コロナ禍の2つの懸念

世界中で猛烈な勢いで接種された新型コロナウイルスワクチンに関し、昨今様々なメディアでその効果が訝(いぶか)られています。例えば大阪市立大学医学部名誉教授・井上正康さん曰く、「mRNA(メッセンジャーRNA)タイプのワクチンというのは完全に失敗であった、ということが医学としても明らかになりつつあります」等等とのことですが、その信憑性につき私には分かり兼ねるものです。世界各国で様々なワクチン懐疑の声が噴出する中で、我々国民としては非常に心配しているところではないかと思われます。

我々はマスクも外そうという状況で、来月8日よりはコロナの感染症法上の位置づけが5類(季節性インフルエンザ同等)に移行されます。他方、今月19日開催された厚生労働省の専門家会合に拠れば、「今後、第9波の流行が起きる可能性が高い。(中略)まだ国内では自然感染の罹患率が低いことを考慮すると第9波の流行は、第8波より大きな規模の流行になる可能性も残されている」とのことであります。

政府として今後の在り方を決める前に、やはり先ずはワクチンを総括する必要があるでしょう。これまでは、「打たないと感染状況は悪化の一途を辿る」とか「接種により重症化率や死亡率が大幅に低下する」、といった議論に基本終始してきました。これからは、後遺症に関する徹底した追跡調査またその反論に対する的確な再反論、といった形で理論的な議論を政府として是非やって貰いたいと思います。

私のもう一つの心配事は、最近自分の周囲など「がん」で亡くなって行く人が非常に多いような気がしています。此の現象はコロナ禍で、人間ドックを受けられなかった・止めたとか、手術を遅らせた或いは病院に受け入れて貰えなかった、といったことに起因するのではないでしょうか。之は、コロナの直接的影響というより間接的な影響です。取り分け膵臓がんなど元々早期発見するに難しい部位でもあるのですが、検診控えの結果手遅れとなり命を落としているケースがあるのではと見ています。

厚労省は本年度から25年度に掛けて、「がん検診の受診率低下などにより、治療の遅れがどの程度生じたかを分析。さらに患者の予後など中長期的な影響も調べる。その上で、今後も起こり得る新興感染症の流行に備え、(中略)指針を作る」ようです。それはそれとして政府としては、コロナ禍で十分に受けられなかったがん検診でがんの早期発見を実現すべく、検診受診の大切さを訴える国民的啓発に是非大々的に取り組んで貰いたいと思います。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。