迷走する感染研の超過死亡(第3報)

鈴村 泰

国立感染症研究所
厚生労働省HPより

超過死亡に関する論考が多数発表され話題となっています。感染研で8月の超過死亡数が公表されましたので、私も超過死亡に関する論考の準備を始めました。

(以前の記事:「迷走する感染研の超過死亡」「迷走する感染研の超過死亡(続編)」)

データ分析をしていたところ、超過死亡のグラフの計算式が更に変更されていることに気づきました。今回の変更は、予想の斜め上を行くような変更であり、少々驚きました。

今回の変更は、累積のグラフにおいて行われています。まず、12月に取得したデータを用いて月別に集計した表をご覧ください。

2022年の過少死亡数の上限値、下限値がすべてゼロです。明らかに不自然です。表にはありませんが、2021年の過少死亡数の下限値もすべてゼロ、上限値は1、3、10、12月のみがプラスであり、こちらも不自然です。

次に、7月の時点で取得した過少死亡数の数値をみてみます。

7月に取得した過少死亡数と、12月に取得した過少死亡数は全く異なっているのです。

次に、7月に取得したデータで作成したグラフAを見てみます。グラフの超過死亡数は、累積の超過死亡数より過少死亡数を引いた数値です。なお、詳細なグラフの作成方法については、過去の論考を参照してください。

グラフA

次に、今回12月に取得したデータで作成したグラフBを見てみます。

グラフB

2つのグラフを比較しますと、2022年2月を除くとほぼ同じです。過少死亡数をすべてゼロとしたのにも係わらず、グラフがほぼ同じになるということは、次のような計算式の変更をしたと推測されます。

[新しい超過死亡数]=[以前の超過死亡数]-[以前の過少死亡数]
[新しい過少死亡数]=ゼロ

この式は、私が過去に何度も主張した次の式と同じものです。

[正味の超過死亡数]=[超過死亡数]-[過少死亡数]

つまり今回の変更は、私の主張が正しかったことを感染研が暗に認めたことを意味していると、私は考えます。感染研は外部の人間に指摘された間違いを認めたくなかったので、公式には認めずグラフ内部の計算式をこっそりと変更したのだと推測されます。

計算式の変更は感染研の特権なのかもしれませんが、「なぜ過少死亡数はずっとゼロなのですか?」という質問がきたら、感染研はいったいどのように返答するつもりなのでしょうか?

【補足】
今回の論考は、私の過去の論考を読んでいない人には分かりにくいかもしれません。意味がよくわからないと感じた人は、私の過去の論考をよんでみてください。

【追記(重要、2023年6月)】
この論考を書いていた時点では、過少死亡数を強制的にゼロにしたと考えていましたが、 これは早とちりでした。 感染研が計算方法を新方式に変更した結果、2022年の過少死亡数がゼロになったと考えるのが妥当です。 旧方式では、各県の超過死亡数の積算として算出していましたが、 新方式では全国の死亡数より直接超過死亡数を算出しています。 新方式では、各県の超過死亡と過少死亡が相殺されるため、結果として過少死亡がゼロになった と考えられます。強制的にゼロにしたわけではありません。

なお、過少死亡数が[0-0]となったのは2022年のみで、2017~2021年は[0-0]となったわけではありません。 したがって、新方式でも次の式が意味を失ったわけではありません。

[正味の超過死亡数]=[超過死亡数]-[過少死亡数]

なお、新方式、旧方式の説明は、 ・アドバイザリーボード (p100) に記載されています。

【過去の論考一覧】
超過死亡と接種後死亡について再び考察(前編)
超過死亡と接種後死亡について再び考察(中編)
超過死亡と接種後死亡について再び考察(後編)
しれっと変更された厚労省アドバイザリーボードの超過死亡データ
迷走する感染研の超過死亡
迷走する感染研の超過死亡(続編)