昨年後半から激増が続くわが国の超過死亡について

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先日発表があったわが国における2022年12月の死亡者数に激増が見られる。12月の死亡者数は15万8,387人で、前年の12月の13万4,026人と比較して、2万4,361人、率にして18.2%の増加である。なお2022年の年間死亡数は、158万2,033人で、前年の145万2,289人と比較して12万9,744人、8.9%の増加であった。

超過死亡とは、通常の条件下で予想される死亡者数を基準に、予想を超えて観察された全ての死亡者数を示す数値である。東日本大震災があった2011年における超過死亡は5万5,000人であった。

国立感染症研究所では、超過死亡の算出にFarringtonアルゴリズムを用いているが、欧州連合統計局(Eurostat)では、コロナが流行した2020年から2022年の超過死亡を、コロナが流行する前の2016年か2019年の月別死亡数の平均値との差で算出している。

図1には、Eurostatに準じて算出した2020年から2022年におけるわが国の累積超過死亡を示す。2020年には、超過死亡は見られなかったものの、2021年は6万8,600人、2022年は19万5,600人と激増した。

図1 全国における2020年から2022年の累積超過死亡

すでに、今年1月における各政令指定都市の死亡者数の速報値が発表された。各政令指定都市とも、1月の死亡者数は昨年12月の死亡者数を更に上回っている。図2には2023年1月分を併せて各政令指定都市における累積超過死亡を示す。

図2 政令指定都市における累積超過死亡

北九州市における年間累積超過死亡は、2020年は99人、2021年は753人、2022年は1,568人と増加が著しい。とりわけ、1月は2020年、2021年、2022年が-8人、-48人、-33人であったのが、2023年は407人と激増した。

仙台市の累積超過死亡も同様で、2020年は250人、2021年は924人、2022年は1,781人と増加した。1月は2020年が57人、2021年が164人、2022年は116人、2023年は、414人であった。

名古屋市の累積超過死亡は、2020年は871人、2021年は1,852人、2022年は3,872人であった。1月の超過死亡は、2020年が40人、2021年が150人、2022年が96人、2023人は381人である。

大阪市の累積超過死亡は、2020年が697人、2021年が2,724人、2022年が5,346人と更に著しい増加を示した。とりわけ、1月の超過死亡は2020年、2021年、2022年が8人、2人、142人であったのが2023年は595人と著増した。

図3は、わが国における全ての原因による死亡例を含む全超過死亡と、コロナによる死亡者数さらにコロナ以外の原因による超過死亡の月別推移を示す。

図3 全国における月別全超過死亡とコロナによる死亡の推移

2020年には見られなかった全超過死亡が、2021年になると出現、さらに、2022年の後半に激増している。第1回、3回、4回、5回目コロナワクチンの接種開始に続いて超過死亡の増加が見られたが、超過死亡はコロナの流行とも同期している。各ピークとも、コロナによる死亡者数の2〜3倍にあたるコロナ死以外の原因による超過死亡が観察されている。とりわけ、コロナの非流行期はこの差が著明で、2021年11月、12月はコロナによる死亡数は92人、33人に過ぎなかったが、月間の全超過死亡は4,700人、5,600人に達した。

図4は名古屋市と仙台市の2022年における全超過死亡とコロナによる死亡、コロナ以外の原因による超過死亡の月別推移を示す。

図4 名古屋市と仙台市における月別全超過死亡とコロナによる死亡の推移

名古屋市においては、昨年の2月と8月に、第6波と第7波が襲い、全超過死亡もピークであった。仙台市は、名古屋市とは異なり、昨年末から今年の1月にかけて全超過死亡のピークを迎えた。

昨年3月に、2020年1月から2021年12月までの世界各国における全超過死亡とコロナによる死亡数との比がランセットに発表された。人口統計が整備されていない発展途上国のなかには、超過死亡がコロナ死の5倍を超えることもあるが、先進国では、超過死亡はコロナによる死亡数の1〜2倍程度までに収まっている。超過死亡とコロナによる死亡との差は、未診断のコロナ死によると考えられている。ところが、先進国の中で日本は例外的に、コロナによる死亡数の6倍の超過死亡が観察された。

今回の検討でも、ランセットに掲載された結果と同様であった。仙台市においては、コロナの流行が見られなかった2022年4月から7月の月間コロナ死は10人以下であったが、各月とも100人以上の超過死亡が見られた。

日本では、コロナで死亡した患者以外にもウイルス検査を行い、陽性者はコロナによる死亡とされているので、未診断のコロナ死が多いとも思えない。実際、2022年に仙台市でコロナ死とされた273人のうち16人は死後のウイルス検査が陽性だったのでコロナ死とカウントされた症例である。

わが国の超過死亡は、直接的なコロナ感染による死亡ではなくそれ以外の原因による死亡が多くを占めており、その原因の究明が待たれる。