今回政府が新型コロナの指定感染症分類を5類に変更する方針を固めたことに、筆者は賛同しますが、実は約1年前、本サイトの「新型コロナ感染症分類の運用見直しについて」の投稿募集時、すでに「新型コロナウイルス、指定感染症5類への変更を求む」のタイトルで投稿をしています。
この記事において、保健所のオーバーワークや、新型コロナを診療できる病院が限定されていることで、他の疾患を含めた医療全般に不具合が生じるのではないか、と警鐘を鳴らしたのですが、改善されないまま俗に言う”医療逼迫”が繰り返され現在に至っています。1年が経過した今でも、筆者の主張は当時とほとんど変わっていません。
5類への変更に賛同する大きな理由は、感染者・陽性者の調査や対応を取りやめることで、発症者・重症者の診療に集中できるようになるはずからです。
長引くコロナ禍で忘れてしまいがちですが、これまで医療機関が診療する基準は感染ではなく、病気の発症ではなかったでしょうか。私達の多くは健康診断は別にして、「発熱した」「咳が出る」「おなかが痛い」などの症状が現れたから、医者に診療してもらおうとするはずです。感染そのものを抑えこもうとするのは、エボラ出血熱のように感染したら何割もの人間が命を落とすような致死率が極めて高い感染症だけです。
新型コロナの発生当初は確かに致死率が高めだったのですが、変異を続けるうちにどんどん弱毒化が進みました。一方、第7波・8波で明らかなように感染力は格段に増してきています。もはや風邪のように誰もがいつでもどこでも感染する状況で、感染者・陽性者さらには濃厚接触者までずっと制約(療養等)し続けていたなら、経済や日常生活はいつまでたっても正常には戻りません。陽性者がすべて感染者というわけではありませんし、多いといわれる無症状感染者も体調自体はまったく問題ありませんから、日常生活や仕事・学業に支障はないはずです。
そして無症状感染者が多いということは、本人又はすぐ周りで誰かが発症しない限り、感染したことに気づかないケースが相当数あると考えられます。つまりオミクロン株のような新型コロナの感染を抑え込むことは到底不可能であり、必死に感染者の隔離や療養を行ったところで、せいぜい感染拡大するスピードを若干緩められる程度でしょう。
それどころか感染を抑えきれない状況で、感染(陽性)者をあぶり出すようなPCR等の確認検査をすればするほど、それに比して感染(陽性)者数は増えていくはずです。言い方は悪いですが、自ら感染者数を増やしておきながら慌てて感染対策を強化するという、まさに”マッチポンプ”状態といえます。
致死率がインフルエンザレベルになった今、同じ5類相当の対応で何ら問題はないはずです。風邪やインフルエンザであっても、高齢者を中心に毎年死亡者は出ていますが、感染そのものを抑え込もうとはしません。なぜなら毎年冬季だけで1000万人以上が罹患(発症)するといわれるインフルエンザで、新型コロナと同様感染レベルでの対応をしたら、学校も会社も自宅療養者だらけになり、社会全体が機能不全に陥るからです。
「今後新型コロナが変異して猛毒化したら5類では対応できない」という意見もありますが、そうなったら(ウイルスの特性から可能性は低いが)迅速に感染対策の制度改正や運用変更をすればいいだけの話です。
ただ、5類相当へ変更しても、看板を変えただけの骨抜きの内容ならまったく意味がありません。分類は変えたものの、診療費、ワクチン代、検査代などを無料のままにするなど新型コロナの特別扱いを続ければ、国民の意識はそれほど変わらないばかりか、金銭的負担が少ないことで、治療の必要がなさそうな人まで頻繁に医療機関を利用してしまい、再び”医療逼迫”が起こる恐れもあるからです。
5類への変更はあくまでも感染対策を転換するための最低条件であり、実質的にインフルエンザと同じような対応に転換することが必要だと思います。また国民の側も一人一人が新型コロナばかり恐れるような意識を変え、どんな病気も克服できるような健全な心身を保つことが大事でしょう。
筆者は新型コロナが危険な疾患ではないと言うつもりはありませんが、厚労省が公表した統計によれば、日本では2021年の1年間に144万人もの方が亡くなっているのです。その内訳を見ると、新生物(癌など)で39万人、心疾患で21万人、老衰で15万人、不慮の事故でも3万8千人の方が亡くなるなど、新型コロナよりはるかに多くの方が亡くなっています。
このように身近に様々な死亡リスクがあるわけですから、新型コロナを特別視するのではなく、他の死亡リスク(特に疾患)と同等に扱うのが適切ではないでしょうか。
「感染するのは仕方がない。できるだけ発症や重症化を防ぎ、死者を減らすことに注力する」という考え方に立ち、致死率が似通っているインフルエンザと同じ5類相当への変更を切望します。
編集部より:この記事は投稿募集のテーマで寄せられた記事です。アゴラではさまざまな立場の皆さまからのご意見を募集します。原稿は、アゴラ編集部([email protected])にお送りください。