新型コロナワクチン接種後死亡の危険と接種の意義は

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新型コロナ上陸から3年、そのワクチン接種開始から1年半が過ぎ、接種後の死亡が報道されている。本当に新型コロナワクチンは危険なのか。

新型コロナについてはYahoo! Japanがトップで統計データを毎日更新している。既に2022年12月11日現在で新型コロナワクチン接種者は累計3億4250万人に達し、累計感染者数は2597万6852人、死亡者は51725人、死亡率は0.199%つまり感染者500人に1人である。

令和4年11月11日の第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会での報告では、令和3年2月17日から令和4年10月9日までに報告された新型コロナワクチン接種後の死亡事例は計1683件、累計接種者数に対する死亡率は0.00000491つまり0.00049%である。

「意図せぬ死因」との比較

人間の死亡率は100%、人は必ず死ぬ。問題は、いつ、どのように死ぬかである。我が国の実質的寿命は90歳前後に達している。100歳近くなり事故でもなく死ねば天命、大往生と想えるだろうが、100歳でも殺された、車にはねられ死んだ、等なら非業の死として悔やまれるだろう。

では「コロナで死ぬ」「コロナワクチン接種後に死ぬ」人は、他の意図せぬ死因と比して、どうか? 2020年で見ると令和4年の我が国人口推計1億2512万5000人に対し、

  • 交通事故死 3718人=0.00297%
  • 火災焼死 1326人=0.00106%
  • 自然災害・事故死 1099人=0.000878%
  • 手術死 0.8~1.46%(心臓冠動脈バイパス術)
  • 麻酔死 4858人 1万対6.78人=0.0678%
  • 入浴中死亡 4750人=0.00380%

新型コロナワクチン接種後死亡より、「非業の死」による死亡確率の方が一桁高い。なおインフルエンザワクチンによる死亡者数は、令和2年~3年シーズンに3名、0.0000046%と報告されている。

 

有害事象と相関、因果関係、関連死とは

クスリはリスク、と筆者は大学時代教わった。医薬品には必ず副作用がある。食べ物を食べ過ぎても具合悪くなることがあるように、リスクは常に必ず存在する、その確率の大小が問題である。

医薬品には有害事象という概念がある。その医薬品の使用後に起きた、あらゆる心身の有害な出来事を指す。ワクチン接種後の交通事故、自殺、通り魔被害も有害事象になり得るし、海外で落雷で死亡も有害事象とされている。どう考えても無関係でも、新薬開発等の場では報告対象となる。本当の副作用を見逃さないためである。

一方で相関と因果関係という言葉がある。卵を落としたから割れた、ガソリンまいて火をつけたから火事になった。原因と結果が論理的に結びつき説明可能なことが因果関係である。

「コロナワクチンを接種したら死亡した」はどうか? 累計3億人以上接種すれば有害事象は確率的に増え死亡も増える、これが相関である。しかし「コロナワクチンによってなぜ死亡したか」は、アナフィラキシーショックを除いて証明不能、因果関係は不明である。しかしワクチン被害救済のため一定基準で補償は認定されている。

結局、新型コロナワクチンは治験で毒性が認められないから接種されており、接種後に死亡したことが「ワクチンのせいだ」とメカニズムを明確にして立証することは難しいし、されていない。

ワクチンの公衆衛生的価値観

2023年1月2日現在、新型コロナ累計感染者数2932万3798人に対し死亡者57741人、0.197%の死亡率(全人口対0.046%)である。近年の死因5位前後である肺炎(と誤嚥性肺炎)の死亡者数は12万人程度だから、新型コロナ死亡者は丸3年でその半分以下に過ぎない。

先日の筆者の投稿「新型コロナ・ヒステリーをもう止めよう」で示したように、新型コロナウイルスの変異とワクチン接種進展とともに、重症化率と死亡率は低下し続けている。「非業の死」より一桁低い死亡率であれば、その因果関係を問わず「問題にはならない」というのが、公衆衛生学的・大局的観点、判断であろう。

重症化や死亡を免れた人の方がはるかに多いなら、新型コロナワクチンは「関係不明」な死亡がわずかにあろうとも、国民全体にとり有意義である。問題にすべきは77兆円にも上る巨額のコロナ関連予算の是非とコスパであろう。

木も見て森も見よ

本稿脱稿前に新たに5名に関し補償金支払いとの報道があった。4名は高齢者で重篤な基礎疾患がありその悪化で死亡しており、筆者の先の投稿「高齢者の新型コロナワクチン接種後の死亡補償金は適切なのか」に鑑み疑念のあるものだった。

一方、接種直後に会場でショックで倒れ、処置が不適切なため死亡したと思われる事例も報道された。報道の中に亡くなられた方の遺影があったが、恰幅良く見受けられ基礎疾患もあったとのこと、「血管確保できず、緊急用薬品を投与できなかった」等の報道もあった。

ここで臨床医療職として考えるべきことがある。平常時ですら肉付きの良い患者の採血や点滴穿刺は熟練者でも難しい場合がある。血管が見えず・蝕知できないため穿刺できない、基礎疾患により動脈硬化により血管がもろく穿刺できても漏れて維持できないのだ。ショック状態まして心拍停止すると、血管への注射点滴はきわめて困難になる。

一方アナフィラキシーショックに対する迅速な(自動注射器による)アドレナリン筋肉注射の重要性は近年喚起されており、学校等での注射も啓蒙されている。発症初期に太腿に筋肉注射すれば心肺停止の危険をひとまず回避し得るが、この事例では注射されなかったようだ。すなわち患者側と医療側双方の要因が重なり救命可能性を失ったと思われ、実に無念なことだ。

上記の統計的事実が示すように新型コロナワクチン接種後に死亡例はごくわずかあるが、少なくとも国民全体にとっては新型コロナ重症化と死亡を抑制するに寄与したと考えられ、有意義である。

ただ、一人一人の亡くなられた方と遺族にとっては、そうではないという事実もある。北野たけし氏が東北大震災時に「人の命は、2万分の1でもない~1人が死んだ事件が2万件あったってこと」と語ったという。

筆者は新型コロナは他の死亡原因に比して脅威ではない、無用な人為的犠牲を強いるなと臨床在野の保健師として複数投稿してきた。一般市民は扇動的な報道や一部の(自称)専門家の言葉に不安になり、ネット社会がインフォデミックを発生させてもいる。

だからこそ国や自治体のリーダーや政治家は私利私欲利権ではなく、冷静に客観的に数値化された事実から合理的な施策提言できる真の医療者・専門家の声を聞き、ポピュリズム的施策ではなく、森全体を俯瞰し護る施策を講じるべきだ。その一方でごく少数の例外としても、ワクチン接種後の思わぬ死を防ぐ手立てを講じるべきだ。

【参考文献】