週刊文春にすっぱ抜かれた上野千鶴子氏の入籍の件。上野氏と個人的に会ったこともあり、上野氏の出世作になった「セクシィギャルの大研究」以来の読者としては「ん?」でした。文春の記事を丹念に読むと90年代からのお付き合いのお相手の大教授は奥様がいたのですが、奥様が先にお亡くなりになり、そこで入籍しするもそのお相手も今やお亡くなりになっています。上野さんは恋をしていたですよ、四半世紀も。研究者としての冷血な顔と人間としてのほっくりする顔は違ったのでしょうね?元祖ウーマンリブも人のココロを持っていたということです。
では今週のつぶやきをお送りします。
読みにくい相場はまだ続く…
先週のこの項のタイトルが「居心地の良いところを探す株式市場の模索」でした。1週間たってみると増々混沌としているようにも見えます。市場は既にあと3度の利上げを完全に織り込んだ、と4-5日前から言われていますが、今日のPCE(個人消費支出価格指数)が高めに出たことで市場は揺さぶられています。というより、先週も触れましたが市場はリセッションの確認に向かっているように見えます。思った以上に1-3月は悪いぞ、となれば4月後半から5月の決算が出るまでは模索が続く、とも取れます。
飲食業を手広く行っているある経営者から「業界の業容は悪い!」と話を振り向けられました。売り上げも年明け後は頭が抑えられている中でコスト上昇を吸収できず、利益の圧迫が起きているというものです。アメリカは特に飲食店の価格が高すぎで持続性があるのか疑問です。カナダCBC放送ではチップを一切受け取らない飲食店が大きく報じられていました。「私たちはスタッフに十分な給与を払っています」と。あるいは私のテナントであるカフェが地元の人からとても愛されている理由はオーナーファミリーが直接経営しているからコストパフォーマンスに優れていることがあるからでしょう。
体感的に昨年あたりまでは多少の価格変動は吸収できる人が多かったけれど、ここにきてその余裕がなくなってきた、という感じでしょうか?とすれば投資マインドは当然低いわけです。トロントの証券マン氏が「金利はいつまで上がり続けるのだ。俺は住宅ローンが返せなくなる!」と嘆いていましたが、景気の良い話がここ半年、ほとんど聞こえてこなくなったのもこれまた事実です。新規投資は凍結され、人々の目線はより近視眼的になります。少し、厳し目のシナリオを立てた方がよいかもしれません。
ウクライナ侵攻1年
メディアはこの報道にかなり力を割いています。ただ、どれも似たようなもので今後のシナリオは分からない、というものです。もちろん、私にもわかりません。私が年初の予想で年内に停戦/休戦を予想したのは現代社会においてそんなに長く戦争を続けられないだろうという読みもあります。戦争の勝利者とは何か、と言えば表層上の勝ち負けだけの話。日本は日露戦争に勝ったのか、と言えば戦争という勝負には勝ったけど講和条約では負けました。(と、少なくとも当時の国民は思っています。)
今回ウクライナが戦争に勝っても残されるのはがれきの山、減少する人口、困難を極める経済復興です。ロシアが勝った場合でもより厳しい経済制裁、厭世観、国内政治の混乱が必須です。つまり、この戦争は両者とも敗者であるともいえるのです。敢えて言うなら戦後のことを含めると、どちらがどれだけ負けるか、だろうと思います。西側諸国もかつての膨張する共産主義に戦うといったイデオロギー戦争ではない中でウクライナへの後方支援に国民の世論がどこまでついて行っているのかよくわかりません。極めて政治的配慮が強い気がします。
G7の議長国である日本は広島サミットでウクライナへの全面支援を打ち出します。また、議長として岸田氏が様々な実績づくりに奔走しています。でも本当に必要なのは停戦に向けた努力のはずです。欧米のチカラに押されて議長として取りまとめをすることに視線を奪われ、本当にすべきことが見えていない気がします。ゼレンスキー氏と会談するのと同じだけプーチン氏との接点を探るという努力もまた必要だと思うのですが、首相のマインドは「敵」「味方」の色付けなのです。日本は仲裁に立つという立ち位置ができるはずなのですがねぇ。
オフィスは無用の長物?
アメリカのオフィスは2030年までに1億㎡が余剰になるとアメリカ大手商業不動産のクッシュマンが発表しました。うち、1/3は在宅勤務による働き方の変化による余剰、2/3は従来型の余剰とされ、この1億㎡はワシントンDCの3倍のオフィス供給分と同一になると読み取れます。かつて「仕事は素敵なオフィスで」は一つのステータスシンボルでもありました。今や死語のオフィスレデイ(OL)という言葉もその意味を内包しているのでしょう。
実際、オフィスに出勤することで様々な経済活動が展開されます。出勤用のスーツや洋服を買う、化粧をする、ランチは弁当ではなく、素敵な店で仲間と取り、アフターアワーもお金を使う機会が増えます。これらが消費経済を支えてきたことは間違いなく、今後、シュリンクするということは単なるオフィス建築やデベロッパーの仕事が減るだけではなく、既に建ってしまったオフィスの転用問題が生じます。まさか、殻のコンクリートボックスにするわけにもいきません。
私は当地に来た31年前、ある商業不動産の方と懇談していた際に「将来はオフィスなんて必要なくなる」と申し上げたらその方は血相を変えて怒っていましたが、結局、私の考えは当たったわけです。なぜ、31年前にそう思ったかと言えばコンピューターが仕事の効率をどんどん上げ、それまで10人必要だった仕事が2-3人で出来るようになれば事務所のスペースはいらないというのが考えでした。企業は成長するだろう、と反論されれば個別企業で見れば別だけど、総需要が増えない限り、パイの奪い合いだと考えたのです。事実、先進国の総需要はそう簡単に増えません。数字を見れば一目瞭然。とすれば働き方改革による事務所需要の低迷は更に需要を押し下げる効果があるともいえます。
後記
バンクーバーは氷点下5度。明日から大雪の予報。管理組合などとのオンラインミーティングで「雪かきは誰がする?」と。不動産所有者が自分の土地の前の雪をかかずに人が転べば訴えられるリスクがある為、複雑な所有権があるこの建物では雪かきもどの場所を誰がやる、ではその費用は誰が持つのか、様々な意見が飛び交います。私も途中まで一生懸命しゃべっていたのですが、1時間半も感情交じりの話を聞かされてうんざり。思わず「そんなら雪かきぐらい、自分でやるわい」と言いたいのをぐっとこらえました。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月25日の記事より転載させていただきました。