米海軍でも深刻な共食い整備

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ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーの米海軍艦艇の共食い整備の話です。ソースは米会計監査院です。

US Navy cannibalises more ships to make up for part shortfalls

US Navy cannibalises more ships to make up for part shortfalls
The US Navy (USN) is cannibalising ships more often than in previous years to make up for part shortfalls and meet operational commitments, according to a recen...

有料版はもう少し長い記事です。

2017年度を除いて、1隻あたりの平均共食い回数は2015年から2021年まで毎年増加しているとGAOは報告しています。その中にはニミッツ級空母も含まれます。

その理由はコロナ禍始まって以来、サプライチェーンの減速、必要な部品を入手するための調達や製造リードタイムが増加したことや、部品の生産が終わってしまったことなどが挙げられています。

兵器や軍用の装備は民生品に比べて、遥かに長い期間使用されることが多い、しかも近年は民生品を流用したコンポーネントが多いのでなおさらこういうことが起こり得ます。

ですから一定期間で、近代化を兼ねたグレードアップをしたりするわけです。それは能力向上だけではなく、枯渇部品対策でもあるわけです。一気にコンポーネントをかえずに、細々やっていると、その時々にソフトウェア含めた動作確認などが必要になるからです。

逆に言えば自衛隊のように30年も同じ装甲車を近代化もしないで、使い続けてれば相当コストの高い旧式の部品を使い続けることになります。

特に米国の企業はドライなので、利益率が低いとか、当面発注がなくなるとかであればすぐに生産をやめてしまいます。それか売値を何倍にも釣り上げる。実際にいきなり3倍にパーツの値段が上がったことがあると聞いたことがあります。ある意味資本主義の正しいあり方だとは言えます。特に上場企業の場合は四半期ごとに厳しく利益を上げることが株主から要求されるのでなおさらです。

防衛省の「有識者会議」の有識者は得てしてこういう現場レベルの話を知りません。

当然ですがFMSの場合も同じことが起きます。しかも米軍が優先されるので、自衛隊向けの供給は更に後回しになることになります。

対策としては当初に消耗部品を多めに発注することです。それが結果として一番安い選択になるでしょう。それからAH-64Dなどのように、生産末期になって駆け込みで採用するみたいな間抜けな調達はやめるべきです。

それからイージスシステムなど代用の効かないもの以外の装備は極力、FMS以外、米国以外で調達すべきです。例えば同じ機銃があるならばFMSではなく、ベルギーのFN社から調達すべきです。AAV7やオスプレイ用の機銃はFMSで調達されているはずです。

わざわざ高いコミッションを国防総省に払って、レスポンスの悪いFMSを使用するべきではありません。

長期に使うコンポーネントはオフセットとして日本のメーカーに受注させる手もあるでしょう。その方が米国企業よりも長期に安定して、安価に供給が可能でしょう。そういうことを米国防総省や米軍に働きかけるべきだと思います。が、装備庁にそういう知恵が回る人材はいないかと思います。

また国産装備にしても米国製のコンポーネントを避けるようにすべきかとも思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
自衛隊ではサングラスを着用するのに着用許可がいり、眼科医の診断書が必要。まるで俺らは中学生か、と隊員から不評、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。