公明党・創価学会の強さの秘密は「鉄の結束」なのか?

保守派の人たちから、自民党は公明党と手を切らないと憲法改正などできないという声がある。

憲法改正ついていえば、自民党が衆参両院で三分の二をうかがう議席を確保できて憲法改正発議の可能性が出てきたのは、公明党の協力あればこそだし、国民投票で勝利しようとすれば、やはり公明党の支持が必要だろう。創価学会あげて憲法改正に賛成というのは少し難しいだろうが、せめて消極的支持くらいでないと勝ち目はない。

また、自民党の候補者で誰それには公明党の推薦がなかったので負けたと恨みがましく言う人もいるが、それは、推薦をしてもらう前提になる相互協力の話し合いをしようとしなかった候補である。

小選挙区で票を回してもらいたければ、比例区で少しは協力するべきなのである。もちろん、参議院選挙の都道府県ごとの選挙で公明党の支援を断った勇ましい女性もいたが、人気があるからとりあえず当選するだろうが、地方選挙で票をまわしてもらわなければならない、県議選の候補者などにとっては、しわ寄せがくるわけで、迷惑なことだ。

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ところで、創価学会の集票力はすさまじいとよくいうが、本当なのだろうか。そのあたりについて、「日本の政治「解体新書」: 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱」(小学館新書)で詳しく分析したので、その要旨を紹介する。

世間では公明党、あるいは創価学会というと「鉄の結束」というイメージが先行している。また、「上意下達である」という印象を持つ人が多い。

しかし実際には、創価学会は一般会員の意向に神経質な組織である。とくに女性部(旧婦人部)の力はよく知られている。

創価学会の強さの秘密の一つは、一般会員の意見の吸い上げの重視と、何か指令を出す場合も丁寧に説明することであろう。

選挙のときには「〇〇に投票するように」といきなり強い指令が出るわけではない。もちろん、公明党の候補者については団結するが、自民党の候補者や首長選挙で特定の候補者を推す場合は、それぞれの場合に応じて手加減もする。

市会議員選挙などで複数の公明党候補が出馬したとすると、例えば個人的繋がりで500票は集めるようにいわれたりはするが、組織票については各候補が平等になるように地区割りがされる。個人的な繋がりで組織票を乱すことは絶対に許されないので、すべての候補の得票が平準化され、全員が当選できる仕組みになっている。

別に公明党や創価学会でなくとも、政治の世界で力を持とうとすれば、「票を回す」ことができるかどうかは重要なことである。自分たちに投票してもらうだけでなく、他の党派や候補者に投票してくれと頼んで承知してもらえる組織や政治家は、政党、企業、労組、団体のどこにおいても強さを発揮する。

そういう意味では、公明党や創価学会は票を融通できる強さがある。その強みを生かせば、別の選挙区や選挙で――例えば市議会選挙と県会議員選挙で票の交換だって可能だ。

逆に、自民党や公務員労組、さらには浮動票頼みの政党や政治家はそれができないから、街頭で「小選挙区は自民、比例は公明」などと叫んで公明党を立てて、創価学会員たちの協力を仰がなくては当選できない状況となる。

もう一つ指摘できるのは、創価学会の人たちは他人を説得する能力も非常に高いことだ。他の宗教の人たちは、他人に自分の信心する宗教の書籍などをプレゼントすることが多いが、創価学会の人は購入するように頼むのが上手だ。そういうことを通じて鍛えられた説得する力が選挙のときにものをいう。

創価学会の人々の言語能力の高さいついてだが、以前、中国の程永華・元駐日大使の日本語が非常に感じがいいという話になり、ある人が「中国でもいい家庭の出身なのでしょうか」というので、私は「いや、創価学会の人たちの話し方でしょう」と答えたことがあった。

程元大使は、日本にまだ中国人留学生があまり来ていない70年代半ばに創価大学で学んだ人である。池田会長が将来を見越して中国人留学生を受け入れたというのも大変な先見の明だが、彼らに感じのいい話し方をしっかり教え込んだのにも感心する。

ただ、創価学会もほかの宗教と同じように、信者数の減少に悩んでいる。宗教離れは、伝統宗教でも新興宗教でも顕著だ。

そんな中で、創価学会は子供が無理なく信心を続けられるように努力しているし、その成果もあるが、それでも苦しい。新興宗教で信者数が伸びているのは、コンサルティング能力に秀でた真如苑くらいだ。

かといって、創価学会の信者以外からの得票をもっと増やすとか、かつて新進党に公明党を解消して合流するということになると、その新進党のときの苦い思い出がネックになるようだ。

また、もっと候補者をたくさん立てたらどうかというと、創価学会は会員の負担が重くなるので嫌なのである。会員の生活に無理がない程度に、候補者を絞って確実に効率の良い選挙応援にするのもまた、強さの秘密なのである。