感情だけの記事では新聞は衰退する

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朝日新聞北海道版に「地方自治クライシス」という連載が掲載された。連載第1回(3月30日)は円山動物園で15年間ボスザルとして君臨したニホンザルが35歳で死んだという記述から始まる。

丸山動物園ではサルが増えすぎるのを防ぐために避妊手術をしている。これが災いして著しく「少子高齢化」が進んだ。それで長老支配が続いたそうだ。

日浦統記者は「サル山と人間界に共通する社会構造が浮かび上がった」という。

不謹慎とのそしりを受けるかもしれないが、石井さんの話を聞いているうちに、円山動物園のサル山が、道内の地方政治の「映し絵」のように思えた。

立憲民主党の小西洋之議員が「審査会の毎週開催はサルがやることで、蛮族の行為だ」と発言したのが3月29日。朝日新聞は翌日朝刊で道内政治はサル山のようだと書いたわけだ。

なぜ、批判されないのだろう。誰も読んでいないからだ。北海道では北海道新聞が圧倒的に強く、朝日新聞の購読者数は1/10程度。

もちろん、誰も読んでいないといっても許されるはずはない。記事は北海道内向けだが、朝日新聞サイトに転載され、全国で閲覧できるようになっていた。それで僕は気づいた。

北海道では少子高齢化が進み、多選される首長も多い。新陳代謝は進まず、「若い移住者の受け入れや関係人口の増加を目指すなどあの手この手を繰り出すものの、即効性は薄い」と記事は地方政治を批判する。

北海道の魅力を高める施策を進め、より多くの人々が北海道居住を、北海道との関係構築を選択するように向けていくのは政治の責任だが、それを記者は「あの手この手」と感情的に批判した。しかし、4月6日まで続いた連載が紹介したのも「あの手この手」に過ぎなかった。

このような連載を知事選挙期間にわざわざ掲載した意図は何だったのだろうか。

ICPFでは、4月24日に新田哲史氏を招いて「DXとオールドメディア」についてセミナーを開催する。オールドメディアはどうしたら生き残れか、について議論するつもりだ。