電気代高騰の元凶・疫病神としての菅直人元首相

清水 隆司

国民に重くのしかかる杜撰な再エネ政策

私事だが、わが家はオール電化住宅だ。加えて、電気を消費する医療機器が必要な障害者の家族を抱えてもいる。昨今の上がりつづける電気代には耐えられない思いだ。先月の料金はついに6万円を超えてしまった。

むろん直接の原因がロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー資源高と極端な円安にあるのは、頭では理解している。しかし、それでもふつふつと湧きあがる苛立ちを払拭できずにいるのだ。電気代の高騰が遡る2011年にはすでに始まっていたからだ。

電力会社からの通知を憤りとともに眺める時、決まってひとりの人物の顔が脳裏に浮かぶ。この人だ。

笑ってるんじゃない! 自分のしたことが国民生活にどれほどのダメージを与えているのか、少しは考えてみるべきだ。

菅政権末期の再生可能エネルギー(以下、再エネ)促進法成立はまさに鼬の最後っ屁同然の暴挙だった。支持率低迷の中、福島第一原発事故という国の悲劇を悪用し国政の根幹ともいえるエネルギー政策を充分議論することもなく大きく転換してしまった菅氏の罪は甚だしく重い。

しかも、立法するうえでモデルにしたのが当時すでに弊害を露わにしていたドイツの再エネ固定価格買取制度(以下、FIT)だというのだから、呆れてものもいえない。いずれ立ちゆかなくなるのは少し調べればわかったはずだ。調べていなかったのなら、職務怠慢だし、調べてなお立法したのなら、犯罪に等しい。

YouTubeにこんな動画(約10分) 菅直人、孫正義によってしくまれた国民負担をアップロードした人がいる。およそ8年前に放送された民放の特集番組のようだ。おそらく違法なアップロードだが、見ても咎にはならない、と思う。内容が現在の電力事情を正確に予見しているので、著作権を有するテレビ局も鼻高高だろう。

再エネ促進法成立を目指す決起集会にはいつもの活動家たちや胡散臭い政商が雁首を揃えている。菅氏のはしゃぎっぷりが不快この上ない。

再エネFITに対する最大の疑念は、菅政権が買取価格をどんな根拠に基づいて算定したか、という点だ。調達価格等算定委員会なる場を設けていたらしいが、政治を動かしてひと儲けを目論む孫正義氏のようなステークホルダーに出席を許し議論を主導させた時点で菅氏には当たり前の倫理観が欠落している、と断じざるを得ない。

案の定ドイツを参考にしたはずが、初期の買取価格は倍。こうして、国家権力の手によるローリスク・ハイリターンの歪なビジネスモデルが生みだされ、その後反社会的勢力を含む魑魅魍魎を呼びよせる結果となり、さまざまな問題を引きおこしていく。

うちひとつを池田信夫氏がこんな記事にしている。

再エネFITは民主党政権の生んだ詐欺と腐敗の温床
三浦瑠麗氏の疑惑から政治介入の追及が始まる 国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫(三浦清志氏)が経営する再エネファンド「トライベイキャピタル」が、詐欺の容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けた。マスコミはこの事件をほとんど報じなかったが、ネット上で...

だが、この程度の事件は杜撰な政策に起因する不正の巨大な氷山の一角にすぎないだろう。FIT導入後、初年度がおよそ1200億円だった買取価格は、雪だるま式に増えつづけ、2022年度にはついに4兆円を超えた。つまり、この負担額に相当する信じがたい再エネ利権が生じてしまっている訳で、闇の深さは底が知れないからだ。偏った思想の人たち以外には疑惑ですらなかった「モリカケ騒ぎ」とは国民の被る損害が金額の面で比較にならない。

電気代の高騰に関しては電力会社を批判する利用者が、一部いるようだ。見当違いに思う。電力会社は、自己資本で張りめぐらせた送電網に再エネ勢力が「タダ乗り」してくることをあらかじめ想定していない。

想定外の電気を高額買い取りするよう時の政府に強要されたのだから、電力会社が自己防衛のために顧客である国民に「再エネ発電賦課金」の名目で負担を転嫁するのは民間企業としてごく自然な経営判断だ。電力会社に罪はない。そもそも企業経営を圧迫するような政府による強権の発動は道義的に許されるものなのか。政府のトップだった菅氏の見解が知りたい。

電力会社は国営企業ではないし、この国は社会主義国家ではないのだ。菅氏の悪政の結果、電力会社が買い取りを強要される再エネ電気は今後も増えつづけるはずだ。現状の送電網では対応しきれなくなるのは明白で、発電された地域では不要な余剰電気を遠隔地から大消費地である都市圏に送るために電力会社の設備投資は際限なく続くことになる。

それは即ち菅政権の失政を速やかに正さない限り国民の負担増もまた際限なく続くことを意味している。電力会社が利用者に再エネ電気の買取負担を転嫁する項目は名称を変更したらどうだろう?

