植田新総裁と見えないアンチ安倍思想

H3ロケット、離陸せず! ニッポンの技術満載の新型ロケットは残念ながら飛びませんでしたが、報道を見る限り、究極的なエラーではないように見えます。信号制御かなにかの問題なら3月再挑戦の目途は立つでしょう。しかし、ロケットは飛んでから安定するまでが本当の勝負。ということはまだスタート地点で仕切り直しというレベルです。昨日のこのブログの話ではありませんが、失敗は必ずある、それをどう克服するかということであって、ぜひ、この世紀のプロジェクトを成功させてもらいたいと思います。

では今週のつぶやきをお送りします。

居心地の良いところを探す株式市場の模索

アメリカの金融当局はある意味、日本より癖が悪いと思います。FOMC委員などが好き勝手に持論を展開し、それを真に受ける市場は右に左に大きく振り回されます。今週の消費者物価指数発表(CPI)を受け「利上げはあと3回」という声が出てきて、投資家の手が止まったというのが市場の流れです。ではCPIはそんなに強気(物価が沈静化していない)のかといえば私には大げさに見えます。指標というのはそんな直線的動きはしない訳で上がり下がりしながらある方向に動くのは極当たり前。とすればそれに一喜一憂すること自体がおかしいです。

では、年初に懸念されていた景気後退の可能性はどうなのか、ですが、あったとしてもすぐに回復するのでは、と1-2か月前に申し上げたと思います。このスタンスは変わっていません。10-12月の決算はほぼ出そろいましたが、正直、美しい結果ではなかったと思います。それでも株価が下げなかったのは業容に期待というよりマネーがそこにあるのでチャンスを虎視眈々と狙っている層がいろいろ理由をこじつけているだけだとみています。今は霧の中で模索中です。1-3月の決算が出る4月下旬には霧は晴れると思います。よって、今から2か月が辛抱どころかもしれません。

もう一つ、注意すべき点は世の中の標準(デファクトスタンダード)がどんどん変わることで企業の存在価値も変わっていく点でしょうか?たとえばChatGPTの導入を本格化させるマイクロソフトの株価は反応が薄いのですが、今のChatGPTの回答の不正確さがどんどん修正されたのちに何が起きるか、それが産業界にどう影響するのかを見極める重要な局面になったと思います。今まで人海戦術、あるいは専門家に高い報酬を払っていたものが大きく改善され、産業に新規参入組が入るようなことが今後1-2年のうちに起きるだろうと思います。

植田新総裁と見えないアンチ安倍思想

日本人論の一つに「サル山大将論」があります。日本にはサルが沢山いて「この指とまれ型」のボス猿を中心とした集団を形成します。それは学校、会社、政治、PTA、管理組合、不良少年どこでも規模の大小問わず、全部同じです。没個性の日本と言われながら実は個性を出すために相手を否定し、自分の軍団を作るのです。なぜ、異論を巻き込みながら一つの集団形成をしないのか、といえば排除の理論が強いからです。会社の人事を見ても基本的にそう。嫌な奴はグループから外すのです。

もう一つの日本人論に「前任者を否定せよ」があります。日本独特の人事。数年でボスが変わるとそれまでのやり方をまず見直します。これは美しい言い方なのですが、実際には前任者を否定し、踏み台にし、改良化し、「俺の方が優れている」という実績を作ることが求められます。それは自意識が強く、プライドの塊だからです。では日銀総裁に就任する植田新総裁は何をするのか、といえば政府の見えない意向を汲んで黒田路線からの修正を図るのだろうとみています。言い換えれば違うポリシーが起こりえるかもしれないと言えます。

これは二つの影響力の相乗効果だとみています。一つは岸田首相の魂胆。安倍氏の暗殺からまだ7か月ちょっとしかたっていません。表立ってこの「前任者を否定せよ」は出来ないのです。ただ、1年過ぎればそれはもう少し可能になってきます。岸田氏は政治家であり、大ボス猿であり、保身もあるのです。もう一つは植田氏です。学者は自分のポリシーは絶対に曲げません。これは自己否定そのものだからです。そして植田氏はYCCに懐疑的であると理解しています。岸田氏も植田氏も金融正常化が大目標であり、過去を否定し、功績づくりにまい進するはずです。金融政策論とは別次元の話です。

Manakin/iStock

目論見が外れた習近平氏

昨年の党大会で異例の3期目就任を決めた習近平氏。その際、囁かれたのが「取り巻きの弱体化」です。かつては政治局員に違う派閥もいたことで常に緊張感をもって自身の力強さを内外に誇示してきました。が、3期目に入り、まるでご隠居のおじいさんが取り巻きに「よろしく頼んだぞ」的な安ど感の中での政権運営となり、大丈夫かという懸念が一気に高まってきたというがわたしの印象です。さしずめ徳川家康が織田、豊臣を抑え、統一した時で、家康もその時には華の時期は過ぎていたわけです。

数日前、武漢で医療制度改革に怒る高齢者を中心とした大規模デモが起き、政府はデモ活動を容認しています。高齢者のデモだから危険度は少ないと思っているのでしょうか?気球の件でもアメリカにそこまで強気の発言をしているとは思えず、結局、ブリンケン国務長官は王毅政治局委員との会談を、そしてそれを踏まえてバイデン氏が習氏と電話会談をする方向になっています。かつての習氏ならもっと強気だったはずです。

経済でも懸案の不動産業界へのテコ入れやかつて反政府的行動をとった中国企業への制裁解除など、明らかに緩和姿勢が見て取れます。私が見る現状は支配できなくなってきた国内情勢だとみています。結局、気球も中国人民軍が上げたもので習氏はその指揮権があるはずなのに守勢に回らざるを得なくなっています。落としどころはどこか、といえば「栄華は輝きを増せど、より短く、よりはかなく」ではないでしょうか?パッと咲いてパッと散る、だから習氏は3期目をやるべきではなかったとご本人もいつかそう回顧する時が来るような気がします。

後記
「日本人の国際化」は私にとって40年以上のテーマ。島国でほぼ単一民族の社会と大陸文化、異文化交流への感度の低さを見てきました。最近は徳川の鎖国の是非論についても学んでいます。その上で今年の夏、インターンシップの学生を一人、日本から受け入れるべく、日本のある大学と鋭意交渉が進んでいます。2週間のプログラムに於いて私が徹底的に教え込みたいのは国際人養成です。これは私の次の大きな目標に向けた第一歩になると思います。新たな挑戦です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月18日の記事より転載させていただきました。