先日のブログ「改善に向かう日韓関係」で多くのコメントを頂戴しました。韓国に対する厳しい意見が主流でした。私のブログを長年お読みの方はご存じだと思いますが、昔はかなり手厳しく同国の姿勢を批判してきました。慰安婦像問題でも先陣を切って戦ってきました。では、お前は考えを変えたのか、と聞かれればそうではない、ただ、変化の風は利用すべきかな、と考えたのです。
韓国ネタを振ると必ず多くの異論が出るのは分かっているのですが、それでも止めない理由は言うべきは言う、考えは俎上に載せる、そして新しい切り口が出れば何度でも議論をすることを繰り返さないといけないのだろうと考えたのです。一度言うだけではオオカミの遠吠えでしかないのです。
私の場合、単なるブログ上での批評家という訳にはいかない事情があります。それは当地バンクーバーで第三国出身のコミュニティ同士としての付き合いと立場の明確化を示さねばならないのです。付き合うか、疎遠にするかは周辺環境が大きく影響します。そして喧嘩をおっぱじめるのは簡単だけど、それは大変な労力を要するにもかかわらず、外野に陣取る論客ばかりで内野席で支援する人もいなければ選手、つまり一緒に戦う協力者すらいないのが実情なのです。とすれば、今の風は利用するしかない、というのが私の実務上の立場であります。
ところで、日本人社会で疲弊しているな、と思うことの一つに会社など組織のチカラにがんじがらめになり、モノが言えない方が多いのではないか、という気がするのです。私もサラリーマンを20年間勤めましたが、放言などは出来ませんでした。特に本社という組織の塊にいた時には自分の立ち位置を思い知らされたこともあります。社内飲み会で他部署の方々と一緒になると突然、くだを巻く人がいるのです。「あれ、この課長、こんな人だったかなぁ」というぐらい人が変わるのです。言いたくても言えず、普段のストレスが口から出かかっているから飲んだ瞬間、愚痴がどどっと出てしまうのでしょう。
日本の組織論はいい面もありますが、当然、全員が100%賛同しているわけではなく、ある意味、「強いている」わけです。北米はそれが出来ないので2週間で辞めたり、クビになる人はそれなりにいます。「思っていた会社(人材)と違う」と。仕事にしがみつかないところはある意味、立派です。
私は独立してから自分にとって何が重要かと考えた際、「屏風の色」を金色にすることだと結論付けました。サラリーマン時代に関連会社の社長をやっていた時、自分はピエロであり、失敗しても幾重にも守られていると感じました。同僚、本社、銀行、株主…です。ところが独立した直後は自分の周りはスカスカで何もない訳です。吹けば飛ぶような屏風というのはこのこと。それを頑強にしていつかは金色に染めたいな、と思い続けたのです。その道のりはいわゆる経営的健全性もありますが、相手に受け入れられる自己主張を展開し、理論武装しないと達しえないと結論付けたのです。
私がこのブログを皆さんとシェアするようになったのは2007年、つまり、独立して3年ぐらいたってからです。何故か、と言えば社長は孤独だからです。故に自分の考えは果たして正しいのか、皆さんの考えはどうなのだろう、と分かち合うことでより外国に住む変な日本人を揉んでもらい、強くして頂きたかった、というのが真意です。
一方で99人の反対と1人の賛成意見があった場合、民主的には反対派が正しいと判断しますが、科学技術的にはそれは正しくなく、1%の人しか見出せなかったことに光が当たることもあります。今でもよく覚えているのですが、東日本大震災からしばらく経って原発再稼働の議論が日本で沸き上がった際、私は再稼働派として意見を述べたのですが、「大大炎上」でした。ですが、私は今でも再稼働派です。そして十分な改善を施したうえで理論的にリスクがヘッジできていることを確認したうえで地元の方々にご理解を頂くしかないと思うのです。
静岡知事のリニア新幹線反対問題ではJRはどうやってこの難局を乗り越えるのだろう、と思っていたら大井川上流の東電管轄のダムの水を大井川に戻すことで水量確保という裏技を東電の了解を得て、打診したと報じられていました。これなどもJRが正面突破だけではなく、知事が妥結できる案を引っ張り出した点で苦心の提案だと思っています。つまり、できないことはない、知恵は絞りだせばまだ、可能性はあることを示しました。
切り口を変えるアプローチは大事です。私も変化球を投げることは多いのですが、その真意と目的は必ずどこかにあるのです。そして、言い放しではなく、それを実務としてどう取り込み、落とし込んでいくのか、そこまで考え、他の方々の意見も十分参考にさせて頂き、新たなる切り口で発信しながら、実行していく、これが物言うブロガーの真意であります。
私が皆様の異論はウェルカムというのはそういう意味もあります。自分の意見に酔うことなく、真摯に耳を傾ける、これが書き手も読み手も強くなるウィンウィンの関係であると思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月5日の記事より転載させていただきました。