自民党長期政権は日本を潰す

この20年余り日本は経済成長していない

1995年から2015年までの日本の名目GDPは成長が止まっているという指摘が「Facta on line」の2019年10月号にて記載されている。この期間の世界平均の成長率は139%と指摘しされ、日本は-20%と記載されている。

1995年と言えば社会党の村山氏が首相だった時で、それ以後2015年まで一時民主党から3人の首相による3年間の短期政権はあったが、その大半は自民党が政権を担って来た。この間、経済成長していない。そして自民党政権による2016年から2021年の間も経済成長はしていない。

各国のGDPの1995年から50年先伸び率の見込みを見ても、日本は1.7倍しか伸びがないのに対し、EU2.5倍、インド25.3倍、中国18倍、インドネシア9倍、米国3.1倍の伸びが予測されている。(国土交通省の「我が国の経済成長について」から引用)。日本と他国を比較してその成長率の差は歴然としている。

自民党HPより

経済成長させていないのに、なぜ自民党の政権が続いているのか

この20余年間、経済成長がないのに自民が政権を担って来ている。それを許して来た国民の姿勢に筆者は全く理解できないでいる。恐らく、この20年間の個人の生活においてあまり支障を感じないから多くの市民は政治に関心が薄いのかもしれない。しかし、他の先進国であれば当然のごとく政権は代わっている。

勿論、現在の野党で政権を任せられる政党は存在しないということも理解できる。そうだとしても、自民に異を唱える運動が起きて新しい政党が誕生しても不思議ではない。それが日本では起きない。国民はそれを当然のごとく受け入れて仕方ないと諦めているのかもしれない。

しかし、明白なことは、このまま政治改革なく自民が政権を持ち続ける限り、日本は奈落の底に落ちるかのようにこれから10年先、20年先も同じことを繰り返して経済成長なき日本を継続させて行く可能性は十分にある。

バブル崩壊の後でも、デフレに陥った市場で自民党の政府がやって来たことは財政支出をやって一時的には景気の回復を図ろうとした。そして、安倍政権になると財政支出が大幅に増えることを警戒して政府は財政の赤字分を国債発行で補填して必要な紙幣を増刷。これを繰り返し、その一方では消費税を5%から8%に引き上げて景気を又悪化させた。これらの策は長期のデフレから脱出できる政策ではない。

1989年の政府の借金は250兆円であったのが、現在1200兆円まで膨れ上がっている。にも拘らず、日本経済は成長していない。それも政府の財政赤字を国債の売却で補填して紙幣を増刷して市場にばらまいただけで、経済を復活させるための策は実行されていないからだ。

このような事態が繰り返されて来たのも同じ政党が20年余り政権を担ったのが原因だ。首相が頻繁に代わってもやっていることは同じ枠の中から出ていない。

また世界経済に占める日本経済の比率を見ると1980年に日本経済は世界経済の9.8%を占めていた。2010年は8.5%、2030年には4.4%と予測されている。アジアに目を向けると1980年は5.8%であったのが、2030年には38.5%まで成長すると予測されている。アジアが急成長しているのに、同じアジア圏にある日本の後退は著しい。(内閣府統計から引用)。

日本の前例アルゼンチン

このような日本にした前例が一つある。アルゼンチンだ。アルゼンチンは20世紀初頭から1920年頃まで米国に次いで最も豊かな国とされていた。穀物と肉の輸出は世界の7%を占めるまでになり、ラテンアメリカのGDPの50%はアルゼンチンが占めていたほどだった。

世界恐慌そして戦後のアルゼンチンは経済を復活させるのに基幹産業を国営化し、また労働者にも恩恵が渡るように公共支出の増大を図った。それを遂行したのがリーダーのペロン将軍であった。一時的には景気は回復した。しかし、最終的にもたらしたものは財政赤字とハイパーインフレであった。それから脱出するために輸出を奨励して外貨を稼ぐのではなく、国内の産業を発展させようとした。

ペロン将軍はカリスマ性が高いこともあって、国民から崇拝された。だから一時の経済の立て直しに成功しただけであるのに、彼の功績を讃えた政党が誕生した。それが正義党(別名ペロン党)である。この正義党がアルゼンチンの政権を現在まで担って来ているのだ。途中、3人の大統領が他政党から誕生し軍事政権もあったが、正義党がアルゼンチンの運命を今日まで担って来た。これまでの正義党の政治はペロン将軍が実行したこととあまり変わりはない。そしてペロン将軍と同様に輸出への取り組みは今も積極性に欠ける。だから、アルゼンチンでは外貨の不足が慢性的になっている。

この一つの政党による政治がもたらしたものは経済の後退とハイパーインフレである。経済の後退は日本も同じ道を歩んでいる。現在のアルゼンチンのGDPは世界で24位だ。この100年間で2位から24位に転落している。

ハイパーインフレの要因はアルゼンチン政府は体質的に歳出の削減ができない国なのだ。毎年の財政赤字を紙幣を増刷して補っている。これはインフレを誘発するそのものであるが、それをアルゼンチンはこれまで実行して来ている。昨年だとGDPの4.8%に相当する額の増刷を実行している。その額は日本円にしておよそ1兆5600億円だ。その増刷が間に合わなく、スペイン造幣局もそれに協力した。

日本も似たようなことをやっている。即ち、国債を担保に紙幣を増刷して、政府の債務を増やしているということだ。

アルゼンチンはその結果、昨年のインフレはまだ正式統計は出されていないが、100%近くのインフレだ。来年も同じような高いインフレが予測されている。

例えば、1973年から2018年までにアルゼンチンの累積インフレは1670%。またアルゼンチンの場合に高いインフレを発生させる要因としてもう一つ上げられるのは市民が自国の通貨を信頼せず、米ドルを持ちたがることである。米ドルに対してペソはいつも価値を失っている。それもインフレを煽る要因となっている。この高いインフレが足かせとなって成長を遂げる経済政策が実行できなくなっている。しかも、高い金利とで外国の企業にとってアルゼンチンへの投資は魅力が少ない。

市民は毎日買い物をしても、その総額がいくらになるか買ってみないと分からないという状態にある。それが生まれた時から亡くなるまで、そのような環境の中で生活しているのである。

日本はインフレは低いが、国民の知らない間に政府の債務は国債に化けて、それを多くの市民が手にしている。何れ、国債が売却できない状態になったらどうするのであろうか。政府は国債の発行にも限界に至りつつあり、政府から率先して企業を活性化させる投資もできなくなりつつある。

また日本は財政破綻すれば国債は紙くず同然になる。その可能性は今の自民党の政権が続く限り存在している。

アルゼンチンはハイパーインフレ、日本は国債による負債の増加というのがそれぞれ足かせとなって経済の進展を阻んでいる。