『PRESIDENT Online』での皇室シリーズの第2回として、『世界でたった1人のエンペラーだから」ではない…天皇陛下が世界中から尊敬される3つの理由 1979年までいた、もう1人の知られざる「皇帝」』というものを出した。
Yahoo!Newsにも転載されており、第1回は文春・新潮が主導するアンチ秋篠宮家キャンペーンで洗脳された人たちが記事を何も読まずに書いたコメントの餌食になったが、今度は、その人たちからは好意的なコメントを頂いている。
その人たちによれば、もともと日本の皇室など評判はたいしたことなく、昭和天皇のために地に落ちた日本の皇室の評判は、上皇陛下の謝罪外交によって信頼を獲得し、エリザベス女王の葬儀に出席された両陛下は絶賛を浴びたらしい。
歴史的経緯としてはでたらめであることはいうまでもない。明治天皇は世界から尊敬されて、多くの賓客がやってきたので、その疲れも長生きできなかった原因といわれているほどだ。
昭和天皇は戦争中は敵から批判されたし、戦後処理でもその処遇をどうするか議論があった。しかし、マッカーサーが心酔したというのは言い過ぎだが、旧連合軍も日本の民主化を進める上でも、昭和天皇の存在が好ましいと評価したのである。
そして、危惧された欧米訪問も過度に謝罪などすることなく、散発的なデモや個人的恨みをもつ王族などの抗議も共感を得られず大成功だった。その過程で、とくに、ベルギー王室の支援は感謝すべきだ。
コメントを見ていると、保守派の神様扱いも困るが、アンチ昭和天皇のもの知らずにも驚く。
平成の両陛下の丁寧な心遣いと抜群の行動力は、劇的でないにせよ、アジアを中心に皇室の評判を括弧たるものにした。とくに、中国訪問は、そうだった。それに対して保守派は、政治的に利用されたと批判する。
このあたりは微妙なところで、皇室に対して中国がアンチであると困るし、一方で、政府の立場を超えた謝罪などするのは不適切なので、訪中は昭和天皇のときはできなかったのだが、天安門事件直後ということで中国がお言葉の内容についてあまり注文つけずに歓迎してくれそうだったから訪中に踏み切ったのである。
皇室がアジア、ことに中国から「反省しない日本」の象徴にされるのは絶対に避けたいからハト派的印象は不可欠だが、それが目立ちすぎると政府の立場は犠牲になるし、国益に合致しなくなる。さらに、うっかりすると皇室自身にとっても昭和天皇を否定することにもつながりかねない。その微妙なバランスの元で皇室外交は展開されているのである。
保守派もいわゆるリベラル派も、そのあたりの現実外交を理解しようとしないから、どっちも理念的に勝手なこと言っている(そのあたりは、「日本の政治「解体新書」:世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱」(小学館新書)に詳しく書いた)。
韓国についても、中国と事情は同じで、天皇訪韓が日韓関係を良い方向に変えていくのに資するタイミングを慎重に見定めねばならない。よく似た事情にある、エリザベス女王のアイルランド訪問には、一世紀近くの時間が必要だった。
もし、尹錫悦大統領の支持率が上がればチャンスだが、なかなか難しい。なんとか、今上陛下の治世のうちに訪韓が実現できればといった気持ちでいいのではないか。
ただ、つなぎということでいえば、佳子様の訪韓はアリだと思う。韓国国民には喜ばれるだろう。韓国の人々は美しさを正当に評価する国民性をもっている。これは韓国国民の偉大な長所だ。
両陛下が英国訪問で絶賛されたというコメントも多いが、それは、日本の一部マスコミからということだ。皇后陛下は葬儀とその後の英国外相主催のレセプションには参加されたが、国王主催のレセプションは欠席された。
両陛下の葬儀出席は、BBCのニュースでもまったく報道されなかったのが実際である。今回の訪問は、両陛下がコロナ以降、初めて東京を離れられ、また、皇室外交を再開されるきっかけになったことに意義がある。
重要なステップであるが、これをもって「絶賛」などというのは、ひいきの引き倒しである。こういう賛辞は、皇后陛下が、本来の実力を発揮されるとか、ご体調を考慮したスタイルを確立されたときにこそ残しておくべきなのでないか。
PRESIDENT Online記事の内容は、ただひとりのエンペラーの意味について詳しく解説し、日本の皇室と並んでもう一人の最後のエンペラーだったある国の皇帝の話などを書いているので、ぜひご一読いただきたい。
■