休憩は一日10分!過酷なアマゾン配達ドライバー

黒坂岳央です。

配達荷物は1日200個、休憩時間は一日10分という過酷すぎるアマゾン宅配ドライバーの実情がYouTubeで取り上げられている。

自分自身、軽い気持ちでちょくちょくアマゾンから買い物をしている立場なので番組を見ていて他人事とは思えなかった。自分の指先操作がこの状況を作り出す一端を担っていることが明らかになったためだ。

昨今、日本はどの業界でも人手不足なのに、労働集約的産業の筆頭である配送業に多くの人員が割り当てられ疲弊する。どこかおかしな歪みが起きていないだろうか?頭数は減る中で配送サービスはより高速化し、選択肢が多様化する中でいつまで持つのか?

本稿はアマゾン社を批判するものでなく、より大局的に配送業における状況を論考する意図で書かれた。

AdrianHancu/iStock

労働環境が是正されない理由

動画内では個人事業主契約を結んだ女性ドライバーが、13時間労働で休憩はわずか10分、配送する荷物は203個だが最後まで配り終えることができなかったという。配送プランはAIによって管理されており、個人の裁量の範囲は極めて限定的だ。

だが悪いのはアマゾンではない。番組の中で同社は「委託先配送業者に正当な賃金と安全な環境で労働ができるよう、契約で求めている」としている。自社で雇っている従業員を不当に働かせているなら問題になるが、配送委託をしており働くのは個人事業契約者であるため、労働者ではなく労働基準法は適用されない。アマゾンは何ら法を犯すようなことはしていないのだ。

これほど配送ドライバーが頑張る理由はどこにあるのだろうか?真面目で何事も一生懸命な日本人の気質もあるが、個人事業主契約の立場が弱い点が本質だろう。個人事業主は仕事を断ったり、極端にパフォーマンスが悪ければアッサリ契約を切られてしまう。もう仕事が来なくなってしまう恐怖から、どれだけ過酷でも仕事をやるしかないのだ。

広がってほしい「スロー配送」

筆者の家にはほぼ毎日配送ドライバーがやってくる。通販の買い物やふるさと納税返礼品に加え、ビジネスでの買い物などだ。

自分が住んでいるのは田舎で、ドライバーの担当者はいつも同じだ。そのため、「うちは一番最後でいいですよ」と伝えるようにしている。遅い時は21時を過ぎて届くこともあるがそれでも気にしない。よほど急いでいるもの以外、お届け希望日は入れないようにしている。

その理由は一分一秒を争うものを通販で買うことはしないからだ。これは自分が比較的ゆったりとした急がない生活をしているというのもあるが、性格的に何でも事前にプランニングをしておき、通販の買い物などもとにかく前倒しして必要なものを早めに調達するようにしているからだ。その結果、「今日、どうしても受け取らないと困る!」という状況を作らないようにしているのだ。

このような状況のため、時々注文して翌日届いてしまう場合があると、「こんなに急がなくてもいいのに、なんだか申し訳ないな」と感じることもある。

もしかしたらうちのような状況の人は他にもいるかもしれない。できれば注文時に「スロー配送」を選べるようにして「急がないのでゆっくりどうぞ」みたいな選択肢があればいいのでは?と思う。この選択をする代わりに、配送業者はユーザーにポイント還元!みたいにすれば積極的に選ぶ人も増やせるかもしれない。この機能が実装されたら自分は8-9割の注文でスロー配送を選ぶだろう。

実はこの原稿を書いている前日、たまたま立ち寄ったコンビニで自分の前に並んだヤマトのドライバーが、缶コーヒーとおにぎりだけを買っていた。14時半、時間帯的にこれから遅い昼ご飯なのだろう。「野菜もタンパク質もちゃんと食べないと体に悪いよ」と心配になってしまう。

我が国の便利な配送サービスは大変な労働環境の中で頑張る人に支えられていることを再認識した動画だったように思う。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。