朝イチのメール確認をやめると仕事がはかどる理由(滝川 徹)

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朝仕事を始める時にメールやチャットのチェックから始める人は多いだろう。先日筆者が主催するセミナーの受講生もまさにそうで、理由を尋ねると「習慣で」ということだった。

業務上どうしても必要がある場合を除いて、朝一番にメールやチャットをチェックすることは果たして効率的なのか。

なんとなくの習慣が果たして正しいのか?時短コンサルタントの立場から考えてみたい。

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出社してから2時間以内にメールを見てはいけない2つの理由

キヤノン電子現会長の酒巻久氏の著書『朝イチでメールは読むな! 仕事ができる人に変わる41の習慣 (朝日新聞出版 2010)』によれば、同社では部長職以上に対して出社から2時間以内のメール閲覧を禁止しているとある(出版時点)。それで問題が起きたことは一度もないという。

メール閲覧に時間の縛りをかける理由について、酒巻氏は書籍で以下のように説く。

朝の時間を「メール漬け」で費やすのは、非常にもったいない。頭が冴えた朝は、メール対応という「受動的な」仕事から始めるのではなく、自分がやるべき最も大事な仕事から「能動的に」スタートするべきだ。(中略)本当に緊急な要件があれば、メールではなく電話が来るから、メール閲覧が2時間後でも何の問題もない。

キヤノン電子のルールが正しい理由は、人間の脳の特性にある。

人間の脳は起きてから2、3時間が1日の中で最もパフォーマンスが高い

朝の時間は仕事の効率が良い……そんな話を聞いたことはないだろうか。

精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑氏は著書『神・時間術(大和書房 2017)』で次のように説明する。

人間の脳というのは、起きてから2、3時間は、脳が疲れておらず、さらに脳内が非常に整理された状態にあるため、脳のパフォーマンスが1日で最も高いのです。その時間帯は、「脳のゴールデンタイム」と呼ばれ、論理的な作業、文事執筆、語学の学習など、高い集中力を要する仕事に向いています

脳が疲れていない午前中は脳のパフォーマンスが1日で最も高く、だからこそメールやチャットに時間を使うより、たとえば企画書作りやレポートを書くといった、頭を使う難易度が高い仕事に取り組むほうが仕事の効率がずっとよくなる。

酒巻氏が朝の時間をメールに費やすのはもったいないと説くのは、こうした理由からに他ならない。

元GAFA部長のメンターが「僕はメールは見ないから」と言い切った理由

GAFAの元部長でベストセラー作家の寺澤伸洋氏は著書『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法(KADOKAWA 2020)』の中で日系メーカーの経営企画室に勤務していた頃、メンターから「僕はメールは見ないから」と言われ驚いたというエピソードを紹介している。

N氏は『僕に依頼したい人がメールで送って反応がなかったら、僕の席に来るか、電話してくるでしょ』と語ったという。N氏も酒巻氏同様、緊急の場合は電話をはじめとした別の手段で連絡がくると考えていたのだ。

たしかに緊急の要件であればメールやチャットを送って相手から反応がなければ電話等、なにかしらの代替手段で連絡を取るのが一般的だ。

本当に急ぎの用件であれば、2時間も放置されたら別の手段で連絡が来る、酒巻氏はそう考えてるからこそ、出社2時間はメールを見なくていいと考えているということだ。

メールやチャットは常にチェックしなくても良い。

これを実現すれば効率よく仕事を回せるようになる。

実際、長時間労働に悩んでいた頃の筆者もメールチェックを1日2回、朝10時と16時に制限することで効率よく仕事ができるようになった経験がある。

メールやチャットのチェックは1日2回で十分

長時間労働に悩んでいた頃の筆者はメールが届けばすぐにチェックしていた。メールの即レスは仕事がデキる人の象徴だと考えていたからだ。

問題は、メールが着信する度にメールチェックをしているとちっとも仕事が進まないことだった。

目の前の仕事に取り組んでいてもメールが着信する度にチェックと返信を繰り返した。返信だけでは終わらず、メールに依頼事項が書いてあればその都度対応することも度々あった。そうこうしているうちに別のメールがまた届いて同じことを繰り返す。まるでメールチェックで1日が終わってしまうような感覚を味わっていた。

しかしある時「メールチェックは1日2回でいい」と書かれた趣旨の本を読んだ。その本の著者も酒巻氏やN氏同様、急ぎの用件なら電話等で連絡がくるので頻繁に見なくてもよいと考えていた。

本当にそれで問題はないのか、不安を感じながらもいざ試してみると、酒巻氏の言う通り何も問題が起きずに驚いた。

それだけではない。仕事も驚くほど進むようになった。仕事の中断が減ったのだから当たり前ということになるが、必要なことは勇気だけだ。

「緊急の用件なら別の手段で連絡がくる」

あなたもそう割り切ってメールやチャットと距離を置いてみてはどうだろうか。今よりずっと効率よく仕事を進められるはずだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年5月15日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。