ペルーのカスティジョ大統領、薬物を飲まされ精神状態が錯乱?

ペルーのカスティジョ大統領 PERÚ, CASTILLO, DROGADO PARA HACER AUTO GOLPE ESTADO.15-12-2022.

極度の貧困者が大統領に

今回セルフクーデターを行ったカスティジョ大統領※は、アンデス山脈の渓谷に位置する過疎地で育った。田舎の教師をしながら農地解放で分け与えられた畑を40年耕して来た貧困者だった。それが突如ペルーの大統領に変身したのである。政治についての経験はゼロ。カスティジョ大統領が唯一幸せだと感じていたのは地元の住民が彼を訪問した時だったという。

そのような彼が、議会を解散し暫定政府を樹立させるという演説を放ち、セルフクーデターの決定を下した。それには誰かが背後からそのように導いたからだという憶測がされている。彼の判断ではないということなのである。

※弾劾が決議され失職したカスティジョ氏に代わり、現時点ではディナ・ボルアルテ副大統領(60)が同国初の女性大統領となっている。

カスティジョ大統領は正常な状態ではなかった

カスティジョ大統領の政権下で最初の首相に就いたベリード氏は、カスティジョ大統領が議会で読んだ演説文を作成した責任者が誰か追及する必要があると訴えた。そしてそれを議会で読んでいる時の彼は誰かの仕業で薬物に冒された状態にあったはずだと指摘した。

カスティジョ大統領がセルフクーデターの演説を放つ前日までは、議会が罷免決議案を提出した際には、それに4人の閣僚が反論する意向であった。その為に大統領官邸では広報担当官らの協力を得てこの4人の閣僚はそのための演説のリハーサルも行ったという。

ところが、7日に大統領官邸に閣僚が招集された。そこで閣僚が驚いたのはカメラとスポットライトが用意されていたということである。それを閣僚のひとりが後日メディアに語った。同閣僚がその時のシーンを語っている。それによると、労働大臣のアレハンドロ・サラス氏が大統領に向かって「それをしてはいけない」と窘めていたそうだ。ところが、その一方で首相のベッツィ・チャベス氏と前首相のアニバル・トッレス氏はカスティジョ大統領の意向を強く支えていたという。

広報担当チームの2か所からの情報によると、ペルーテレビ局のスタッフを官邸に入らせたのは首相のベッツィ・チャベス氏で、大統領のメッセージを生放送で中継させる為だったという。更に、首相と前首相の両氏はカスティジョ大統領が語った内容に同感していたそうだ。しかも、この二人は大統領が読み上げた演説文を用意するのに手伝ったらしい。

即ち、前日の大統領の罷免決議案に反論する姿勢を維持するのではなく、その姿勢が一日経過した途端に180度変化して議会を解散させるという方向に移行させたということだ。それを支持したのは首相と前首相の二人であったという。

セルフクーデターを行う背景にあったもの

それにしても疑問が湧くのはカスティジョ大統領がなぜ首相と前首相の意向に沿ってセルフクーデターという自殺行為を取ったのかという疑問である。

その疑問を解くカギとしてある情報筋は、大統領が頼りにしていた政党自由のペールのすべての票が罷免決議案に反対するという確信が持てなかったのではないかということらしい。(以上は12月8日付の「ラ・ナシオン」から引用)。

しかも、カスティジョ大統領を罷免させる動きは彼が大統領に就任した時点からあった。共産主義者の政党から出た来た彼を長年右派が支配して来たペルーの議会では容認できなかったのである。だから数度罷免させる動きがあった。そして軍部も共産主義者が背後にいる大統領を支持することはなかった。退役将校の間で軍部にクーデターを遂行すべきだという奨励の書面を送っていたことも表面化している。

カスティジョ大統領はこのような逆行に就任以来1年半も耐えて来たのである。

そして今回また罷免の動きが野党議員の間で生まれたのであった。しかし、野党議員の間では罷免できるだけの十分なる議席数を確保できる保障は実際にはなかったという。

ところが、政府はこれまで以上に焦りを感じていたようだ。特に、不安だったのは大統領を支える自由のペルーの全ての議席がそれに反対するという確信が大統領自身にもてなかったようだ。

このような事情から今回はチャベス首相とトッレス前首相のセルフクーデターを行うという提案を大統領が受け入れたようだ。

セルフクーデターは失敗

事前に十分なる準備もなく行ったもので、しかも軍部がそれを支持しなかったということから大統領は家族の安否も気遣ってメキシコへの亡命を考え、同国の大使館に向かった。ところが、彼を乗せていた車に同乗していた彼の護衛官が逆に彼を裏切って最寄りの警察署に彼を導いたのである。恐らく、彼は20年の禁固刑の判決が下されるであろう。

ペルーは1992年から7人の大統領が汚職で逮捕されている。

Enrique Ramos Lopez/iStock