銃を構えた軍人の見守る中でのリゾート地のバケーション
麻薬組織カルテル(Cartel)が蔓延るメキシコでイースターを迎えるのに2大リゾート地アカプルコ(Acapulco)とカンクン(Cancún )とその他主要リゾート地に8000人以上の警備隊を政府は派遣した。それは防衛隊、海兵隊、軍隊で構成されている。数年前までの警察に代わって警察と軍隊を合わせたような防衛隊が加わっている。
更に3800人の軍人が主要道路を監視する役目をしている。また14の空港と42あるバスセンターも軍隊が警備を強化した。
この為の安全を維持する装備として8機のヘリコプター、755台のパトカー、377台の小型トラック、10台のボート、45台のクラッドバイクが配備されている。
イースターが開始される寸前にこの2大リゾート地で8人が殺害されたことを受けて、政府は警備隊の派遣を決めたものである。
リゾート地での麻薬組織の縄張り争い
1950年代から60年代にかけてアカプルコは米国のハリウッドスターが良く利用したリゾート地であった。しかし、今ではカルテルが蔓延りカンクンと同様に危険なリゾートとなっている。それでもホテルの予約率は73%と高い。
一般のリゾート客は犯罪組織に関係していなとして、彼らの身が危険にさらされることはないと思っている。ところが、カルテル同士の銃撃戦で市民がその流れ弾に当たって死亡するという事件も起きている。
アカプルコはゲレロ州にあり、そこでは主に11のカルテルが縄張り争いを繰り広げている。その中でも主要なカルテルは4つある。ラ・ファミリア・ミチョアカン、ゲレロス・ウニードス、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン、ロス・ベルトゥラン・レイバの4つである。
更に、ロス・カバリェロス・テンプラリオス、エル・カルテル・デル・スル、ヘンテ・ヌエバ、グアルディア・ゲレンセ、ロス・ビアグラ、ロス・クエルヌドスの7つのカルテルがそれに加わっている。
それに加えて、彼らカルテルの下請け的な犯罪組織も一緒に活動している。ということで、ゲレロ州は実に危険極まりない自治州なのである。(2022年10月付の「ラ・シーリャ・ロタ」から引用)。
一方のカンクンはキンタナ・ロー州にあり、この自治州では2大カルテルが争っている。ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンとシナロアである。この二つのカルテルは麻薬消費の最大市場となっている米国でも麻薬販売で市場を争っている。
もともと、前者は後者の下請け的なカルテルであったが、その後独立して今ではメキシコで最も影響力を持ち、しかも残虐なカルテルとされている。創設者のエル・メンチョはメキシコ国内で行方を晦ましている。彼には1000万ドルの懸賞金が賭けられている。一方のシナロアの創設者のエル・チャポは現在も米国の刑務所で無期懲役で服役中だ。
メキシコは世界でトップレベルの観光国でカルテルの最強国
メキシコ政府がイースターに因み大規模な警備体制を敷いているのは、犯罪が多発している観光都市から観光客が減少することを避けたいという意思からである。現在のメキシコは世界の10大観光国のひとつである。
2021年のランキングを見ると、メキシコは観光訪問者数では3190万人が訪問して世界で2位にランキングされている。この年はコロナ禍で有力な観光国への訪問が相当減少した。例えば、スペインだと同年は3120万人の訪問で留まっている。(2022年3月の「エントルノ・ツリスティコ」から引用)。
スペインは通常はフランスに次ぐ世界で2番目に訪問者数の多い国で年間8000万人の訪問がある。
メキシコのカルテルの勢いは留まることなく拡大している。嘗て、麻薬はコロンビアが主要な生産国で、それを米国市場で販売するのにメキシコを中継地としていた。今ではメキシコが麻薬生産の中心的な存在となっている。そしてメキシコのカルテルがコロンビアに投資して同国で生産するという流れも盛んになっている。