改革はお茶を濁した程度で終わってしまうでしょう。
部活動は本来子供の心身の成長のために行わるものです。文科省・スポーツ庁には、ぜひ子供の立場になって部活動の今後の在り方を考え、それに合わせて教員の勤務体系を改善していく流れで取り組むことを切望します。