緊急事態における議員任期の延長について定めた憲法改正条文案を3会派で合意

国民民主党は、日本維新の会、有志の会の皆さんと緊急事態条項についての共通条文案を取りまとめました。これまで衆議院憲法審査会で議論されてきた内容を踏まえたもので、各会派の合意が得やすい内容になっていると考えます。この案をベースに、是非、他会派の皆さんとも具体的な条文案について合意を得ていきたいと思います。

いざという時に国会の機能が失われてしまう事態は避けなくてはなりません。東日本大震災の時は、実際に、統一地方選挙ができず、県会議員等の任期を特例法を作って延長しました。国会議員の任期の場合、4年及び6年の任期が法律ではなく憲法に明記されているので、その任期の特例延長には憲法改正が必要であるというのが私たちの考えです。

今年は、関東大震災から100年、東日本大震災から12年目の年です。今こそ、非常事態に備えた規定を整備しておかなくてはなりません。本日の発言の概要は以下の通りです。

共通条文案はこちら↓

https://ameblo.jp/tamakiyuichiro/entry-12799113967.html

憲法審査会発言要旨(2023年4月6日)

国民民主党代表 玉木雄一郎

先ほど維新の馬場幹事からも紹介があったとおり、先週3月30日、日本維新の会、国民民主党、有志の会の3つの会派で、緊急事態条項のうち議員任期の延長に関する条文案について合意を得た。条文案の中身も本審査会での議論を踏まえたもので、憲法改正に向けた現実的かつ合意を得やすい内容になっていると思う。今後、当審査会における成案づくりのたたき台としてご議論いただき、他の会派の皆さんとも丁寧に合意を得ていきたい。

内容については、先ほど馬場幹事から説明があった通りだが、そのうち「選挙実施困難要件」と「前衆議院議員の身分復活」について私から補足説明し、立憲民主党の奥野委員と、前回お答えいただけなかった篠原委員に改めて質問したい。

まず、私たちが「選挙の一体性が害されるほど広範な地域において国政選挙の適正な実施が70日を超えて困難であることが明らかな場合」に延長を認めることとしているが、逆に言うと、70日までは可能な限り参議院の緊急集会を活用しようとする趣旨である。決して緊急集会を蔑ろしにしたり、権限の縮小を企図したものではない。

また、長谷部恭男先生などが認めている、緊急集会が解散時のみならず任期満了時にも開催できることを条文上明記し、解釈論争に結論を出していることは前回も説明したとおり。このことで、「一時的・暫定的・限定的」な対応は「緊急集会」、70日を超えるような長期にわたる場合は「任期の特例延長」という形で、両者の棲み分けを条文上、明確にしている。

佐藤功先生の学説でも「緊急集会制度は両院性の国会に対する極めて特殊な場合の異例的・変則的措置」ともされており、また、「緊急集会制度には濫用の危険もある」ともされている。さらに、高辻正巳元法制局長官は、条約締結の承認については、衆議院の同意を欠けば承認の効力が失われる以上、当該条約の法的地位を安定化することにならず、かえって相手国との信頼関係を損なう恐れがあり、緊急集会の措置としては馴染まないものとしている。

この論点に関して、奥野委員は前回の審査会で、公選法が規定する繰延投票での国会議員の延期延長はできないと思っていると明言された。また、解釈や国会法等の改正で対応できないことが明確になれば、我々も議員任期の延長を議論すべであり、議員任期の延長をするということになれば憲法改正は自明であるとも発言された。前向きな発言であり、ぜひ一致点を見出したい。今後、緊急集会で対応できる範囲、できない範囲、法改正でできる範囲、できない範囲を明確にするための議論に積極的に加わっていただきたい。

なお、こうした奥野委員の発言は、立憲民主党全体の考えなのか改めて確認したい。というのも、昨日、参議院の筆頭幹事である杉尾議員は「私たち会派は明確に反対」と断言している。

もう一点、3会派の条文案では、解散後、任期満了後の前議員の身分については、延長の国会議決をするために必要な限度において、任期は終了していないものとみなす規定を創設し、議員身分を復活させたうえで任期を延長することとしている。

その点について篠原委員に質問する。前々回、篠原委員は、「選挙で選ばれた衆議院議員としてではなく、経験を積んだ前議員として特別な資格を与え、国政の重要事項に関与できるようにすればよい」「緊急事態なのでもう一踏ん張りしていただく」「立法措置でやってみて、数年ぐらい経ってからまとめて明文化したらどうか」と述べておられる。

緊急事態に置いて、前議員に議員並みの「国政の重要事項」に関与できる権限を与えるアイディアは傾聴に値するが、まさにそれこそ憲法に書くべき話であり、だからこそ、3会派の条文案では、前議員の身分の復活規定について条文案に明記したところ。

逆に、議員でないものに議員同等の「国政の重要事項」に関与できる権限を与えるような立法は、議員任期を定めた憲法45条、46条、国会が唯一の立法機関と定めた憲法41条、参議院の緊急集会による対応を定めた54条2項などに違反する立法になると考える。篠原委員の提案する立法は違憲立法になるのではないのか、かかる立法は不可能だと思うが、改めて篠原委員の考えを伺う。あわせて、緊急集会で条約承認もできると考えているのか考えを伺う。

最後に、立憲民主党の小西洋之参議院議員は、任期満了前に必ず解散をする立法措置を講ずれば、憲法改正せずとも議員任期の延長ができると主張していると承知しているが、70日を超えて「長期的・確定的・フルスペックで」国政の重要事項について緊急集会で処理するのは、二院制を前提とする現行憲法に反する立法になると考える。また、そもそも解散のない参院には適用できない。今後、有識者の意見を伺う際には、自称憲法学者の小西洋之参議院議員にもお越しいただき、ご意見を伺いたい。

とにかく、我が党国民民主党は、緊急事態にこそ国会の機能を維持し、行政監視機能や立法機能を保持することで行政権の肥大化や乱用を防止し、もって憲法が保障する基本的人権を守ろうと考えている。立憲主義を貫くためにも、憲法で定める議員任期の延長は憲法改正によって規定すべきであることを申し上げ発言を終える。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2023年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。