電気をまったく使わない国民はほとんど存在しない。使えばかならず徴収されるという点で「再エネ発電賦課金」は消費税に近い。それなら、最適な名称は執行者の名が後世に残るように「菅直人税もどき徴収金」にしたら良いだろう。自分が断行した自慢の政策だ。案外胸を張るかもしれない。恥を知る侍なら、胸を張らずに腹を切るだろうが、菅氏のような人物に素よりそんな清節は望むべくもない。

法的根拠なく稼働を止められた原子力発電

電気代高騰に繋がる菅氏の権力の乱用はまだある。不法な手段で中部電力浜岡原子力発電所を停止させ、原発の停止ドミノを引きおこしたことだ。元衆議院議員馳浩氏(現石川県知事)が質問主意書内で「停止要請は政府のどのような権限と法的根拠で行われたのか」と問うたのに衆議院議長宛の答弁書内で「直接的な法律上の根拠に基づくものではない」と返しているので、菅氏が不法な権力行使を認識していたのは明らかだ。

菅氏及び民主党政権の原発にまつわる不法な権力行使はなおも続く。菅氏と菅氏を引き継いだ野田佳彦政権は法的根拠も示さず電力会社に対し原発を停止させた状態でのストレステストを課したうえ、2012年に改正された原子炉等規制法に適合する安全対策が完了しないうちはテストに合格しても再稼働させない方針を打ちだしたのだ。

またも法的根拠を示さず(例外はあるにせよ)不遡及の原則に反しながら電力会社への補償は完全に無視するやり方で。結果、何が起こったか——。

  • 火力発電用化石燃料の買いましによる富の海外流出
  • 一般家庭で10%強、企業で15%強の負担増
  • 産業競争力の低下
  • 原発オペレータ—のスキル低下
  • 原子力分野を志望する学生の著しい減少
  • 円安を追い風にできない輸出競争力の低下
  • 製造業の高度なロボット化・海外からの国内回帰を妨害
  • 安全保障上脅威となる国への再エネ製品・レアメタル依存
  • 電気代を引きさげるための財政出動増

これらは、非業の死を遂げられた安倍晋三元首相が「悪夢」と評した今はなき民主党政権の罪過でなくてなんだろう。不思議なのは、日頃反権力を標榜しメディアの役目は権力の監視と嘯いている左派系メディアが一切批判しようとしないことだ。自分たちの側に立つ権力ならば暴走してもお咎めなしのようだ。ご都合主義の反権力。腐りはてているとしか思えない。

日本を法の支配の及ばない権力者が恣意的に統治する後進国へと貶めた菅氏と民主党政権。

ところが、当の菅氏は自分のしたことに自信満々なのだ。

民主党政権の実績(3)原発ゼロへの道筋

どうやら実績と実害の区別もつかないらしい。コスト意識が皆無なら、脳内に再エネ天国のお花畑が広がっていても無理からぬことだろう。一度菅氏の頭の中を覗いて構造を確かめてみたい。きっとカラカラ音がするほど空きスペース充分のように思う。

「空き缶」がらくた内閣でニッポンすっからかん……。

寒冷地の室内で暖房をつけずに凍死する事故が報告され始めている。電気代を節約するためのいたいけな努力だった、と推察される。民主党の悪夢ふたたび。コロナ禍がようやく終わりかけている日本に消滅した民主党由来の災疫が広がっている。

これは明確に人災だ。その発端となった菅氏はこの国にとって疫病神以外の何者でもない。にも拘らず、いまだに菅氏は国会議員を続けているのだ。政界双六のあがりに当たる首相の地位まで登りつめながら今さら何をしたいのか理解しがたいが、当人が身を引く気配は微塵もない。

選挙区当選の菅氏が国会議員でいられるのは、菅氏に投票した選挙民がいたからだ。菅氏の選挙区は東京18区。ならば、東京18区の選挙民に聞いてみたい。先の衆議院選挙では菅氏に何を期待したのか、を。いや。それ以前にもっと聞きたいことがある。ぜひとも答えてほしい。菅氏が以下のような人物と知っていてなおあえて菅氏に投票したのかどうかについてだ。

  • 自社さ連立政権の厚生大臣時代O157騒動でカイワレ大根生産者に罪を着せ、同業界内に自殺者まで出した。
  • 沖縄独立を勧める発言があったことを喜納昌吉元参院議員に著書で暴露された。
  • 韓国で逮捕された北朝鮮による日本人拉致実行犯辛光洙(シン・グァンス)の釈放嘆願書に署名した。
  • 菅氏の資金管理団体「草志会」が日本人拉致実行犯親族所属の政治派生団体に6250万円を献金していた。
  • 外国人から政治資金規正法違反の献金を受けつつ外国人に地方参政権を付与する旗を振った。
  • テロ国家北朝鮮を礼賛する朝鮮学校の授業料無償化を首相として指示した。

さらに昨年の話ではあるが、細川、村山、小泉、鳩山ら元首相と連名で欧州委員会委員長に放射能デマに基づく反原発書簡を送り、立ちあがろうとする福島の人びとに冷水を浴びせてもいる。素晴らしい! こんな人物が国会議員になるのも民主主義の結果だ。民意はつねに正しいとは限らない。

菅氏の政治理念は「最小不幸社会」の実現だそうだ。もし本当にそうしたいのなら、国家と国民の害毒になる人物を国会議員にしないことが最低条件になるはずだ。つまり菅氏のような人物が国会に居座りつづける間は不幸の最小化など夢のまた夢、と決めつけてもあながち間違いではなさそうな気がするのだ。

清水 隆司
フリーライター。政治・経済などを取材。