誰のための少子化対策か? --- 高梨 雄介

一般投稿

正直に「異次元の現役世代いじめ」と言った方が良いのではないか。

異次元の少子化対策のために社会保険料を引き上げるという。現役世代の給与の半分を吸い上げるとは、提案者も採用者も狂気に支配されているとしか思えない。政治家も有権者の大半も「現役世代」でないから他人事なのだろう。そもそもこれまでの少子化対策が失敗続きだったのだから、議員歳費の半分を返納するのが先である。

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しかし、政治家は高齢者世代の方しか向いていないと思っていた。ここで唐突に少子化対策を打つのは怪しい。そこで、なぜ少子化対策が必要なのか、少子化で何が困るのかをChatGPTに尋ねてみた。

  1. 人口減少による経済的影響:少子化が進むと、労働力人口が減少し、国内総生産(GDP)の伸びが鈍化するため、経済成長が阻害されます。
  2. 社会保障制度の危機:高齢化が進むと、社会保障費の増加が避けられなくなります。年金や医療費、介護費などの財源を確保することが困難になり、社会保障制度の維持が危ぶまれます。
  3. 地域社会の衰退:人口減少によって、地方や農村地域では、地域経済の低迷や、生活に必要なサービスの提供が困難になるなど、地域社会の衰退が進みます。
  4. 軍事力の低下:人口が減少すると、徴兵制度による兵士の確保が困難になり、軍事力が低下する恐れがあります。

2の社会保障制度についてはこの記事が分かりやすい。この観点では、少子化対策で最も受益するのは70歳以上の高齢者世代である。というかそれ以下の世代は大幅に損しており、これから産まれてくる子供に至っては0歳でマイナス1億円からスタートする。まるで老人医療を支える「贄」のようである。

また、3の地方や農村地域は高齢化が顕著であり、国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2020年における65歳以上の高齢化率は全国平均が30.7%なのに対し、地方地域においては山形県が42.2%、愛媛県が39.7%、秋田県が38.9%といった高い数字を示している。地域社会が衰退して一番困るのは地域住民で、その中で最も多いのは高齢者世代なのだから、少子化対策で地域社会を活性化させるのは結局、高齢者世代のためだといえる。

1の経済成長の鈍化についても、経済成長著しい他国相手に商売できる人、出稼ぎに行ける人は全く困らない。円安が進んでも賃金をドルで貰えれば全く困らないのと同じ理屈である。困るのはそれができない世代で、筆頭はもちろん高齢者世代だろう。就労ビザは原則60歳までだし、日本ほど医療や介護サービスが充実している国は無いから、身体的な不調や持病といった懸念も増えるから、他国で働くのは難儀になりがちである。

4の軍事力の話は。日本に住む人に等しく関わる問題である。いざという時は戦うか他国に逃れるしかなく、不自由な生活を余儀なくされるから、やはり身体的にも精神的にも強い若い世代ほど対応しやすいのではないかと想像する。

以上のように考えると、少子化対策は結局は高齢者世代のためなのだと思う。もちろん直接的には親世代が受益するものの、親世代は子供が居なくても困らない。DINKsが流行っているのはその証左である。

だとすれば、高齢者世代にも応分の負担を求めるべきである。医療費負担を現役世代と同じ3割にするくらいは必須ではないか。当然反発するだろうが、それを説得するのが政治家の役目である。少子化対策の目標と効果を正直に話し、これまでいかに厚遇されてきたかを現役世代の窮状とあわせて説明し、負担を受け入れさせるのが仕事だろう。それをサボっている政治家諸氏には、まず歳費の半分をカットする気概を見せていただきたい。

ところで、高齢者世代に配られた社会保険料はどこに行くのだろうか。想像するに、大半が病院に流れているのではないか。たまに平日に病院に行くと、元気そうな高齢者が待合室を占拠し、医師や看護師と暢気に雑談している(お陰で散々待たされる)。医療費1割負担の特権を大いに活用していて微笑ましい。ただ、もし社会保険料が回り回って病院の貴重な財源になっているのだとすると、今後も現役世代に厳しい状況は続きそうだ。コロナ禍で圧倒的な政治力を示した医師会が付いている。

高梨 雄介
上智大学法学部卒業後、市役所入庁。法務関係部門を歴任して数々の例規の起草、審査、紛争解決等に携わる。現在は公共団体職員として勤務の傍ら、放送大学で心理学を専攻中。