超過死亡と接種後死亡について再び考察(後編)

鈴村 泰

kvkirillov/iStock

後編では、超過死亡とワクチン接種の関係について考えてみます。

まず、今年の週毎のグラフを御覧ください。

グラフの一部を拡大表示しました。

2本の実線(上:緑、下:灰色)は、 95%予測区間 を示しています。 観測死亡数が、この区間内に含まれる確率が95%であると解釈すると理解しやすいです。 なお、厳密な解釈については専門書を参照してください。 観測死亡数が予測区間の上限を超えた週は3週のみで、他の32週は予測区間内の増加です。 予測区間内の増加は、偶発的に増加したと解釈することも可能です。 ただし、このグラフには偶発的とは考えられない大きな特徴があります。

4月18日を境として、以前と以後では、明らかにグラフの傾向が異なります。4月18日以前では、1月を除きますと、観測死亡数は予測死亡数と、ほぼ同じです。観測死亡数が予測死亡数より少ない週が合計3週あります。一方4月18日以降では、すべての週において、観測死亡数は予測死亡数を上回っています。

新型コロナなどの特殊要因がなければ、観測死亡数が予測死亡数を上回る確率は50%、下回る確率も50%です。その場合、4月18日以降のように、20週連続で、観測死亡数が予測死亡数を上回る確率は、0.5の20乗という極めて低い確率となります。したがって、観測死亡数を押し上げる要因が持続的に働いていなければ、20週連続で上回ることは確率的にあり得ません。これは、4月18日以降には、4月18日以前には存在していない何か特別な要因が存在しており、それが観測死亡数を押し上げていることを示しています。

観測死亡数を押し上げる要因としては、主に次の4つが考えられます。

  1. 新型コロナによる死亡
  2. 医療逼迫に伴う他疾患による死亡
  3. ワクチン接種後死亡
  4. 去年の超過死亡がマイナスであったことに伴う回帰

1と2は、波が起きた時に強くなる要因であり、持続的ではありません。4は持続的ですが、4月18日以前のグラフを見るかぎり、押し上げる力は、あまり強くありません。2月~4月前半では、1と2と4が働いても、観測死亡数は予測死亡数と、ほぼ同じです。高齢者のワクチン接種は、4月より開始されています。したがって、4月18日以降に、観測死亡数を持続的に押し上げている要因は、3のワクチン接種後死亡の可能性が高いということになります。

今年の1月~8月の超過死亡数を調べてみます。累積の超過死亡数は8191~44170人で、過少死亡数は343~8669人です。したがって、超過死亡数は7846~35501人となります。1月~8月のコロナ死亡数は12575人で、接種後死亡者は1177人です。医療逼迫死の正確な推測は困難ですが、多く見積もってもコロナ死亡数と同程度までと推定されます。以上の数値より計算しますと、接種後死亡数の推定値は1177~10351人で、報告値の1~9倍となります。

次に、累積のグラフより、月別の超過死亡数を取得してみます。累積のグラフで表示される月は、通常の月とは少し異なります。最初の日曜日より始まる週を第1週、最後の日曜日より始まる週を最終週としています。具体的には、3月の場合は、3月7日~4月3日が3月となります。コロナ死亡数と接種後死亡数は、累積のグラフの月に合わせて集計し直しました。コロナ死亡数は、厚労省のWebサイトより取得しました。接種後死亡数は、公開されている死亡例一覧より、VBAを用いて自動集計しました。

結果を表にまとめました。超過死亡数よりコロナ死亡数を引いた数値の変動が重要であるため、(d)と(e)の項目を設定しました。

表のデータを、グラフで表示しました。1月、5月、8月は、5週であるため、グラフでは5分の4に補正しています。

2月以降、(d)と(e)は基本的に右肩上がりです。特に、(e)は一度も減少していません。一方、コロナ死亡数は、下がったり上がったりで、右肩上がりではありません。医療逼迫死はコロナ死亡と連動して動く可能性が高いので、(d)と(e)の右肩上がりの要因とは考えられません。

残された要因は、ワクチン接種後死亡ですが、未知の要因の可能性も完全には否定できません。ただし、現時点では未知の要因は不明であり、(d)と(e)の増加は、4月18日以降持続している要因、すなわちワクチン接種後死亡によると考えた方が合理的です。真の接種後死亡数は、(d)の青線と(e)の赤線との間に存在すると考えられます。

最後に、超過死亡が少ない県、接種率が低い県、コロナ死亡者が少ない県などの県別データを検証してみました。観測死亡数が予測死亡数を上回った週の割合を、県ごとに計算して表にまとめました。

コロナ死亡や接種後死亡などの特殊要因がなければ、割合は約50%となるはずです。実際には、東京都を除けば4月18日以降の割合は以前のそれに比べて、大幅に多くなっています。これは、4月18日以降に、観測死亡数を押し上げる要因が存在していることを示しています。

島根県の5月は、コロナ死亡者はゼロです。医療逼迫死もゼロと推測されます。したがって、観測死亡数を押し上げる要因としましては、接種後死亡しかありません。偶然5週連続で、観測死亡数が予測死亡数を上回ることもあり得ますが、その確率は、0.5の5乗で、わずか3.1%です。

まとめ

  • 4月18日以降には、観測死亡数を持続的に押し上げている要因が存在する。
  • その要因は、ワクチン接種後死亡である可能性が高い。
  • 接種後死亡数は、報告数の1~9倍と推定される。

 

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