新春のお慶びを申し上げます。
昨年は、3年目に突入したコロナ禍に加え、2月にはロシアによるウクライナ侵略、ゼロコロナ政策の失敗による中国経済の停滞などにより、戦後の国際秩序が崩壊の淵に立たされ、世界経済の変調と深刻なエネルギー危機に直面する激動の一年となりました。
安全保障環境を無視してきたGDP比1%規制を撤廃
そのような中、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面した我が国は、安全保障政策の大転換を決断しました。向こう5〜10年で我が国の防衛力を全面的に強化するものですが、何より画期的なのは、戦後半世紀以上にわたり防衛力整備を縛り付けてきた「GDP比1%」という防衛費の上限規制を撤廃したことです。
その上限規制は、昭和51年三木内閣で定められて以来、我が国を取り巻く安全保障環境とは無関係に、歴代政権によって“暗黙の了解”として継承されてきました。それでも、我が国の平和と安全が守られてきたのは、国連を中心とする国際秩序の下で、圧倒的な軍事力を誇るアメリカという同盟国の後ろ盾があったからだといわざるを得ません。
いつまでも“アメリカ頼み“は通用しない
しかし、そのアメリカも国連も、国連常任理事国のロシアによるウクライナ侵略を抑止することができませんでした。また、昨年9月以来50発以上の弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の蛮行を止めることもできません。さらには、過去30年で40倍以上にも膨れ上がった軍事費に任せて圧倒的な軍拡を推進し、東シナ海や南シナ海、台湾海峡で強硬な軍事活動を行っている中国を明らかに持て余している状況です。
このような中、我が国のみが安全保障環境の悪化を見て見ぬふりをして防衛努力を怠れば、地域の軍事バランスは益々不安定な方向に傾いてしまいます。そこで、故安倍元総理の後押しもあり、岸田政権が「防衛力の抜本的強化」の旗を掲げ、自民党では一昨年の暮れから1年以上かけて在るべき防衛力の姿を議論し、昨年末に安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を策定し戦後政策の大転換を行ったのです。
国会で堂々と議論をしよう!
そして、いよいよ今年の通常国会では、5か年計画の初年度となる防衛予算案とともに、3文書および防衛力整備の中身についての本格的な与野党論戦が行われることになります。とくに、昭和31年に国会で合憲性が確認されていたにもかかわらず、周辺国への配慮やコストかかり過ぎるとの理由から導入を先送りにしてきた「反撃能力」の保有をめぐる議論が白熱するでしょう。
反撃能力は先制攻撃ではなく抑止のため
私は、複数の隣国が極超音速滑空兵器や弾道ミサイルによる奇襲攻撃能力を有する今日、“受け身”のミサイル防衛網だけで国民の命と平和な暮らしを守り抜くことはほぼ不可能になっている現状に鑑み、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつも相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から「有効な反撃を相手に加える能力」がどうしても必要な時代になったことを、正面から国民に説明すれば十分納得を得られるものと考えます。
こうした有効な反撃能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止するのであり、相手を挑発するような先制攻撃を企図するものでは全くありません。
防衛力強化の財源、今は増税の時ではない
問題は、5年間で約43兆円もの防衛費をどのように捻出するかです。財源をめぐっては、昨年末の自民党税制調査会で激しい議論が交わされました。結局、岸田総理は「増税という安定財源なくして未来への責任は果たせない」と言明し、今年度は増税せず歳出改革等によって捻出するものの、令和9年度までのいずれかのタイミングで年間1兆円規模の増税を行う方針を打ち出しました。
しかし、私を含め、多くの同志議員が、このコロナ禍とウクライナ戦争、円安などにより打撃を受けた経済、企業、家計を下支えするために大規模な経済対策を行っている一方で、増税を声高に叫べば消費や投資意欲を萎えさせ、賃上げ努力に水を差し、景気後退でかえって税収を減らしかねないと強く警鐘を鳴らしました。
増税以外のあらゆる選択肢を追求しよう
結局、自民党においては、萩生田政調会長が、「年明け早々にも、増税に頼らない財源についての議論を(税制調査会の上位機関である)政務調査会で行う」ことで党内議論を引き取り事態を収拾したのです。
今後は、通常国会における与野党の議論と党内論議を連動させながら、持続可能な防衛費増額(GDP比2%程度)を支える安定財源の確保と経済危機突破のための財政・金融政策とをバランスさせる“現実解”を追求していくこととなりますが、私もその議論の先頭に立ってまいります。
【参考】防衛財源についての私の考え方
予算倍増で、こども達の未来保障を拡充
喫緊に財源が必要なのは、防衛力整備だけではありません。私が取り組んできたもう一つの課題である「こども達の未来保障」のための予算も倍増しなければなりません。
現状GDP比1.7%のこども予算をOECD平均の3%に近づけるのです。今年の4月から「こども家庭庁」が始動します。これまで、厚労省、文科省、内閣府に分散していた“こども政策”機能を同庁に統合し、政府、自治体、民間が一体となって、こどもと子育て家庭を全力でサポートする仕組みをつくり上げるのです。
こども予算の財源は「こども国債」で
不妊治療に加え出産も保険適用とするほか、児童手当の増額、幼児教育・初等教育に続き高校の完全無償化(所得制限の撤廃も!)、大学・大学院・専修学校生に対する給付型奨学金の拡充、既存の奨学金の返済猶予、さらには、児童相談所の増強、ネウボラの整備、多様な働き方のニーズに応える「みんなの保育園」の実現、こども食堂やこども宅食支援などなど、政策・制度総動員で子育て環境を劇的に変えるための財源を捻出しなければなりません。
そのためには、10年で50兆円の「こども国債」を発行するのです。現役世代にいま投資することによって、こども達が成長し税収として“お釣り”が来ますから、国債発行に十分な正当性があるはずです。防衛力整備を歳出改革で乗り切りつつ、こども財源は10年間の集中投資でこの危機を突破しようというものです。
たしかに安全保障も未来保障も戦後最大の危機に直面していますが、この危機を正面から捉え、未来に向かって思い切った投資を行い日本再興のチャンスに変えていく、今年はそんな一年にするべく全力を尽くしてまいります。
編集部より:この記事は、衆議院議員の長島昭久氏(自由民主党、東京18区)のオフィシャルブログ 2023年1月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は衆議院議員 長島昭久 Official Blog『翔ぶが如く』をご覧ください。