「日の丸」の誇り:医療だけでなく多くの分野が危機に晒されている日本

昨日、彩都西駅からモノレールに乗り、スマートフォンでWBCの日本対米国戦にアクセスしたところ、ちょうど、ダプルプレーを取り、大谷投手がトラウト選手を迎える瞬間だった。得点は3対2、最終回2アウトで、大谷対トラウトはドラマに出てきそうな場面だった、ボール、ストライク、ボール、ストライク、ボールでフルカウント、漫画でもなかなか巡り合わないシーンだ。手に汗を握る場面と言うが、まさに手に汗をかきながら小さな画面を注視していた。最後のスライダーは真横に切れていくような球筋で、見事に三振で試合が終わった。

pianoman555/iStock

「日の丸」を背負っている重圧は大変だったと思う。日米対決の最後の瞬間の視聴率は関東と関西で約45%だったそうだ。日本中が「日の丸」サムライに応援の声を送っていたような感じだ。そして、暗く沈んだ日本を一気に明るくするような瞬間だった。力を合わせれば、世界一になれることを実感した。

太平洋戦争の敗戦後、日本人は誇りをかけて、復興を成し遂げた。そこには、自分の利益ではなく、他者への思いやりと日本人としての誇りがあった。そして、WBCの勝利は日本人の誇りを見せてくれた瞬間でもあった。世界一を取り戻すために何が必要であるのか、答えは明快だ。WBCでわれわれが見たのは力を合わせれば変えられるという、青春ドラマ「これが青春だ」の世界だった。

そして、驚いたのが大谷選手の試合後のコメントだ。「中国、台湾、韓国の野球のレベルが上がればいい(国の順番も間違っているかもしれないし、コメントも不正確かもしれないが)」との発言には、この選手はすごいと思った。あのような状況で、予選で敗退した3か国を気遣うことができるなんて・・・・・だ。この歳では遅すぎるが、私も見習わなければと反省だ。

今の日本は山火事状態だ。目の前の火を消すことに必死になっている間に、気づくと炎に取り囲まれていたと言ったところか?医学、医療だけでなく、多くの分野が、危機に晒されている。オールジャパンと口で言うのは簡単だが、「日の丸」の誇りのために、真の意味で滅私奉公する人材が結集されれば何とかなると思わされたWBCだった。さてどうする家康だ!


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。