新型コロナ対策としてこの3年間に要した金額は、様々な施策を合わせると約300兆円と言われている。1990年策定の公共投資基本計画が10年間で430兆円であったことと比較すると、途方もない金額であることがわかる。
しかも、公共投資基本計画の支出は、内需拡大に寄与しつつ、整備後も長く効用が発揮される道路や公園などの公的なストック形成に充てられたが、コロナ対策の支出は費消されたものがほとんどではないだろうか。
昨今耳にすることとして、高級外車の販売が好調であるとか、外商の強い百貨店が過去最高の売り上げだったとか、キャッシュレスの進展で硬貨の流通量は減少するなか、一万円札の流通量が増加している(≒タンス預金が増えている)などの話と合わせて考えると、この300兆円が本当に必要なところに流れていったのかということが気になってしょうがない。
さて武漢チャーター便だが、2020年1月29日午前、第一便が206名の乗客を乗せ羽田空港へ到着した。第5便まで計829人の邦人などの帰国を支援した。
皆様に思い出して頂きたいのは、この費用負担についてである。
政府が約8万円の負担を搭乗者に求める方針であることが明らかになると、テレビ番組のコメンテーターなどが強く批判し、マスコミがとりあげ、折しも国会会期中で野党が追及し、一部与党も同調した。
スピード感を重視する安倍総理は、1月31日の予算委員会で、負担を求めない方針の検討を表明した。
武漢において、移動が禁止され、公共交通機関が利用不能となるなか、日本政府の調整により実現したチャーター便である。また、運航した航空会社への費用も当然発生しており、乗客は片道のため当然に割高となる。8万円という金額はLCCなどと比較しても著しく高いわけではないため、この「無償化」を大いに疑問視した方も多かったのではないだろうか。
チャーター便の利用者829人の「無償化」に対する約7,000万円の支出は、今から思えばたいした額ではなかった。
だがこれが「ボタンの掛け違い」となり、その後、コロナ対策の多くは、政府の方針をテレビ番組のコメンテーターが批判、野党が追及、数多の対策が利用者の負担のない「無償」で実施され、積もり積もって300兆円のかなりな部分になったのではないだろうか。
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中村 哲也
団体職員(建設分野)