本日の憲法審査会でも、緊急事態で選挙ができなくなった場合の「議員任期の延長規定の創設」の議論を優先し、あまり議論を拡散させるべきではないと主張しました。
自民党の9条改憲案(添付資料は本日の自民党新藤衆議院議員の説明資料)については、違憲論が払拭できない内容になっていることを重ねて指摘し、「国防規定」を設けるのであれば、自衛隊の「組織に対しての違憲論」だけでなく、自衛権の行使という「行為に対しての違憲論」も解消できる内容にすべきと提案しました。
なお、チャットGPTに「憲法9条の改正はした方がいいですか?」と聞いた答えを紹介しながら、正確で偏りのないバランスの取れた情報を生成AIに与えるかが重要である旨、問題提起しました。発言の概要は以下の通りです。
憲法審査会発言要旨(2023年4月27日)
国民民主党代表 玉木雄一郎
まず、緊急事態の議員任期延長について述べたい。先週も、立憲民主党の篠原委員に対し、任期満了を迎えた前議員に議員並の特別な身分を付与する特別立法は可能なのか伺った。
なぜ、私がこのような質問を繰り返しているかといえば、憲法に書いてある議員任期の延長や前議員の身分復活・延長には憲法改正が必要であり、立法措置で行う場合は違憲立法にならざるを得ないと考えるからである。
しかし、もし立法や解釈で「一時的・臨時的・限界的」とされている緊急集会の射程を伸ばしたり拡大できるのであれば、具体的にどのように立法や解釈で行うのか立憲民主党の考えを伺いたいからである。また、期間や対象について限定なく緊急集会で対応できると主張する憲法学者がいらっしゃれば是非参考人として来ていただきたい。これは森会長に取り計らいをお願いしたい。
その上で、やはり立法や解釈では対応が難しいとなれば、その時は、立憲民主党にも憲法改正の議論に入っていただきたい。そうすれば、幅広い成案を得ることができると期待している。
加えて申し上げたいのは、議論を拡散することなく、まずは一致点の多い議員任期の延長について成案を得ることに集中して議論を行うことを求めたい。せっかく議員任期の延長について意見がまとまりつつあるのに、まとまる前に次のテーマに行くことは避けてもらいたい。
はっきり申し上げて、現実的に憲法改正を実現したいのであれば、まずは、議員任期の延長規定に絞って議論を深めるべきと考える。9条改正については、前回の議論を聞いていても、とてもすぐにまとまりそうにない。あまりよくばりすぎるのは良くない。
特に、自民党の9条改憲案では、自衛隊ができることは変わらないと主張されている。一方、議員任期の特例延長は憲法改正しないとできない。必要性の度合いが全く異なると考える。また、自民党の国防規定・自衛隊明記論は、改憲理由が抽象的で分かりにくい印象を受ける。改めて、具体的課題について、意見を申し上げる。
まず、最大の問題は、憲法を改正し「国防規定」を設けたとしても、違憲論が解消されないことである。自民党のいう「国防規定」を設けた場合、自衛隊の「組織としての違憲論」は解消されても、自衛権の行使という「行為についての違憲論」は解消されない。例えて言えば、お父さんの勤め先についての違憲論は消えても、お父さんが行っていることの違憲論は消えないのである。行為についての法的安定性は担保されないのである。
新藤幹事は前回、「誰がどのように国を守るか」が国防規定だと述べたが、自民党案では、「誰が」は明確になっても、「どのように」にの部分についての違憲論が消えない。その結果、新設される国防規定は違憲論がつきまとう不安定な国防規定にならざるを得ず、命をかけて国を守る自衛隊の皆さんに対して誠に申し訳ない内容となる。これでは、まさに「労多くして益少なし」の改憲となる可能性がある。
9条改正を検討するのであれば、やはり、情緒論ではなく、論理的帰着として戦力不保持を定めた9条2項を削除するか、あるいは、残す場合であっても、少なくとも9条2項の「範囲内」ではなく「例外」として戦力の保持を認める書き方にしないと違憲論は消えない。さらに、「国防規定」が必要と言うなら、自衛隊を「戦力」として位置付けなくていいのかといった本質的な議論を避けるべきではないと考える。
なお、本日示された新藤幹事の資料で「(9条の)現行解釈を維持すべき」そして「解釈の明文化は不要」との記述は、改憲に向けた大いなる矛盾を明らかにしていると思う。「現行解釈を維持し、その明文化は必要ない」のであれば、そのままでいいのではないか。この整理は、憲法改正が不要だと言っているように見える。
それと、「法体系の完成」という言い方も気になる。逆に言うと、現行憲法の規定は「未完成」ということになるが、先ほどの説明では、現行の解釈のもとで整合性の取れた法体系が完成しているからこそ、解釈を維持した上でその解釈の明文化は不要としたのではないか。未完成というなら、「組織に対する違憲論」のみならず「行為に対する違憲論」にも終止符を打つ改憲とする必要があるのではないか。そもそも違憲論の残る国防規定では、とても「法体系の整備・完成」とは呼べないと考える。
最後に、チャットGPTについて申し上げる。実際、憲法9条は改正した方がいいですか?と聞いてみた。
すると「憲法9条を改正する必要性については、意見が分かれています。一方で、国際情勢やテロリストの脅威が増大する中、自国の防衛力を強化する必要性があると主張する人もいます。また、こうした立場の人々は、9条を残したままでは自国の防衛ができないとして、改正を求めています。一方で、9条を変更することが平和主義に反するとし、改正に反対する人々もいます。個人的な意見としては、憲法9条は大切な価値観を表現していると思いますが、時代の変化に合わせて論議し、必要に応じて適切な改正が行われることも必要かと思います。ただし、その際には、多様な意見が尊重され、丁寧な議論が行われることが重要です。」との答えが返ってきた。
正直、バランスが取れていて驚いた。ただ、一つ問題だと思ったのは、改憲論者が「9条を残したままでは自国の防衛ができないして改憲を求めている」との回答だったが、自民党の改憲案は、自国防衛の強化を目的としていない。自衛権の解釈は変わらないし、違憲論も消えないからである。
あたかも改正すれば、防衛力が高まるような説明は間違っていると思うが、チャットGPTはこうした自民党の改憲内容をまだ正確に理解していないようだ。今後、生成AIの答えの正確性・公平性・中立性はどう担保されるのか考えなくてはならないが、その際、AIに学習させる情報や主張によっても回答が変わるので、人間のみならず、AI自身もバランスの取れた情報について学習する環境整備が必要である。
その意味で、私たちが適切に「思想・良心の自由」を形成できるよう、チャットGPTと憲法19条の関係についても憲法審査会で幅広く議論していきたい。
以上
編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2023年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。