超過死亡の分析で欠落している視点

超過死亡に関する多数の論考が発表されています。

今回は、それらの論考において欠落している視点について考えてみます。

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1. 接種後死亡の報告数の推移の分析が欠落している

超過死亡と接種後死亡の関係を論じるのであれば、接種後死亡の報告数の推移の分析は必須です。 真の接種後死亡者数が報告数よりどの程度多いのかは現時点で不明です。ただし、前者は後者に相関して動いていると考えるのが自然です。

接種後死亡者一覧のデータよりVBAを用いて集計し月別推移グラフを作成してみました。

2022年7~9月の接種後死亡の報告数は、2021年5~7月のそれと比べて激減しています。真の接種後死亡者数は報告数と相関して動くはずです。したがって、2022年8月の超過死亡急増に接種後死亡が関与している可能性はありますが、主因とはとても考えられません。

接種後死亡者のなかにコロナワクチンと因果関係のある死亡者が存在するのは明らかだと、私は考えています。ただし、2022年8月の超過死亡急増の主因であるかどうかは別の話です。

一方、2021年5~6月の報告数は2022年8月のそれより遥かに多かったたため、この時点での超過死亡の主因が接種後死亡であった可能性は依然として否定できないと考えています。

2. 接種後死亡の報告数が激減した理由の解明が必要

真の接種後死亡数が激減したのか、報告率が大幅に低下したのか、明らかにする必要があります。

8月の超過死亡急増の主因が接種後死亡と考えた場合、報告数が激減したのにも係わらず、真の接種後死亡数が逆に激増したことになります。この場合、接種後死亡の報告率が極めて大きく低下していないと辻褄が合いません。報告率の大幅な低下が事実であることが判明しない限り、接種後死亡が主因とは言い難いです。

3. 接種後死亡の発生率は均一には推移していないという事実

超過死亡数と接種率を比較する時は、65歳以上の接種率で比較するべきと既に指摘されています。ただし、それでもまだ不十分なのです。

なぜならば、65歳以上の人の接種後死亡の発生率は均一には推移していないからです。この事実は以前の論考で指摘しました。65歳以上の人が接種をうけている時期において発生率は均一に推移しているという前提では、正確な分析とはなりません。

4. 超過死亡に与えた影響の大きさは、アルファ株・デルタ株とオミクロン株とでは、異なる可能性が高い

アルファ株・デルタ株では間質性肺炎による直接死が多く、 オミクロン株では持病の悪化による間接死が多いという特徴がありました。インフルエンザの場合、年間の直接死は2000~3000人、関連死が約10000人です。したがって、インフルエンザの間接死は直接死の2.3~4.0倍となります。

間接死の多いオミクロン株の場合、インフルエンザのように間接死が直接死の2.3~4.0倍存在していたとしても不思議ではありません。つまり、間接死が多い感染症の方が超過死亡に与える影響が大きい可能性があります。そして、間接死の一部が何らかの理由でコロナ死として報告されなかった可能性があるわけです。

5. 超過死亡の原因と考えられるのはコロナ間接死、医療逼迫死、接種後死亡

様々なパターンが考えられます。

  1. 感染から死亡までの日数が長かったため報告されなかった(厚労省の指示を結果的に医師が無視)
  2. 感染後であるが、老衰と判断して報告しなかった(厚労省の指示を結果的に医師が無視)
  3. コロナとしては軽症であったため病院を受診せず、その後持病が悪化して死亡
  4. コロナと無関係に持病が悪化したが、医療逼迫のため入院を断念して、自宅などで死亡

一つのパターンだけでなく、複数のパターンが積み重なって超過死亡が急増したと推測されます。そして、報告率が顕著に低いことが事実であれば、接種後死亡も関与していることになります。どのパターンが最も大きく関与しているかの判断は、現在公開されている情報のみでは難しいと、私は考えます。なお、個人的伝聞ではありますが、aとbについては、そのような話を実際に聞いたことがあります。

間接死の場合、どこまでを報告するかは現場の医師の判断で決まると思われます。報告されていないコロナ死が多数存在している可能性を、第一線でコロナを治療している医師も指摘しています。別の言い方をしますと、間接死の場合、因果関係のある死亡なのか偶発的死亡なのかの判断は、容易でない場合がしばしばあるのが現実なのです。

感染症に関係して発生するが表に出てこない死亡者を把握する仕組みが、超過死亡という指標です。 死亡が偶発的であれば、超過死亡数は変化しないのに対して、因果関係のある死亡であれば超過死亡数は増加します。

6. 特別養護老人ホームにおいての裏付け調査が必要

超過死亡急増の原因究明をするには、公表されている疫学データの分析のみでは限界があります。 以前の論考 で、特別養護老人ホームでの接種後死亡の発生率が最も高いことを指摘しました。原因究明には、特養での死亡者の全数調査が最適です。

特養でのすべての死亡者数の推移および接種から死亡までの日数を、十数施設の特養で調査すれば、 真の接種後死亡者数を推定する重要なデータが得られると考えられます。また、コロナの直接死者数、間接死者数、コロナ以外の死者数を調べれば、超過死亡の要因を推定する重要なデータとなるはずです。

7. 超過死亡数-コロナ死亡数、接種後死亡数、コロナ死亡数のグラフを呈示

最後にこのグラフを呈示して、今回の論考を終わりとします。なお、このグラフの作成方法や月の定義は少し特殊であり、詳細は過去の論考を参照してください。

【補足】
以前の論考「迷走する感染研の超過死亡(第3報)」は、意味が理解できなかった人が多かったようなので、少し書き直しました。まだ、難解かもしれませんが、以前のものよりは分かりやすくなったと思います。興味のある人は、もう一度ご覧ください。 なお、補足の部分にも解説を追加しましたので、あわせてご覧ください。